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巨額の資金をかけすぎて今さら後戻りできない-。4千億ドル(約40兆円)に迫るともいわれる巨額の開発費をかけた米軍史上最大のプロジェクトに対し、米国防関係者の間でささやかれるF35開発への恨み節だ。
開発の遅れは取り戻しようもなく、米軍が窮余の策として導き出した結論は、納期の確約を求める日本にF35Aをいったん納入し、ソフトウエア開発を待って増額分の費用を請求するというものだ。
ただ国防総省の内部資料によると、空自が2017年3月末までに納入するF35Aのソフトウエアは「ブロック3I」で、至近距離での対空戦が不可能だ。
空自が“未完成品”の引き渡しに甘んじなければならないのは、米側が価格や納期を変更しても違反を問うことができない有償軍事援助(FMS)という特殊な契約を採用しているためだ。
焦点の価格もカナダやオーストラリアが調達見送りを決めるなど高騰を続けている。国防総省が4月に発表した2014会計年度(13年10月~14年9月)国防予算案は1機約1億9千万ドル(約190億円)。日本政府は最初の4機について12年度予算で1機当たり102億円で計上しており、価格は2倍近くに高騰した。
価格高騰や性能低下についての懸念は日本政府の機種選定以降も、米国内で強まっていた。だが、日本政府は民主党の野田政権時代の昨年7月、政府答弁書で「防衛省の要求する期限までに同省の要求性能を備えた機体が納入される」と明記した。財務省が機種選定の経緯と契約の実態調査に乗り出している。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)付近上空で急増する中国軍戦闘機への緊急発進(スクランブル)に対応するF15も疲労寿命という限界がある。武器輸出3原則の足かせは外したが、価格高騰と防空網への懸念が現実化し、防衛戦略上の本質的な欠陥が見えにくくなっている。