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時代を見通す日本の基礎情報

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強まる中国の言論統制 西側の反応の弱さ

10月20日付ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、社説で、習近平政権が推進する反民主化運動は、北京大学内にも浸透し、今回、北京大学の夏業良教授が、その職を失うことになったことを、批判的に伝えています。

 すなわち、10月18日の緊急教授会を経て、北京大学は、経済学部のベテラン教授で民主化推進者でもある夏業良(Xia Yeliang)教授を2014年1月31日付で解雇すると本人に告げた。大学側は、教授が学界で十分な実績を上げていない事を解雇理由とし、教授には政治的理由であることを公の場で言わないよう警告した。政治的理由としないのは、共産党のいつものやり方である。

 中国共産党指導部から見れば、夏教授の罪には、民主主義マニフェスト「08憲章」に署名したことも含まれる。そこでは、政府の検閲を批判し、人民政府の理想を政府が支持することを訴えている。このような教授の姿勢によって、教授は拘留や自宅監禁されたこともある。現在は、習近平の反民主化運動の真っ只中であり、夏教授はその職を追われた。

 夏教授の解雇は、一つには、中国政府が神経質になっている証しである。役人達は、大学での言論の自由が共産党の支配を揺るがしかねないと警戒している。しかし一方、共産党は、このような強硬姿勢を取っても何の対価も払わずに済むだろうとのある種自信もあったのではないか。

 近年、北京大学は、世界中のトップ大学と提携を進めている。その中には、コロンビア、スタンフォード、LSE、ソウル等が含まれる。今のところ、夏教授の件に関して警告を発したのは、マサチューセッツ州にある1つのカレッジのみである。北京大学を訪問したロンドン市長も英国財務大臣も、夏教授の件に触れることはなかった。

 西側の指導者達が、中国の自由化を、中国側の説明だけで判断し続ける限り、夏業良教授のような民主化を求める人達への弾圧は、よりひどくなるだろう、と警告しています。

* * *

 本年春の習近平体制発足以来、中国の社会主義体制の堅持、自由主義、民主主義に対する統制は、中国政府の公式の態度として打ち出されていますが、それが国内の言論統制にも反映されていることは明らかです。今回の夏教授の例もその1つでしょう。
日本に住んでいた朱建栄教授もまだ釈放されていません。彼は最近特別に新しいことを言ったわけではありません。従来ならば大目に見られたことが見られないような状況となっていると判断されます。夏教授迫害の理由の中に、「08憲章」支持も入っていることも、それを示唆します。

 もう1つ注目すべきは、この社説も例を挙げて指摘しているように、このような傾向を咎める西側の反応の弱さです。

 かつては、米国大統領の訪中があるごとに、中国側は一時的にでも反体制運動者を釈放するジェスチャーを示しましたが、それをしなくなってから既に久しくなります。本年6月のカリフォルニアにおける米中首脳会談では、中国の人権問題が取り上げられた形跡は無く、まして、中国側が、一時的にでも、それに対応して人権抑圧を緩和する国内措置を取ったことはありませんでした。

 人権問題は、従来は、議会における民主党の旗印でした。民主党多数の頃のぺロシ下院議長などは、その最たるものでした。しかしオバマ政権になって最初の訪中(2009年11月)では、民主党自身が、その旗を降ろしています。

 人権問題は、外交カードとしての技術的な面だけから見ても、米国及び西側が優位にある有効なカードであることを考えると、それを放棄するのはもったいない感を禁じ得ません。まして、アメリカが、価値観の国であると主張し続けるかぎり、中国との外交において、人権問題は放棄すべきではないと思います。

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