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元専務は、2007年12月ごろ、広東省東莞市のフタバ産業現地法人の工場が、中国の税関から違法行為を指摘された際、地元政府幹部に日本円で数十万円の現金や女性用バッグなどを渡し、処罰の軽減を依頼していた。元専務の証言によると、このほかにも複数の公務員に賄賂を渡しており、その総額は数千万円にも上るという。
98年に外国公務員への贈賄が禁止されて以降、中国を舞台にしたものとしては初となるこの事件は、中国在住邦人たちに衝撃を与えている。
「数十万円程度で立件されるなら、多くの日系企業は商売上がったりになる」
そう話すのは、中堅商社の上海駐在員だ。
「例えば新規事業の許可を申請するときでも、役所の窓口で“寄付”を要求される。応じれば3日で受理されるところが、断ると書類の不備を重箱の隅をつつくように指摘され、1カ月以上通いつめないといけなくなったりする。こんな社会ですから、金額の大小はあれ、中国に進出している日本企業の半数以上は、なんらかの形で役人に袖の下を渡しているはず」
また、広東省深セン市の自営業の男性によると「私の周りでは、逮捕された元専務に同情的な人がほとんど」だという。
一方、広州市にある日系メーカーの現地採用社員は不安に怯えている。
「そもそも、中国での賄賂行為が日本で罰せられること自体、知りませんでした。うちの会社では毎年、納税の時期になると税務署の職員を食事に招待し、帰りには手土産と足代まで渡している。こうすることで、申告に不備があっても大目に見てもらえる。ここ数年は、僕がこの食事会の幹事を担当しているんですが、バレたら捕まるのでしょうか……」
賄賂はビジネスの潤滑油といわれる中国で、仕方なく「郷に従う」という日本企業も少なくないようだ。そんな中、逮捕にまで至った今回の事件は、日本企業の中国離れを加速させる可能性もありそうだ