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今年も11月の第3木曜日(21日午前0時)にボジョレーヌーボーが解禁となった。バブルの頃ほどのお祭り騒ぎはないが、毎年のように繰り出される「10年に一度の出来」「ここ数年で最高」「50年に一度の出来」といったキャッチコピーが話題となり、今年に関しては日刊ゲンダイが「ボジョレ解禁近づくも…今年は“不作”でキャッチコピーが付けられない?」と報じたりして別の意味でも話題となっている。
しかし、どうやらそれはとんだ勘違いのようだ。日刊ゲンダイをはじめ、ネット上の記事で出回っているキャッチコピーは、多少の表現の違いはあるものの、おおむね以下のようなもの。
●2003年「100年に一度の出来、近年にないよい出来」
●2004年「香りが強くなかなかの出来栄え。100年に一度の昨年を上回る」
●2005年「ここ数年で最高」
●2006年「昨年同様よい出来栄え」
●2007年「柔らかく果実味が豊かで上質な味わい」
●2008年「豊かな果実味と程よい酸味が調和した味」
●2009年「50年に一度の出来栄え」
●2010年「1950年以降最高の出来といわれた2009年と同等の出来」
●2011年「2009年より果実味に富んだリッチなワイン」
●2012年「ボジョレー史上最悪の不作だが、ブドウの品質はよく熟すことができて健全」
しかし、どの記事を見ても出典が明らかではない。いったい誰がこのコピーを考えて発表してるのか。調べてみたところ、意外な事実が浮かび上がった。日本におけるボジョレーヌーボーの窓口であるフランス食品振興会のリリースには「100年に1度」「50年に1度」などという大げさなキャッチコピーは存在しないのだ。
同振興会の担当者は次のように語る。
「現地のボジョレーワイン委員会のリリースをこちらで訳していますが“これがキャッチコピーです”という感じで出しているわけではなく、ワインの専門的な言葉を使いながら“今年はこういった味です”ということを発表しています」
たとえば2003年のリリースでは「並外れて素晴らしい年」との見出しに「この強い果実の香りは、1978年を彷彿とさせる」「まぎれもなく『偉大なヌーヴォー』である」といったフレーズが並ぶが、どこにも「100年に一度の出来」とは書かれていない。2009年も「数量は少なく、完璧な品質」との見出しに「品質面では、ボージョレ―の歴史の一つに刻まれるものとなるであろう」「完璧なバランスで、アロマ豊かな長い余韻に支えられ、驚くほど複雑である」などと賞賛されてはいるが、「50年に一度」なんて文言は見当たらない。
では、誰があのキャッチコピーをつけているのか?
「それがわからないんですよ。ウチが発表したリリースを参考に、ワインの輸入業者さんが取り引きしている生産者と『今年はこんな感じだね』と話し合ったうえで『100年に一度の出来』とかいうキャッチコピーをつけて、それをどなたかがまとめたものが広まっているのか……。年によってはウチのリリースがそのまま使われているのかな、ということもありますが」
つまり、世間に出回っているキャッチコピーは公式のものではなく、どこかの誰かが勝手に盛ったフレーズにすぎないのだ。
「皆さん、その年のボジョレーヌーボーを盛り上げようと、そういうキャッチコピーをつけていると思うので、それはそれで消費者の方にはわかりやすいんじゃないかと思いますけどね」とはいうものの、「熟成できるワインなら今の状態を比べて『2007年はおいしい』みたいな言い方はできますけど、ボジョレーヌーボーの場合は次の年には前の年のボジョレーヌーボーはないので、絶対的な比較ができているとは言い切れないんですよね。そういう意味では『100年に一度の出来』とかいう表現をしてはいけないのかもしれません」とのことで、あまり盛りすぎるのは近頃流行りの“誤表示”にもなりかねない。
ちなみに、日刊ゲンダイが「今年は“不作”でキャッチコピーが付けられない?」と報じた2013年のボジョレーについては「繊細でしっかりとした骨格。美しく複雑なアロマ」と公式に発表されている。出所不明のキャッチコピーに躍らされてる人には、繊細で複雑な味わいはわからないかもしれないけどね