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時代を見通す日本の基礎情報

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架橋国家”韓国の立場は?反日による中韓連携の危うさ 

冷戦期の韓国の安保環境を「強制された島国」と称したのは、朝鮮戦争中、韓国軍初の陸軍大将を務めた白善●(=火へんに華)将軍であった。国土分断により中国、旧ソ連という大陸国家と外交的に接点を持たず、米国日本という海洋国家と提携して朝鮮戦争の再発を抑止してきた韓国は、地理的に大陸と繋がりながらも、人為的に「島国」であることを強いられ、その安保認識も海洋国家のそれに近かった。冷戦終結後1992年の中韓国交正常化は、韓国という「強制された島国」がその「強制」から解き放たれ、大陸国家との関係を取り戻すことを意味していた。

 ≪米中の「架橋国家」との認識≫

 以来20年余を経て、韓国の安保認識は大きく変わった。確かに、北朝鮮が韓国の安全にとって最大の脅威であるとの認識の多くは継承されているが、それは必ずしも北朝鮮と同盟関係にある中国に対する脅威認識には連動していない。冷戦期、北朝鮮を背後から支え韓国主導の国土統一を阻む勢力として警戒する声も聞かれたが、近年、耳にすることは少ない。

 むしろ、冷戦後の韓国は、中国の存在を国土分断の「現状維持勢力」と見なしている。背景には、中国が北朝鮮の「頭越し」に、韓国に武力行使をすることはないとの認識がある。韓国北朝鮮さえ抑止しておけば、中国と交戦状態になることはないというわけだ。かくして、米国との同盟関係によって北朝鮮の対南武力行使を抑止する一方で、中国との友好関係を維持・発展させることは矛盾しないと考えられる。韓国が大国同士を結節する「架橋国家」とする自己認識も、ここから生まれた
このような自己認識は、「北東アジア・バランサー論」を唱えた盧武鉉元大統領のそれに近いが、朴槿恵大統領もこの自己認識を共有している。朴大統領は今回の訪中で、習近平国家主席と「中韓未来ビジョン共同声明」を発表したが、これは、李明博前大統領がオバマ大統領との間で発表した「米韓未来ビジョン共同声明」を意識しつつバランスをとったものであったろう。

 ≪対立に巻き込まれたくはなし≫

 確かに、朝鮮半島に限っては、米国中国は現状維持で「結託」しており、韓国はその現実を受け入れているといってよい。そうだとすれば、韓国が危惧すべきは、米中関係が悪化し、その対立に巻き込まれることに違いない。韓国が「架橋国家」との認識の下、米中間で「バランスをとっているのも、それを危惧してのことであろう。いや、韓国が米中間で「バランスをとる外交を展開できる--との認識を持てる--ということ自体、米中両国が朝鮮半島での現状維持で「結託」している証左というべきかもしれない。

 ところが、日本をはじめ多くが懸念しているのは、朝鮮半島での米中結託よりも、この地域全体での米中結託である。先月の米中首脳会談で習主席は、「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と述べたが、米国が中国の海洋進出を許し、米国が「結託」して、権益を認め合うなどあってはならない。だからこそ、米軍がこの地域に前方展開する兵力を同盟国は支えなければならない。

 以前本欄でも指摘したように、ブッシュ前政権が着手した在韓米軍の再配備は、それまで北朝鮮抑止に専念してきた在韓米軍に、朝鮮半島以外での「地域的」役割を担わせようとしたものだ。在韓米軍はソウルから離れ、黄海に面した平澤に移転しつつある。中国の海洋進出が進み、在韓米軍が「地域的」役割を担うほどに韓国は対立に巻き込まれることになる。

 ≪米国は日韓の軋轢を最も懸念≫

 アジア・太平洋地域を俯瞰したとき、中国の海洋進出へのヘッジは日米同盟であり、在韓米軍が「地域的」役割を負うようになればなるほど、韓国もそこに組み込まれる。ところが、「中韓未来ビジョン共同声明」では、「最近、歴史などにより地域の国家間の対立と不信が出現し、状況はさらに悪化している」との文言が盛り込まれた。また、朴大統領は、清華大学での演説で、地域内で「歴史と安保問題では葛藤と不信」が生じていると指摘した。

 韓国が日米韓関係という安全保障への対立軸をつくろうとしたとき、最も容易なのは、歴史問題と「反日」で凝結した中韓関係となる。「反日」による中韓提携は、米中間で「バランスをとろうとする朴大統領の外交を演出した。それは多分に朴氏自身の作為の産物でもあったろうが、そこには日韓関係に軋轢(あつれき)が生じることを最も懸念しているのが米国であるということへの配慮はみられない。

 米中関係が良好である限り、その間で「バランス」をとることは困難ではない。だが、韓国がもはや朝鮮半島以外の安全保障に無縁でありえないことを考えれば、米中関係が対立の局面を迎えたときに、最も困難な立場に立たされるのは、「反日」による中韓提携の軸をつくった韓国自身であろう。大国間で「バランス」をとることは、大国間対立に巻き込まれることと表裏一体のはずである

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