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金持ちはきれいな空気求め、海南島で物件探し 京華時報やロイター通信などによると、北京市に住む夫婦は2008年に結婚し、2年後に長男が誕生。ただ、この息子が大気汚染によって深刻な健康問題を抱えるようになり、妻はきれいな空気を求め、息子を連れて一緒に海南島に引っ越したという。
しかし、北京と海南島は飛行機でも3時間以上かかる遠距離で、まもなく結婚生活は破綻。夫婦は会うたびに口論となり、それに耐えかえた夫が裁判所に離婚を申請した。妻の意向については報じられていない。
北京や上海など中国の都市部では深刻な大気汚染が長らく社会問題となっており、政府も石炭の使用を抑制するなど最優先課題として対策に取り組んではいるが、これまでのところあまり効果は上がっていない。
だから、息子を連れて避難したケースも決して例外ではなさそうだ。
“バブル崩壊”でもマンション5割増…島“捏造”実効支配の追い風に
というのも、中国人富裕層の間で、きれいな空気を求め南シナ海の海南島で物件を求める動きがあるのだという。米ブルームバーグが今年3月、環球時報の報道として伝えた。記事は、海南島南部の三亜市で物件を探しているという上海市在住の主婦の声を紹介。この主婦は「上海の大気汚染はかつてないほど深刻だ」としたうえで、「子供と両親の健康のためにも、汚染のひどい時期に滞在する場所を持ちたい」と訴えている。
三亜市では昨年、マンション売り上げが前年比48%増だった。地元の不動産関係者によると、汚染がひどい冬場に中国本土から訪れる目的で購入する人が多いという。
当局は実行支配に向け着々
ただ、うがった見方をすれば、深刻な大気汚染の“副産物”として、中国国民が海南島を含む南シナ海に関心を寄せるようになったと解釈することもできる。そして、中国政府はこれを歓迎している可能性すらある。
それというのも中国はこの海域で、ベトナムやフィリピン、台湾などと激しく領有権を争っている。パラセル(中国名・西沙)諸島では、中国の石油掘削を発端に、中国公船とベトナム船の衝突が相次ぐ。またスプラトリー(同・南沙)諸島でも、中国がジョンソン南礁に大量の砂を搬入し埋め立てていることから、フィリピンが抗議。さらに同諸島では、新たに2カ所の岩礁で埋め立てる動きが確認されたという。中国政府はこうした“無法行為”を既成事実にする公算が大きく、今後さらに実効支配を強めていくとみられる。
“健康な生活へ南シナ海を”…中国お得意「大義名分」「既成事実化」戦略
一方で、国民向けには、南シナ海に浮かぶ海南島について、白砂のビーチや穏やかな気候から「中国のハワイ」と喧伝(けんでん)。そして中国国家環境監視センターは、今年1月の同島・海口市の空気のきれいさが、調査対象の国内74都市中で3位だったとPRしている。まるで、国民が健康な生活を送るためには「南シナ海の領有が欠かせない」とでも言いたいばかりに。
また、中国はかねてから南シナ海のリゾート開発に積極的とされ、昨年10月には、パラセル諸島を巡る観光ツアー「西沙旅行」が始まった。こうした観光促進によって、ベトナムなど周辺諸国との緊張の高まりは必至で、中国の南シナ海における実効支配に向けた新たな一歩と取られても言い逃れはできないだろう。
「中国のハワイ」の環境守れるか
「中国のハワイ」という“魅力的なコピー”に乗せられてか、中国人だけでなく、日本からも大勢の観光客が海南島を訪れているという。ただ関西には、本家ハワイにも認められたビーチがある。和歌山県白浜町の白良浜だ。米ハワイ州ホノルル市で2000(平成12)年7月、同市のワイキキビーチと白良浜が「友好姉妹浜提携」の調印式を行ったのである。
白浜町、ホノルル市とも観光にとって欠かせない財産であるビーチを未来に残すため、双方が環境保全対策に力を入れていることが友好姉妹浜提携への原動力になったという。
中国の海南島にも、「ハワイ」の名に恥じぬ環境保全を望みたいのだが…。