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被害者に“なりすまし”て
兵庫県内での昨年の特殊詐欺被害額は、過去最悪の約20億1千万円。都道府県別被害額で全国ワースト6位だった。そこで県警は、2月17日から、集中架電作戦を開始。犯行グループが使う携帯電話を無力化させる取り組みで、他府県警でも導入されている。
還付金詐欺では多くの場合、犯行グループが被害者に電話番号を伝え、かけるように指示する。それを逆手に取り、県警に被害相談が寄せられると、捜査員がその番号に電話をかける。
「還付金はどこで受け取るの?」
「ATM(現金自動預払機)へ行ってください」
被害者を装った捜査員は犯行グループとやり取りを続け、警察と分かられた時点で「詐欺をやめろ」と一喝する。電話は一方的に切られるが、ここからが本当の作戦の始まりだ。
捜査員は電話番号を自動的に発信する架電システムも利用して発信を続け、相手側回線を占拠。相手の電源が切れるまで繰り返す。着信を拒否されても別の回線で徹底してかけ続ける。
この作戦が奏功し、兵庫県内の還付金詐欺被害は、1~2月の計26件(被害額約1900万円)に対し、3月以降はゼロになった。市民からの相談件数も大幅に減ったという。
だまされたフリ作戦も あの手この手で
県警は一方で、犯罪を未然に阻止しようと、ターゲットになりがちなお年寄りらへの啓発を行っている。その一つが、全国の警察で犯行グループから押収した名簿を活用し、掲載されている人を戸別に訪ねて注意を呼びかける手法だ。
名簿は企業の顧客情報などが漏れたとみられ、中には「呉服顧客」「投資・婚活アンケート回答者」などと分類されたものもある。
「親と一緒に住んでいない」「株をやっている」「上品そう。ダイヤモンドに興味ある」-など、電話口で受けた印象も記され、ターゲットを絞り込んでいる様子がうかがえる。
県警は戸別訪問と同時に、犯人をおびき出す「だまされたふり作戦」への協力を仰ぎ、摘発につなげたい考えだ。
このほか、昨年12月には回転すし店の協力を得て「『振り込め詐欺』にダマされたらアカンよ!!」と書かれた小旗をレーンに流すユニークな試みも行った。
あの手この手を駆使した被害防止策。県警は「特殊詐欺は誰もが被害に遭う可能性がある。『自分は大丈夫』と思わず冷静に対応し、何かあれば通報して」と呼び掛けている