安易な妥協は危険!元徴用工問題で日韓協議 後世に禍根残す
いわゆる「元徴用工」訴訟問題の雲行きが怪しくなっている。韓国の原告側が求める日本企業の賠償を韓国財団が肩代わりする解決案に合わせて、日本側が「韓国を輸出管理で優遇する『グループA(ホワイト国から改称)』に再指定検討」や、「過去の政府談話を継承して『痛切な反省』などを示す方向で検討」などと報じられているのだ。岸田文雄政権の対応次第では後世に禍根を残すことになりかねない。
日韓両政府は30日、ソウルで外務省局長協議を行った。日本外務省は「当局間の意思疎通を継続していくことで改めて一致した」とする一方、協議の具体的な内容は明らかにしなかった。
読売新聞は31日朝刊で、「元徴用工 被告企業直接負担なし 解決案 日韓政府が調整」との見出しで、「被告企業以外の自発的な(韓国財団への)寄付に日本政府は反対しない立場で、経団連などによる財団への寄付の案も浮上している」などと伝えた。
しかし、日韓間の請求権問題は1965年の日韓請求権協定で、「完全かつ最終的に解決」している。日本政府は当時、無償・有償を合わせて計5億ドルを韓国政府に提供した。元徴用工に資金が渡らなかったのは、韓国政府の問題である。
徴用は戦時下の労働力不足に対処するため、1939年に制定された「国民徴用令」に基づき、日本国民すべてを対象とした義務であり、給与も出ていた。
日本側が「寄付」としても韓国側に金銭を渡すことは、「迂回(うかい)賠償」と受け取られかねない。このタイミングで「痛切な反省」を示すことも、前出の協定の趣旨に反するのではないか。
朝鮮近現代史研究所所長の松木國俊氏は「日本側が韓国財団に寄付することは、『日本の償いが済んでいない』と認めることになり、絶対に許してはならない。日本政府は『完全かつ最終的に解決』という立場を貫くべきだ。過去の政府談話を継承して『痛切な反省』を示すことも、韓国最高裁の『日本の朝鮮統治は不法な植民地支配だった』という主張を受け入れることになりかねない。朝鮮統治時代のすべての活動が『収奪』となり、いくらでも問題が蒸し返されることになる」と警鐘を鳴らした。