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気温30度を超える炎天下、黒いかりゆし姿の安倍首相は追悼式の挨拶で、沖縄県にある米軍基地の負担軽減に引き続き取り組む考えを示した。さらに、県内で女性会社員が元米兵に暴行、殺害された事件に言及すると、「お前がやったんだろ」と意味不明な罵声が響いた。
安倍首相に対しては、前回の平成27年の追悼式でも「さっさと帰れ」「嘘を言うな」など多くのヤジが飛んだ。しかし今回はヤジは数回あっただけ。安倍首相が挨拶を終えると少なくない拍手が送られた。
安倍首相に先立つ翁長氏による平和宣言は昨年に引き続いて、政治色が濃いものだった。翁長氏は「普天間飛行場の辺野古移設については、県民の理解は得られず、これを唯一の解決策とする考えは、到底許容できるものではない」と強調。元米兵による女性暴行殺害事件を踏まえ「日米両政府に対し、日米地位協定の抜本的な見直しとともに、海兵隊の削減を含む米軍基地の整理縮小など、過重な基地負担の軽減を先送りすることなく、直ちに実現するよう強く求める」と訴えた
ただ、翁長氏が平和宣言を読み上げている途中、会場から「政治利用はやめろ! 靖国神社を参拝してこい」と叫んだ男性が警備の警察官に会場から連れ出される場面もあった。
戦争による犠牲者を悼み、静かに平和を願うはずの追悼式は本来の目的とはほど遠い雰囲気に覆われた。
普天間飛行場の辺野古移設をめぐっては、政府と翁長氏との対立が続く。総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は6月、翁長氏による辺野古周辺の埋め立て承認取り消しに対する政府の是正指示について適法性の判断を示さなかった。
この判断を受け、政府は沖縄県が是正指示の取り消しを求め提訴すべきだとの考えを示していたが、翁長氏は提訴を見送っている。提訴の見送りは、政府と県による和解条項で交わした段取りから外れる形となり、司法決着を図る道筋が不透明となる。
このため政府は県が是正指示に従うべきだとして違法確認訴訟を起こす検討に入った。翁長氏が地方自治法で定められた最終期限である7月21日までに提訴しない場合には新たな訴訟に踏み切る構えだ。
昭和45年6月23日は沖縄戦の組織的戦闘が終結した日とされる。戦後71年を迎えた「慰霊の日」の光景は、米軍の基地負担をめぐり国と沖縄県の間に横たわる溝を象徴しているようにも見えた。