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日本への留学経験がある30代前半の韓国人女性は、“大の日本嫌い”である学生時代からの友人に、「一度でいいから日本に行って、自分の目で見てくれば?」と説き続けてきたそうだ。その友人は昨年春に初めて日本に行き、大分県別府市で温泉を体験。帰国後は信じられないほどの日本びいきに“転向”し、秋にも大阪や京都を、今年5月には東京を旅行してきた。かつての日本への評価をめぐる論争が、今では前向きで楽しい日本談議になっているという。
また、夫婦共に教師の50代の韓国人夫妻がいるのだが、夫人の方が歴史問題がらみで反日感情が強く、しょっちゅう議論をふっかけてくる人だった。ところが、昨年の冬休みに初めて日本(京都と大阪)に行ってから、彼女の対日観はガラリと変わった。「トイレがどこも清潔」「地下鉄の駅で、韓国語を勉強しているという見知らぬ女性から韓国語で話しかけられたのには驚き、感激した」と振り返る。
ほんの一部の話ではあるが、初めて訪日した韓国人が一様に語る日本の印象は、街がきれい、全てが清潔で衛生的、秩序がある、親切、落ち着いている、治安がいい、食べ物から何まで商品には手が込んでおり洗練されている-などといったところか。韓国のテレビが伝えるのとは違って、直接見た初めての日本は、自国との比較で“完璧な国”に映っているようだ。
こうした実際の日本の姿は、口コミで広がっており、それは数字にも表れている。日本政府観光局(JNTO)の推計によると、昨年1年間に訪日した韓国人は、中国の499万3800人に次ぎ2番目に多い400万2100人で、それまで過去最高だった2014年より45・3%も増えた。中国との人口比を考えれば、驚くべき数字だ。複数回の訪問もあろうが、韓国民の8%余りが昨年、日本に行ったことになる。今年も、熊本地震の影響で約4%減ったとみられる5月を除けば、4月までは毎月、昨年よりも約53~16%ずつ増えている。
日韓の歴史をめぐる問題で、韓国の政府やメディアは相変わらず日本には厳しい。その一方で個人レベルでは、現実の日本と日本人に触れることで好奇心がさらに高まり、また日本に行こうという者がどんどん増えている。
「距離的に近くて人の外見も似ているのに、こんなに違う」。初めて日本に行った韓国人から聞く土産話からは、日本人の自分が気に留めてもいない日本特有の面白さを知らされることが多い。“日本の当たり前”が韓国人の対日意識をいい方向に動かしているようだ。
職場の警備員のおじさんが、8月に初めての海外旅行で関西に行く予定だという。「どこに行けばいいか」とか「何がうまいのか」などとよく尋ねてくる。余計な入れ知恵はしない。「夏の京都、大阪はとても蒸し暑いですよ。楽しんできてください」と最低限のアドバイスにとどめるようにしている。あるがままを見て、肌で日本を知ってもらいたいからだ。
韓国人に限らず、日本を訪れる外国人観光客は史上最高を更新し続けている。韓国人が日本で実際に感じたことを聞くのを楽しみにしている。