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【ソウル大貫智子】米韓同盟を最大の柱とする韓国の外交政策が揺れている。日本の集団的自衛権行使容認を支持しているなどとして米国への不満が高まっており、日韓関係の悪化が米韓関係にも影を落としている。一方、米国が求めるミサイル防衛(MD)システムへの参加について、中国への配慮などから韓国は拒んできたが、ここにきて政府当局者の発言が二転三転している状態だ。「中国と日本という変数の間でこじれる米韓同盟」(大手紙・朝鮮日報)がどこへ向かうのか、不透明感が増している。
「政府は米国に対し、日本の集団的自衛権(行使容認)が韓日、韓中間の問題となることをはっきりと伝えなければならない」
14日、韓国国会での質疑で、集団的自衛権問題について与野党がそろって懸念を示した。韓国では、3日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で米国が全面的に支持したと大きく報道された。
韓国政府は「日本で議論の最中なので見守っている」というのが公式の立場で、明確な批判は避けている。安全保障関係者の間では、朝鮮半島有事の際、韓国にもプラスとの見方はあるが、日韓間の歴史問題のために警戒感を示す声が表面的には目立ち、米国への失望感も出ている。
背景には、訪韓したヘーゲル米国防長官が9月30日、朴槿恵(パク・クネ)大統領と会談した際、日米韓協力や日韓関係の重視を求めたのに対し、大統領が激しい対日批判を展開したことがある。朝鮮日報は14日付で「(両氏の)会談3日後に集団的自衛権を全面的に支持する発表をしなければならなかったのか疑問だ。朴大統領は体面を傷つけられたと感じても無理はない」とのコラムを掲載し、米側の対応を批判した。これに対し、米側は「対日批判を展開した韓国側の対応にかなり腹を立てていた」(日韓外交筋)という。
秋の例大祭で安倍晋三首相が靖国神社参拝を避ければ関係改善に向けた動きも出てくると指摘されてきた。だが、聯合ニュースによると、18日に新藤義孝総務相らが参拝したことについて、韓国外務省関係者は、17日に安倍首相が真榊(まさかき)を奉納した際に出した報道官論評と同じ内容の批判をした。
今月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)などで日韓首脳会談が実現せず、韓国が議長を務める日中韓首脳会談の年内開催に動くべきだとの声もあるが、韓国外務省幹部は「(尖閣諸島問題をめぐり難色を示す)中国の態度に変化はない。日中間の問題だ」と話し、積極的に乗り出す動きは見られない。米韓関係に詳しいソウル大の辛星昊(シンソンホ)教授は「韓国では日本ほど米国の様子はうかがわず、世論を重視する傾向がある」と解説する。
一方、MDシステムをめぐり、韓国は米国が参加を強く求めてきた米国主導のMDシステムには参加しないとの立場を取ってきた。ただ、北朝鮮の核・ミサイルの性能向上を受け、韓国軍内で海上配備型迎撃ミサイル「SM3」や移動式地上配備型の「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の導入を検討中との報道が韓国メディアで相次いだ。
国防省報道官は15日の定例会見で「下層(低高度)防衛とは高度100キロ以内を通常言う。THAADも下層防衛だ」と述べ、THAADの導入検討を示唆。翌16日、金寛鎮(キムグァンジン)国防相が緊急の記者懇談会を開き、SM3やTHAADについて「導入を決定してはいないし考慮もしていない。(米主導の)MDには入らない」と否定し、釈明に追われた。
また、米国が主導する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉についても韓国の立場はあいまいだ。未定というのが公式見解だが、尹炳世(ユンビョンセ)外相は14日、国会で「参加の必要性について政府内外で相当な共感がある」と述べたうえで、中国について「最近は反対意見は減った」と話し、中国に配慮しつつ前向きに検討中との姿勢をにじませた。