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中東を歴訪中だった朴槿恵(パク・クネ)大統領は、事件から4日後の9日に帰国し、その足で入院中の大使を見舞った。2006年に暴漢に刃物で顔を切りつけられた朴大統領は当時を振り返り、こう述べたという。
「(大使と自分は)どうしてこんなに似た点が多いのでしょう。負傷した部分も、同じ病院で2時間半手術を受けたのもそう。当時、医療スタッフが、傷がもうすこし長く深かったら大変なことになっていたと言ったのですが、それも似ている」。また、「私はその後の人生をオマケだと思い、国と国民のために生きていこうと決心しました。大使も今後は国と韓米同盟のために多くのことをしてくださるような気がする。むしろ(襲撃事件は)韓米関係がより近づく契機になったと思う」とも語った。謝罪の言葉があったかは不明だ。
リッパート大使は翌日退院した。しかしその間、韓国の政府やメディアは「揺るぎない米韓同盟」をしきりに強調。事件はあくまでも「従北派(北朝鮮の主張に従う者)の仕業」ということで一応は落ち着く。政府、メディアこぞって、慌ただしく“取り繕い”に努めるかのような姿が目立った。懸念された米韓関係の悪化は表面化せず、米国政府の外交(社交?)辞令で、とにかく問題は丸く収まった。何よりも韓国は、リッパート大使の度量の広さと懐の深さに救われたわけだ。
「のど元過ぎれば熱さを忘れる」ではなかろうが、米大使襲撃事件が「過去の出来事」として忘れ去られようとする中、韓国では再び、メディアを中心に日本批判が連日展開されている。4月末に訪米する安倍晋三首相の上下両院合同会議での演説に対するものだ。
韓国政府は「歴代内閣の歴史認識を継承し、歴史に対する真摯(しんし)な省察を見せることを期待する」(外務省報道官)と日本にクギを刺しつつ静観する構えをみせているが、メディアは「日本がワシントンで大金をばらまきロビー活動を展開している」「韓国政府は安倍首相の演説を“阻止”できなかった」「安倍訪米を前に日本の外務省が広報動画で、韓国などアジアの繁栄に日本は貢献、各国の建設を支援したと主張。新たな歴史歪曲(わいきょく)との声も」などと騒がしい。
日本が米国とうまくやっていくのは困ることなのだろうか。安倍首相の演説自体、不愉快で面白くないのだろう。韓国政府に対し、「安倍首相が日本の過ちへの責任を否定し、米国政府が免罪符を与えることがあってはならないと、米国政府と議会に明確に要求せねばならない」(東亜日報の社説)と鼻息は荒い。米大使襲撃事件の際、韓国社会を覆った気まずさは、もはやなく、3週間前までの米国への遠慮は感じられない。
自分(韓国)にとって都合の悪いことや嫌なことは、わずか数週間前のことでもすぐに忘れようとする。逆に、歴史問題など日本がからむことについては、執着し続ける。いろいろと掘り返し、自己中心の解釈に基づいた主張を執拗(しつよう)に押し通し、対日非難に熱中する。朴大統領自身、13年の就任直後に「加害者と被害者の立場は千年の歴史が流れても変わらない」と断言した。リッパート大使が韓国に見せたような度量の広さは、韓国には期待できないのだろうか。(