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時代を見通す日本の基礎情報

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経済“火の車”で日本にスリ寄る中国 国内では“反日”後遺症のジレンマ

中国経済の崩壊におびえる習近平政権が、対日関係の改善に乗り出した。9月に中国財界の代表団が異例の来日をしたのに続き、今月18日からは日本側の財界訪中団を受け入れ、冷え込む日中経済のテコ入れを図った。ただ、日本側訪中団と19日に会談したのは汪洋副首相で、中国共産党の序列1~7位までの最高指導部「チャイナ・セブン」ではない。背景には、日本にすり寄る姿を中国国内で見せれば、政権の屋台骨を揺るがしかねない苦しい国内事情があるようだ。

 「経済関係の発展を重視していることを高く評価する」

 汪氏は19日、日中経済協会訪中団を率いる張富士夫トヨタ自動車名誉会長や経団連の米倉弘昌会長らにこう語りかけた。

 汪氏は「日本は歴史を直視し、着実な努力を傾けてもらいたい」と中国政府の公式見解を口にこそした。だが、日中関係を悪化させた原因については「ご承知の理由で…」と述べ、沖縄県・尖閣諸島に直接言及することを回避した。
訪中した経団連の米倉弘昌会長(左)と握手する中国の汪洋副首相。笑顔を浮かべるが、焦りを隠せない


 背景には、中国経済の厳しい台所事情がある。

 今年上半期の日中経済は、貿易総額が前年同期比10・8%減。日本による対中投資は前年同期比31・2%減となっており、昨年9月以降の反日デモなどの影響が日中経済を直撃しているのだ。

 中国事情に詳しい作家の宮崎正弘氏は「中国経済は、お尻に火がついているどころか、大火事になっている。日本企業が中国から引き揚げており、これを引き戻さなければ中国経済は持たないから、習近平政権は焦っている」と解説する。
事実、中国経済は対日関係の悪化もあり、火の車の状態だ。7~9月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前年同期比7・8%増だったが、不動産開発などによる“力ずくの公共投資”で体裁を整えたのが実情。不動産市況が下落すれば、地方政府などがシャドーバンキング(影の金融)などから高利で調達した20兆元(約320兆円)以上の資金が、一気に不良債権化する可能性は否定できない。

 対日関係の改善が死活問題といえる地方政府は、習政権の対日強硬外交を無視するかのように、今年夏ごろから日本企業向けの投資説明会を相次ぎ開催。こうした地方の声を受け、習政権は今年9月、中国最大の複合企業・中国中信集団(CITIC)の常振明会長ら「中国企業家代表団」の訪日を認めざるを得なかった。

 とはいえ、権力基盤を固め切れていない習氏にとって、国内で「日本に降伏した」との印象を与えるのは、自殺行為に等しい。4月に訪中した河野洋平元衆院議長との会談で、汪氏が「今日の中国の発展は、日本や日本企業の支援と協力に助けられたところが大きい」と発言した際には、国内のネット上で「売国奴」「切腹しろ」などと批判を浴びた。

 このため、訪中した日本側要人と会談する中国側要人は、よりランクが低い人物が当てられることが多くなってきた。

 中国では、習氏を筆頭に序列化された共産党中央政治局常務委員の7人が「要人中の要人」(日中外交筋)だ。習氏自身が今年1月と4月に日本側要人と会談したのとは対照的に、ここ最近は、常務委員より序列が劣る中央政治局員(常務委員を含め25人)が応対するケースが目立つ

象徴的なのは、自民党で「親中派の代表格」と呼ばれる加藤紘一元幹事長の扱いだ。日中友好協会会長を務める加藤氏が村山富市元首相とともに1月に訪中した際は、中央政治局員の李源潮国家副主席が会談したが、10月の訪中時には、さらに格下の王晨全人代常務委秘書長が相手だった。

 今回の日中経済協会訪中団も、習氏や李克強首相との会談を求めているが、19日に出てきたのは汪氏だった。訪中団同行筋は「今の日中関係では汪氏が限界か」と肩を落としたというが、前出の宮崎氏はこれと異なる見方を示す。

 「汪氏は米中戦略・経済対話も担当した改革派実力者。李氏の側近でもあり、実質的には序列5位ぐらいの人物だ。形式上は序列1~7位の人間は日本側と会わないが、汪氏を引っ張り出してきたことで、『日中関係を何とかしてほしい』というメッセージを送っているのではないか」

 これを裏付けるように、19日夜に訪中団と会った唐家●(=王へんに旋のつくり)元国務委員は「李首相が会談を望んでいたが、日程の都合で断念した」と“言い訳”に必死だった。

 中国経済を立て直すためには対日関係を改善しなければならないが、国内向けには対日強硬のポーズを取る…。習氏は今後も「進むも地獄、退くも地獄」の政権運営を強いられそうだ

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事実、中国経済は対日関係の悪化もあり、火の車の状態だ。7~9月期の国内総生産(GDP)実質成長率は前年同期比7・8%増だったが、不動産開発などによる“力ずくの公共投資”で体裁を整えたのが実情。不動産市況が下落すれば、地方政府などがシャドーバンキング(影の金融)などから高利で調達した20兆元(約320兆円)以上の資金が、一気に不良債権化する可能性は否定できない。

 対日関係の改善が死活問題といえる地方政府は、習政権の対日強硬外交を無視するかのように、今年夏ごろから日本企業向けの投資説明会を相次ぎ開催。こうした地方の声を受け、習政権は今年9月、中国最大の複合企業・中国中信集団(CITIC)の常振明会長ら「中国企業家代表団」の訪日を認めざるを得なかった。

 とはいえ、権力基盤を固め切れていない習氏にとって、国内で「日本に降伏した」との印象を与えるのは、自殺行為に等しい。4月に訪中した河野洋平元衆院議長との会談で、汪氏が「今日の中国の発展は、日本や日本企業の支援と協力に助けられたところが大きい」と発言した際には、国内のネット上で「売国奴」「切腹しろ」などと批判を浴びた。

 このため、訪中した日本側要人と会談する中国側要人は、よりランクが低い人物が当てられることが多くなってきた。

 中国では、習氏を筆頭に序列化された共産党中央政治局常務委員の7人が「要人中の要人」(日中外交筋)だ。習氏自身が今年1月と4月に日本側要人と会談したのとは対照的に、ここ最近は、常務委員より序列が劣る中央政治局員(常務委員を含め25人)が応対するケースが目立つ

象徴的なのは、自民党で「親中派の代表格」と呼ばれる加藤紘一元幹事長の扱いだ。日中友好協会会長を務める加藤氏が村山富市元首相とともに1月に訪中した際は、中央政治局員の李源潮国家副主席が会談したが、10月の訪中時には、さらに格下の王晨全人代常務委秘書長が相手だった。

 今回の日中経済協会訪中団も、習氏や李克強首相との会談を求めているが、19日に出てきたのは汪氏だった。訪中団同行筋は「今の日中関係では汪氏が限界か」と肩を落としたというが、前出の宮崎氏はこれと異なる見方を示す。

 「汪氏は米中戦略・経済対話も担当した改革派実力者。李氏の側近でもあり、実質的には序列5位ぐらいの人物だ。形式上は序列1~7位の人間は日本側と会わないが、汪氏を引っ張り出してきたことで、『日中関係を何とかしてほしい』というメッセージを送っているのではないか」

 これを裏付けるように、19日夜に訪中団と会った唐家●(=王へんに旋のつくり)元国務委員は「李首相が会談を望んでいたが、日程の都合で断念した」と“言い訳”に必死だった。

 中国経済を立て直すためには対日関係を改善しなければならないが、国内向けには対日強硬のポーズを取る…。習氏は今後も「進むも地獄、退くも地獄」の政権運営を強いられそうだ

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