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時代を見通す日本の基礎情報

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中国の「傲慢ボケ」が地球を救う

豪州国会で演説する安倍晋三首相。中国の「傲慢ボケ」が創り出す「間の悪さ」にも助けられ、首相の訪豪は大成果を上げた=8日、キャンベラ(ロイター)

豪州国会で演説する安倍晋三首相。中国の「傲慢ボケ」が創り出す「間の悪さ」にも助けられ、首相の訪豪は大成果を上げた=8日、キャンベラ(ロイター)

 安倍晋三首相(59)の豪州7月訪問は、中国もにらんだ「準同盟」を確認する大成果を上げたが、敵失にも助けられたと思っている。豪州は近隣の軍事大国出現を阻み、近隣に敵性軍事大国の基地を置かせない安全保障政策を伝統的に採ってきた。特に、北方は戦略的緩衝帯として絶対防衛権に位置付ける。ところが、中国海軍は豪北方の戦略的要衝で初軍事演習を断行、対中警戒をかつてないほど高めた。(SANKEI EXPRESS)

 中国はわが国近代史の捏造に殊の外熱心だが、豪州が大東亜戦争(1941~45)中、大日本帝國陸海軍によるニューギニア島~ニューブリテン島~ガダルカナル島といった北方の支配に、多大な犠牲を払い徹底抗戦した戦史を学んでいないのか。目立ち始めた中国の戦略的錯誤が、対中包囲網→地球の平和へとつながる僥倖に期待する。

豪の「北の玄関口」に出る

 豪国会で演説した安倍氏は、帝國陸海軍と豪軍を主力とする聯合軍とのニューギニア戦線における激戦「ココダ(道の戦い)」に触れた。「哀悼の誠を捧げる」ための引用だったが、豪州の対中警戒を覚醒させたとすれば巧妙だ。

中国海軍南海艦隊戦闘即応戦隊が1月29日、豪北西インドネシア・ジャワ島の最西端スンダ海峡を通りインド洋に進出。初の軍事演習を行い、豪北方沿岸を睥睨しつつジャワ島東のロンボク海峡を北上した。中国艦隊がインドネシア列島線を越え豪北方海域に出た前例はない。当該海域は豪州の「裏庭」ではない。「北の玄関口」である。

 即応戦隊は輸送揚陸艦とイージス駆逐艦、ミサイル駆逐艦の3隻。潜水艦1隻が護衛していた可能性が高い。中国南部の軍港~南シナ海~西太平洋を反時計回りに23日間、1万5000キロ近くを航海した。当然、途中の示威行動は忘れない。

 例えば(1)ベトナムから武力強奪したパラセル(西沙)諸島=台湾も領有権主張(2)フィリピン軍駐屯の馬歓島=台越中も領有権主張(3)マレーシア沖50キロのEEZ(排他的経済水域)内ジェームス礁=中国も領有権主張=近くを巡った。

 その後はインドネシア列島沿いに、既述した(4)スンダ海峡~ロンボク海峡(5)マカッサル海峡~フィリピン東沖(実弾射撃訓練実施)(6)比台間のバシー海峡を経て帰港した。

 危機感を強めた豪公共放送は専門家の警告を紹介した。
「豪州北の玄関口周辺で新鋭艦が示威航海したが、豪州のインド洋における航路帯に中国海軍が直接影響力行使できる実態を初めて具体的に示した」

 そもそも、スンダ海峡沖には歴史的にインド洋東部に影響を与えてきた豪領の島嶼が浮かぶ。特に、ココス諸島には米軍無人偵察機基地が陣取る。豪州大陸でも、米海兵隊2500人が半年間隔で北部にローテーション配備。中央部では、米軍とCIA(米中央情報局)が共同運用する衛星追跡施設が、東南アジアなどを偵察する軍事衛星のデータを解析している。

間の悪い艦隊大航海

 対する中国も、南/西太平洋上の一部小群島国家への海軍艦艇寄港やEEZでの活動を活発化。“中国漁船”の一部も、米豪軍の通信傍受を担任していると観られる。

 導火線は在ったにせよ、豪州を「その気」にさせた中国海軍は他にも、大きな過ちを犯した。即応戦隊がインドネシア海域を航行中の1月30日、超党派の米議会諮問機関《米中経済・安全保障検討委員会》において、米海軍情報局が中国海軍の戦力分析・評価を説明。即応戦隊大航海の「間の悪さ」を一層引き立てた。曰く-

 《旧型が急速に退役、大型で多用途の先進兵器搭載艦に替わった。2013年だけで50隻超が建造・進水・就役。14年も同様の数を見込む。先進兵器のほとんどが、米軍介入阻止を目的としている》

 各兵器の分析・評価も、米議会を刺激するに十分だった。

 《将来型潜水艦・水上艦搭載の対地巡航ミサイルは、グアムなどの米軍基地に向けた攻撃力を増強。潜水艦発射型弾道ミサイルはハワイ/アラスカ/米本土西部を攻撃範囲に収める》

 だのに、米オバマ政権の反応は相変わらずピリッとしない。オバマ政権を横目に、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国も腰を引く。マレーシアのヒシャムディン・フセイン国防相(52)に至っては「大国=中国に接する場合、自国能力に現実的でなければならない」と公言してはばからぬ。ASEAN諸国は輸入や開発援助など、中国が時々にぶら下げるアメと脅威烈度を秤にかけ、猫の目の如く態度を変える。

「勝利による敗北」の構図

 

 実際5月11日、ASEAN首脳会議は、名指しは避けたが中国に「深刻な懸念」を表明(議長声明)した。声明は、あろうことか会議直前、中国がパラセル諸島付近のベトナムEEZ内に石油掘削リグを設置、中国海軍・海上警備当局の艦船80隻と越海洋警察・漁業取締当局の艦艇30隻が衝突した事態など、南シナ海で狼藉を止めない中国への強い牽制だった。



 しかも、越比など対中強硬派は無論、越比同様領有権紛争を抱えても中国批判を控えるマレーシア、中国と加盟国のパイプ役インドネシアまで、ベトナムの対中非難を理解した。

 縷縷論じてきたが、賢者を自任する中華帝国としては「間」が抜けている。《自滅する中国/なぜ世界帝国になれないのか=芙蓉書房》の著者エドワード・ルトワック(71)は、一方的勝利継続は相手の反動を呼び、結局は自らを滅ぼす逆説的論理《勝利による敗北》を指摘する。即ち-

 《国際常識を逸脱した台頭・侵出は畢竟、各国の警戒感や敵愾心を煽る。中立的国家はじめ、友好国の離反まで誘発。敵対国同士の呉越同舟さえ促す。斯くして各国は連携・協力し、場合により同盟まで結ぶ。情勢は中国に次第に不利になり、その大戦略・野望は挫かれる》

 翻ってみれば、日本はベトナムに経済支援→ベトナムはロシアから潜水艦購入→同型潜水艦を運用するインド海軍が越海軍乗員を訓練する-意図せぬ構図を生んだ。米比軍事協力は復元し、米印関係も牛歩ながら前進している。今次日豪関係深化も含め全て中国の“お陰”だ。

 中国の「傲慢ボケ」が創り出す「間の悪さ」=戦略的錯誤→中国の孤立という悪循環、否、好循環が地球を救う。(

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