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時代を見通す日本の基礎情報

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中国の覇権ここまで来たアメリカを挑発

中国が東シナ海での共同開発に関する日本との合意を破る形で新たな資源開発を始め、日中関係に新たな対立の炎を招いた。だが中国は同時に米国の排他的経済水域(EEZ)内部でも軍事行動を開始したことを初めて宣言し、米側を緊張させている。いずれの出来事も共通項は中国の海洋戦略の過激な拡大である。

 EEZとは1994年発効の国連海洋法条約で、沿岸から200カイリの範囲内で沿岸国の経済開発の主権を認めた水域である。ただし軍事的活動には沿岸国の主権は適用されず、各国とも軍艦などは相互のEEZ内で自由に活動させてきた

 だが中国は大陸棚の末端までを自国のEEZだと宣言するだけでなく、他国の軍事活動への主権も主張し、自国のEEZ内の他国の軍艦の航行などに事前の承認を求めてきた。米国など各国はその要求を一方的だとして排し、中国EEZ内での軍事活動を続け、対立の原因ともなってきた。

 ところが中国国防省外事弁公室の周波大佐は6月はじめ、シンガポールでの国際安全保障の会議で各国代表を驚かせる発言をした。

 「中国人民解放軍は米国の中国EEZ内での軍事偵察活動に対応する形で米国のEEZ内に艦艇を送り込み、偵察をした。まだほんの数回ではあるが」

 周大佐は中国海軍艦艇が昨年後半、ハワイとグアム島のそれぞれ米国EEZに勝手に入って、軍事情報の収集と偵察の作戦を実行したと明かした。ハワイもグアムも米軍のアジア戦略の最重要拠点である。

 中国はこれまで自国EEZでの他国の「勝手な軍事活動は許さない」という立場を堅持してきたため、自国は当然、そうした行動はとらないとみられていた。だから他国の関係者は驚いたわけだ。

 米国側では中国のこの宣言を中国の海洋戦略全体を変えうる重要な動きとして真剣に受け止め、官民での論議を始めた。議会の政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」は6月中旬、研究結果を「中国の外国EEZ内で拡大する軍事作戦」と題する報告にまとめた。

 同報告は米太平洋軍のサミュエル・ロックリア司令官らの見解を引用し、中国の米国EEZでの軍事行動自体は国際規範に沿った動きだとはいえ、中国は今後も自国EEZへの他国の軍事的な航行や活動を認めず、矛盾する二重基準を続けるだろうとの予測を打ち出した。他国には禁じる行動を自国は実行するという背反である。

 報告はさらに、中国の初の米国EEZでの軍事行動発表の背景として以下のような中国軍の動きをあげていた。

 ▽ハワイ沖やインド洋など遠洋での活動を強め、そのための空母など大型艦の増強を急速に進め、作戦可能な領域を拡大し始めた。

 ▽遠洋艦隊の防空能力や水陸両用戦力を高める新装備、訓練を増し、米国方面に向けての前方配備を広げてきた。

 ▽とくに昨年から今年にかけ、小型の近海防御用艦艇「江島型」(056型)コルベットを10隻以上も完成させ、東シナ海や南シナ海に配備し、結果的に海軍全体の遠洋作戦能力を高めた。

 米国EEZ立ち入りの宣言も、中国のこうした海洋戦略の果敢な拡大で説明がつくというわけだ。そうなると日本への脅威の拡大も当然、懸念される

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