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10月28日に起きた天安門自爆テロ事件で、中国当局は早々にウイグル人の犯行と断定したが、数々の疑惑が指摘されている。監視対象になっているウイグル人がなぜ、犯行を起こすことができたのか、困窮するウイグル人がなぜベンツに乗って3000キロも離れた北京に来ることができたのか、などだ。ウイグル人弾圧のためのでっちあげだとの指摘もある。
では誰が、何の目的で自爆事件を起こしたのか。11月9日から開かれる第18期中央委員会第3回全体会議(第18期3中)という重要会議直前というタイミングから、中国国内では、“政敵”による犯行との説が流れた。
「何者かが炎上の様子を撮って中国版ツイッター『微博』に投稿した。外国ならいざしらず、中国では、投稿者に逮捕リスクがある。投稿したのは、一般人ではなく、当局関係者だろう。
だから、党内で権限を持った人物が事件のでっちあげに関与しているという噂が流れた。政権内で習体制に不満を持つ非主流派が仕組んだのではないかというわけだ」(現地メディア関係者)
だが、米日中比較政策研究所高級研究員・楊中美氏はその説を、こう否定する。
「天安門はパスポート表紙の国章デザインにも採用されるほどの共産党の象徴。しかも、毛沢東の肖像画の前です。さすがに非主流派といえども、党内の人物がそこでテロを起こすとは考えられません」
では、一部で報じられているような、当局に親族が殺されたことに抗議するウイグル族の一家心中なのか。
考えていただきたい。貧しいウイグル族一家に、一体誰が高級車を提供したのか。なぜ当局は事件の痕跡を短時間で拭い去る必要があったのか──明確に共産党政権の打倒を狙う組織が背後に存在し、援助や指示をしていたと考えるほうが自然ではないだろうか。
実は、習政権は少数民族による単発的な自爆テロなど恐れていない。むしろ、弾圧を強め、資源が豊富な少数民族の自治区の支配を強化できるので、好都合だ。
彼らが何より恐れているのは、一般庶民による国家転覆目的のテロだ。例えば、人口の9割を占める漢民族が関与したテロが天安門前で起きたとすれば、政権へのダメージは計り知れない。それこそ、「新・天安門事件」として不満を抱えた人民が団結する象徴と化してしまう恐れがあるのだ。