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□ニューヨーク・タイムズ(米国)
■軍備拡大は緊張高める
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7日付で、中国が進める海洋進出戦略が東南アジア各国による「潜水艦配備競争」につながり、地域の不安定化をもたらしているとする社説を掲載した。
社説はベトナムが今月1日、ロシアから2016年までに6隻購入する予定のキロ級潜水艦のうち最初の1隻を受け取ったことや、ミャンマーも15年までに潜水艦隊を創設する意向であると紹介した。タイも軍備に関する10カ年計画に潜水艦の購入を盛り込むことを計画しており、当局者が購入先の候補であるドイツと韓国で訓練を受けているとした。
すでに潜水艦を保有しているインドネシアやシンガポール、マレーシアも増強を計画しているとし、潜水艦配備競争が進んでいる現実を示した。
さらに、日本が最新鋭の潜水艦部隊を含む防衛能力を有しているにもかかわらず、尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む東シナ海で「中国が領有権を主張することを止められないでいる」と強調した。各国の軍備拡大をもってしても、中国に南シナ海での領有権の主張を抑制させうるかは不透明だとした。
社説はその上で、東南アジア各国は中国と個別に対峙(たいじ)するのではなく、地域のさらなる不安定化を防ぐために集団で中国との交渉にあたる必要があると主張した。軍備拡大の背景には各国の好調な経済状況があることにも触れ、「中国と各国は軍備拡大が安全だけでなく、経済成長の基盤となる安定も損ねる可能性があることを認識すべきだ」と訴えている
□国営新華社通信(中国)
■危険と言いふらし挑発
南シナ海で周辺の国・地域と領有権を争う中国が、もっとも懸念していることは何か-。外国漁船などに操業許可を得るよう求める新たな漁業管理規則にからんで、国営新華社通信が10日付で配信した評論記事に、その答えが示されている。
中国語版では「米国はいつも南シナ海問題で紛糾を引き起こすな」、英語版では「南シナ海での米国の隠された重要課題に油断なく注意すべし」と題した評論は、中国の措置に異を唱える米国を名指しで批判する。米国はこの問題が表面化した直後、中国の漁業管理規則は「挑発的で、潜在的な危険をはらんでいる」と評していた。
クリントン米国務長官(当時)は2010年7月、南シナ海における中国の活動を念頭に「航行の自由と安全」を訴え、中国と周辺国・地域との領有権争いが米国の国家利益に関わるとの認識を示した。対する中国は事あるごとに当事国同士での解決を主張、米国の介入を牽制(けんせい)してきた。
評論は「南シナ海問題で米国がまた仕掛けてきた。中国が実施した漁業規制を挑発行為だとし、危険が存在すると言いふらしている。挑発しているのは誰なのだ」と反問する。措置の目的は漁業資源や生態環境の保護であり、国際社会であまねく行われている措置だと主張し、「しゃしゃり出てきて理由もなく(中国を)非難するとは、どういう了見だ」と米国に矛先を向ける。
「漁夫の利」を狙う米国の「使い古したトリック」というのが、“党の喉(のど)と舌”である新華社の主張だ。「まず緊張や論争、さらには紛争・衝突まで引き起こさせ、それから足を踏み入れ、自らの利益を最大にするために、さも“仲介者”や“審判”のように振る舞う」というのだ。
評論は、周辺国家に「米国の真の意図をはっきり見て取るべきだ」と忠告する。米国に対しても、「双方をそそのかして紛争を起こさせるトリックを弄せず、南シナ海を平和で静かな海に戻すべきだ」とくぎを刺している。
漁業権皮切りに一石二鳥狙う
台湾では有力紙、中国時報の系列紙で中国情報が手厚い旺報が9日付で、外電を基に「中国大陸が南シナ海で新ルール策定、警察権の執行を強化」と大きく報道した。
記事に添えられた「漁業権から一石二鳥を狙う」と題した解説では、東シナ海上空で防空識別圏を設定した中国が、南シナ海ではまず漁業権を主張したことに関し、「主権を主張するだけでなく、同時に経済的利益を満たす」ことが狙いだとする米国のメディア報道を紹介した。
また、無人島の尖閣諸島(沖縄県石垣市)と違って、南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島の太平島には、台湾が人員を配置して実効支配している。このため、防空識別圏を設定して中台関係が悪化するのを避けたとの見方を示した。
「中国にとって南シナ海は、日本だけが相手となる東シナ海に比べて周辺関係国が多く、多数の怒りを買いやすい」と複雑な状況を指摘した上で、中国にとって漁業権の確立こそが、現時点で最も容易に権益を維持できる選択肢だと分析した。
ただし、中国が主張する200万平方キロメートルもの広い海域の取り締まりを徹底する能力はないとみる米メディアの論評を引き、中国の決定は「言うは易く行うは難し」なのが現実だとみる。将来にわたり各方面への投資が必要で、とりわけ海軍の遠洋航行能力の向上が求められると分析した。
今回の動きは馬英九政権発足以降、中国との関係改善を進めてきた台湾にとって微妙な問題だ。中国政策を所管する行政院大陸委員会と外交部(外務省に相当)が、この海域での台湾の領有権を主張してきたが、中台双方の所管官庁のトップ会談の準備が進められる中、消極的な反応にとどめたとの印象は否めない。旺報を除き、各紙での際立った報道はみられなかった。わずかに野党寄りとされる自由時報が電子版(10日付)で、中国は台湾船の活動を尊重しなくてはならない、という台湾当局の反応をそのまま報じている