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中央大学(東京都八王子市)が学部生と大学院生を海外視察に派遣するプログラムで、9月8日から15日まで上海市と周辺都市を訪れた大学院1年の中村駿(しゅん)さん。「でも、例えば日本のアニメのことを良く知っている中国人の大学生に出会ってみて、全員が反日ではないんだと実感した」という。
中央大の学生が視察
当たり前といえば当たり前のことだが、先入観から硬直化し始めていた「中国人観」が、中国の土を実際に踏んだ肌感覚で実像に一歩近づいたことは、間違いない。松尾奈津未(なつみ)さん(3年)は、「第一印象は冷たい中国人も、知り合って話をしてみると実は温かい。日本人(の習慣)と違って主張する、本音で話す、個人の信頼関係を大切にすると感じた」と話した。
今回の派遣は文科省グローバル人材育成推進事業にのっとったプログラム。中大では初の実施で男女12人が参加した。上海在住の中大卒業生らが組織する上海白門会(大友志郎会長)の支援で、上海や周辺の日系企業や国際企業など中国ビジネスの現場を視察した。提携先の上海理工大学の学生寮に宿泊し、上海理工大日本文化交流センター(何偉銘(かいめい)センター長)の学生らとも交流。中国の実像を身近に見せることでグローバル人材とは何かを考えさせる狙いがある。
「50代の父が初の海外勤務で上海にいるが(中国での仕事や中国人との関係などで)前向きな話は聞かされなかった」という石川勝浩(かつひろ)さん(3年)。「視察してみて確かに(対中進出先での人間関係など)困難はありそうだが、半面、活気がある。本音でぶつかり、異文化を受け入れる力が必要」と感じた。
小野明日香(あすか)さん(1年)の場合は、「中国経済のバブルが今すぐにもはじけるとの報道を見聞きしていたが、内陸部なども含め、経済成長は今後も続くのではないかと感じた」と話している。「中国の政治体制を中国人自身がどう思っているか、興味は尽きない」ともいい、中国への関心を深めたようす。
中国から中大への留学生で3年の周逸乾(しゅういかん)さんも派遣メンバーのひとり。「日本企業は日本でも中国でもチームワークが強みになっている。中国人はどちらかといえば個人主義だ。一方、日本企業は中国人をあまり信頼していないのではないかとの印象をもった」と指摘した。現地法人で中国人がトップを務める日系企業は、まだ少数派だ。
「二面性、尊重したい」
3年の鹿野(かの)千菜美(ちなみ)さんの視点も興味深い。「中国は国家と個人の考え方に違いがあり、(同一人物でも)立場や状況によって異なる発言や行動をする“二面性”があるのではないか」とみる。個人的に日本や日本人が好きでも、例えば反日活動や共産党の地元集会にかり出されれば、一般の人であっても公の場で反日以外の姿勢をとることは中国人としては難しい。「そうした二面性も受け入れて尊重したい」と鹿野さんはいう
人間観察に関心をもつ大学院2年の小林晴行(はるゆき)さんは、「中国で働く日本人はみな、語学を含む人とのコミュニケーション能力を苦労して高めている。精神的にも肉体的にもタフだ。そして仕事の話になると目の色が変わるほどに信念がある。以前はなんとなく将来、海外で働きたいと思う程度だったが、実際に上海に来てみて、それが確信に変わった」と笑顔をみせた。
ダイナミックに動く中国の最前線は若い感性を強く刺激したようだ。中大の若林茂則(しげのり)副学長は、「このプログラムは大学と学生が国際的な人間関係の構築でスタート地点に立つことに意味がある」と強調した。今後も継続し、米ニューヨークなどにも視察先を広げる方針だ