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朴槿恵氏は自由民主主義と資本主義体制という同じ価値観を持つ米国と同盟関係を維持しながら、人権が抑圧され自由も制限された共産党一党独裁国家、中国とも良好な関係を築いていくというバランス外交を目指しているようだ。
寝耳に水の防空圏設定
バランス外交は二股外交とも言える。米国と中国のいずれかを選択しなければいけない事態が起きた時、韓国は試される。中国が先頃行った、日本に対する挑発とみられる東シナ海上空への防空識別圏設定は、韓国には「寝耳に水」だったはずだ。この防空圏には中国が領有権を主張する日本の領土、尖閣諸島(沖縄県石垣市)だけでなく、中韓が管轄権を争う海中岩礁、離(イ)於(オ)島(ド)(中国名・蘇岩礁)の上空も含まれていたからだ。
この防空圏設定に対しては日本だけでなく、米軍のB52爆撃機が防空圏内を事前通報なしに飛行するなど米国も激しく反発している。米中対立が表面化した。
保守系の韓国紙、朝鮮日報(電子版、11月28日)は「中国と日本を軸とした対立から徐々に米国と中国の対立へと局面が変化しつつある」「中国の措置は日本だけでなく、米国をも狙ったものと解釈可能だ」と米中対立の様相を呈していることを指摘し、「(韓国政府は)離於島を含んでいることには真っ向から対応するものの、米中の対立に加わるのは避けたい考えだ」と、この問題には及び腰だ。
ありえない二者択一
保守系の韓国紙、東亜日報(電子版、11月28日)は「韓国は米国、日本と手を組んで対中国共同戦線に参加するのか、それとも一歩退いて第三の道を選ぶのか、戦略的で精密な選択と歩みが求められている」と慎重な姿勢を示す。
左派系の韓国紙、京郷新聞(電子版、11月27日)は社説で防空圏設定が地域の新たな葛藤を生み出しているとした上で、「特に気になるのは、このような葛藤が最終的に米中間の北東アジアの覇権競争に帰結されるのではないかという点だ。実際に今回の中国の挑発的な措置は、北東アジアの中国と米国の同盟国の対立の構図をより鮮明にする効果を醸し出している」と警戒する。
さらに「韓国の立場からすると米中の主導権争いは災害に近い。安保は韓米同盟に依存し、経済問題は中国と切り離すことができない。どちらかを排除しながら、他の一方との緊密な関係を持つという二者択一は韓国が取るべき対応ではない」と、これまで通りのバランス外交を勧めている。
その上で「韓中関係をさらに発展させなければいけないが、しかし日米が同盟を強化し、その同盟が日本の集団的自衛権行使を容認し軍事的役割を強化している現実にも適切に対処することが必要である」とした。
米国からも批判の声
韓国の有力紙、中央日報(電子版、11月28日)は社説で「米国と中国、中国と日本の間で国益を守らなければならない韓国として賢明で冷徹な外交が必須だ」とした上で、「この点で朴槿恵政権の対応は失望的だ。首脳間対話すらない韓日間の極端な対立状態が長期化し米国の態度にも微妙な変化が感知されている。日本の集団的自衛権行使と軍事的役割強化を容認するなど日米関係は急速に強化されている。韓米関係が相対的に弱まる中、離於島問題などで韓中関係まできしめば韓国は深刻な外交孤立に陥る」と警鐘を鳴らす。
こうした朴槿恵外交には、韓国だけなく米国サイドからも批判の声が挙がり始めている。米紙、ニューヨーク・タイムズ(11月24日)は「歴史問題をめぐり冷え切っている日韓関係が米国のアジア外交、安保政策で新たな頭痛の種となっている」と指摘し、「最悪の状況に陥っている日韓の確執は、オバマ政権の外交戦略である『アジアへの中心軸移動(Pivot to Asia)』に大きな障害となっている」と伝えた