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時代を見通す日本の基礎情報

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半沢直樹もたまげる、究極の「出向先」

おい半沢、聞いたか? 近藤の出向先がタミヤ電機に決まったぞ」

 及川光博さん演じる渡真利忍が、主人公の半沢直樹(堺雅人さん)に語りかける。今年最大のヒットとなったテレビドラマ『半沢直樹』(TBS系)で、印象的だったシーンの
9月22日(日)に最終回を迎えた『半沢直樹』では、銀行から外部企業への「出向」をめぐる、悲喜こもごもの人間模様が最後の最後まで描かれた。衝撃のラストシーンも大きな話題となっているが、出向については論争も巻き起こっている。ドラマが大ヒットした反動で、出向についてネガティブなイメージが多くの視聴者に刷り込まれたかもしれないが、実際の出向とは「出向元(元の会社)との労働契約を維持しつつ、出向先の指揮命令の下で就労する」仕組み。銀行に限らず一般企業では特段珍しいことでもない、という主張が出るのももっともである。

 だが、こんな出向の通告を受けたら、さすがの半沢直樹もぶったまげるかもしれない。

■ 富士電機子会社が下した、仰天の「出向命令」

 「君の出向が決まった」

 「外部企業に? 出向先で何の業務に従事するのでしょうか? 」

 「君の転職先を見つけてほしい」

 「私が自分で? 」

 「そうなる。行き先が見つかるまでの給料は会社が保証するから」

 2011年7月。東京・八丁堀のオフィスで、そのやり取りは始まった。重電5社の一角であり、名門・富士電機の子会社である富士電機ITソリューション(FSL、現在は東京・外神田に本社移転)に勤務する40代男性の松木さん(仮名)は、上司からの通告とともに、会社から書面を受け取った。それには、主に以下の事項が記されていた。
出向先:株式会社 関東雇用創出機構(※編集部註:当時の社名、現在は日本雇用創出機構)

 所在地:東京都千代田区

 形態 :FSLに在籍のまま、他企業に勤務し、その指揮・命令・監督を受けて業務に従事する

 業務内容:?自身の転職に向けた再就職活動

   ?再就職活動中の給与・賞与は100%支給し、

 再就職支援会社への手数料は会社負担とする

 期間 :半年間。但し、再就職先が決定した時点で会社都合退職とする

  (やむを得ない場合は出向期間を延長することがある)

 目を疑った。これが意味するのは出向先への“片道切符の島流し”、つまるところ事実上の退職勧奨ではないか――。松木さんはその場での承諾を避け、会社側に再考を訴えた。だが、会社の方針は覆らない。その後も直属の部長や人事部長、取締役などと、約3カ月、延べ20回以上にわたる面談が続いた。「君は勤務成績が悪い。10月にオフィスを移転する予定だが物理的にも君の席はない」などとも伝えられた。

 前後して社内で同様の出向を命じられた同僚が、複数いることも知った。「納得いかない面もあるが、自分は転職も考えていたので承諾した」。ある同僚は言った。しかし、松木さん自身は会社を辞めることなど望んでいない。成績が悪いといっても、松木さんは間接部門に在籍しており、評価基準や業績への貢献度も分かりづらい。そもそも、こんな形態の出向など聞いたことがない。

■ 「異議をとどめて、現地に赴く」

 松木さんは最後まで抵抗を試みたが、最終的には業務命令違反で自分の立場が不利になることを避けるため、「納得も合意もしていないが、業務命令なので、異議をとどめて、現地に赴く」との文書を会社に渡し、関東雇用創出機構へ出向した。2011年10月のことだ。

 関東雇用創出機構のオフィスでは、自分専用のテーブルとパソコンを貸与された。カウンセラーとして常駐している関東雇用創出機構の社員から、履歴書の書き方や面接の注意事項などが記された資料を受け取り、時には助言なども受けたが、「インターネットで転職情報サイトに自分で登録して、転職先を探して自分で面接に行くなど、転職活動は基本的に自分が主体で活動することが前提でした。求人情報の一部提供はあったが、転職そのものを仲介されるようなことはなかった」と松木さんは振り返る。スキルアップを図る研修を受けた記憶はない
(※編集部註:2011年11月、関東雇用創出機構は関西雇用創出機構と統合し、日本雇用創出機構に社名を変更した。以後の表記は日本雇用創出機構に統一する)

 松木さんは日本雇用創出機構に「出勤」し、自分の転職先を探す「業務」を続けた。当初の期間だった半年間では決まらず、出向は都度延長された。その前後で、労働問題に詳しい弁護士に、この件を相談していた。そして2012年9月、松木さんは出向命令の無効や損害賠償などを求めて、FSLを東京地方裁判所に訴えた。

■ 「出向命令権の濫用」が争点

 争点は、転職を目的とする出向命令に合理性があるかどうかだ。労働契約法は14条において「使用者(会社)が労働者に出向命令を出す権利を、濫用したと認められる場合は命令そのものを無効にする」と定めている。東京地裁での審理は続いており、早ければ2013年内か2014年初めごろには一審判決が下される見通しだ。

 松木さんは裁判を起こした後、2013年1月にFSLから出向を解かれたが、自宅待機を命じられ、現在も自宅待機中である。FSLは、その後も松木さんに対して、会社に出入りしている清掃会社への出向や取引先である配送会社への出向を命じたりしており、松木さんを元の職場に戻すことには否定的だ。

 東洋経済はFSLの広報窓口である親会社の富士電機に、一連の件について取材を申し込んだが、「係争中の案件のため、この件は取材には応じられない」(富士電機広報)との回答を得ている。

 松木さんのケースは最近、大手家電メーカーなどのリストラをめぐり、「戦力外」とされた中高年社員を集め、スキルアップや求職活動をさせているとして、話題になった“追い出し部屋”を想起させる。東洋経済オンラインでも、ソニーの事例として、週刊東洋経済2013年6月23日号掲載記事を、「ソニー『中高年リストラ』の現場」として配信しているので、併せてお読みいただきたい。

 ソニーの“追い出し部屋”と指摘された「キャリアデザイン室」と異なるのは、リストラをしようとする企業の内部にそれはなく、外部への出向というアウトソーシングの形態を採っていることだ。これを請け負っている日本雇用創出機構とは、いったい何者なのか。

本社は東京都千代田区大手町2丁目。JR東京駅・日本橋口からほど近い場所にある、真新しいビル。前面は緑の植物で覆われている珍しい装いだ。人材サービス大手の一角、パソナグループの本社と同じであり、日本雇用創出機構はパソナグループ代表の南部靖之氏が会長を務めるパソナの子会社なのである。

 FSLから松木さんが出向した枠組みを、日本雇用創出機構は「人材ブリッジバンク事業」と名付けて展開している。同機構の親会社であり、取材対応の窓口となるパソナに人材ブリッジバンクの詳しい中身について書面で尋ねたところ、「会員企業の従業員で希望される方を出向社員として迎え、カウンセラーによるアドバイスや様々な求人情報を提供することで転職を目指していただきます。出向期間終了日までに転職をされなかった場合、もしくは転職する意思がなくなった場合は、出向元の企業に帰任いただくことが原則となっています」(パソナグループ広報室)との回答が返ってきた。

 また、一部でまるで追い出し部屋のアウトソーシングのように指摘されている点について見解を聞いたところ、「このようなご指摘をされることは誠に遺憾です」(パソナグループ広報室)との返答だった。確かに会社や仕事に対する考え方は人それぞれであり、このような形態での転職や再就職を望む人はいるかもしれない。

■ アルバックの「出向」をめぐってもトラブル

 ただ、人材ブリッジバンクについては、半導体製造装置大手アルバックをめぐっても、直近でトラブルが生じた事例がある。神奈川県茅ヶ崎市に本社を置くアルバックは、人材ブリッジバンクを活用して、10数人の社員に日本雇用創出機構への出向を命じたが、それに一部の対象者が強く反発する騒ぎとなった。

 出向の一部対象者は横浜に法律事務所を構える岡田尚弁護士に相談。岡田弁護士は、アルバックの労働組合を通じて、神奈川県の労働委員会に企業内での労使問題の仲裁を目的とする斡旋手続きを執った。どのような話し合いが行われたのかの詳細は不明だが、アルバックはその後、当該の出向を打ち切った。岡田弁護士は東洋経済の取材に、「追い出しに手を貸すなんて、パソナのような企業がやるべきことではない」と話している。
パソナ側の人材ブリッジバンクの説明と、松木さんやアルバックのケースで食い違うのは、「希望される方」「転職する意思がなくなった場合」の部分。もともと、出向を希望しておらず、転職する意思もなかったはずの人たちが、半ば強制的に送り込まれたことに端を発して、トラブルが発生しているのだ。

 それ以上に引っかかるのが、前述したパソナの説明に出てきた「会員企業」の存在である。人材ブリッジバンクには富士電機グループやアルバック以外にも、利用企業がいるということになる。実は日本雇用創出機構のホームページには、「参画企業」として、株主と賛助会員である約70社の企業が紹介されている。いずれも名だたる大手ばかり。富士電機とアルバックの名前も記されている。

 では、これらの企業で、人材ブリッジバンクが日常的に使われているのだろうか。場合によって、トラブルを招くようなビジネスにこれだけ多くの企業が参画したり、お墨付きを与えたりしているのか――。取材を進める過程で、そんな疑問が沸いてきた。

 もちろん、パソナに聞いてみた。パソナの返事は「各会員企業様のご利用状況についての回答は控えさせていただきます」。それもそうだろう。客先の情報を、おいそれと明かせるはずもない。ならば直接聞くしかない。

■ 東洋経済が株主・賛助会員企業70社に直接調査

 東洋経済は、日本雇用創出機構のホームページに記載されている「参画企業」約70社のすべてに人材ブリッジバンクの利用状況と、その考え方についてアンケートを依頼した。一部は回答期限までに返答のない企業もあったが、調査対象の9割以上から回答を得られた。結果は、次ページの図表のとおりだ(一部、追記も入れています。東洋経済オンラインサイト上のみで公開)。
以下が、日本雇用創出機構の株主もしくは賛助会員である「会員企業」による人材ブリッジバンクの利用状況である。
※「アンケートの回答期日(原則として2013年9月20日21時)までに返答なし」に記載している企業のうち、堀場製作所からは記事掲載までに、「利用実績なし」との回答があった

■ 利用は少数派、必要性を感じず停止したケースも

 富士電機とアルバックについては、周辺取材がほぼ立証された回答となった。それ以外について個別の評価は避けるが、回答内容をざっと見たところ、人材ブリッジバンクの利用実績がない企業が大半で、かつて利用していた企業でも、必要性を感じずに利用を停止しているケースも見られる。では、なぜこれだけの大手企業が、日本雇用創出機構の株主や賛助会員となっているのか。

日本雇用創出機構はもともと「『中高年人材の雇用創出』を目指して」(パソナグループ広報室)、前身となる関西雇用創出機構(2002年)、関東雇用創出機構(2003年)がそれぞれ設立され、そこに賛同した大手企業が出資した経緯がある。「豊富な知識や経験、技術等を持つ企業の定年退職者や中高年人材の活躍の機会を広げることを目的に、『人材ブリッジバンク事業』や、『特別選考技術調査推進・支援事業』、『ビジネスサポート事業』など、様々な事業を通じて、人と企業を元気にするプラットフォームの構築に取り組んでいます」(パソナグループ広報室)とはパソナ側の説明だ。

 ただ、ある株主企業の人事担当役員は、「あまり積極的に付き合っているワケではない。当初は大手企業同士の中高年人材を融通するような枠組みを進めようとしたが、うまく行かず、立ちゆかなくなってパソナが主導して再編した。その際に出資金の300万円は減資されて今は1円相当になっている」と明かす。

■ 大手70社従業員の大半は存在を知らない? 

 出資時と違って、現在の日本雇用創出機構の人材ブリッジバンクが、どんな使われ方をしているのかを、詳しく知らない株主企業の関係者は多い。名だたる約70社の大手企業従業員のうち、人事部門担当者以外は、名前も聞いたことのない人が大半と推測される。

 人材ブリッジバンクを利用している企業の中でも、“追い出し部屋”のように使わずに、労使合意の下、円満に活用されている例もあるだろう。企業によっては希望退職を募る際、再就職支援の選択肢の一つとして利用した例もある。ただ、「利用を希望した人は少数派だった」(ある株主企業の関係者)。この枠組みは慎重に扱うべきで、乱暴に使うと深刻な労使紛争を招きかねない。表に出てきていないだけで、富士電機グループやアルバック以外にも、トラブルが隠れているかもしれない。

 リストラは一般的に承認されている経営の立て直し手段であり、それ自体は悪とは言えない。整理解雇も条件を満たせば適法である。その際に、日本では解雇に関する訴訟は長期化しがちであり、結局争いになると一件一件、社会的相当性の有無などを判断せざるをえず、会社にとっては有効か無効かの予見可能性がない。

 その点で、大企業が“追い出し部屋”のような法の抜け道に走ってしまうという面はある。“追い出し部屋”についても、いきなり解雇せずに温情を与えているという反論もある。それでも、従業員の心を無視した不当なリストラが許されていいはずはない。人材ブリッジバンクの存在に驚いた読者が大半のはずだ。

 「出向」というキーワードを、世の中に広く認知させた大ヒットドラマ『半沢直樹』は、池井戸潤さんが描いた小説「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(文芸春秋)が原作だ。事実を基にしているといっても、これはフィクション。出向についても脚色した部分もあるかもしれないが、現実世界では、退職させるための転職活動を業務命令として、半ば強制的に外部企業に送り込む、という何とも奇怪に映る出向が存在する。「事実は小説よりも奇なり」ということわざは、まさにそのとおりである

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