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韓国の秋美愛(チュ・ミエ)法相が24日、与党や政府高官の不正に鋭く切り込んできた尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長の職務停止を命令したと発表したことを受けて、韓国メディアが一斉に批判を展開している。文在寅政権寄りの報道を行ってきた京郷新聞やハンギョレ新聞も、今回は批判的あるいは慎重な姿勢だ。政権に気を使っているのは、御用メディアの烙印を押されて久しい公共放送のKBSとMBCぐらいだろうか。
識者も猛反発している。特に、文在寅政権の支持者から最も先鋭な批判者に転じた陳重権(チン・ジュングォン)元東洋大学教授は「親文在寅586勢力の全体主義的性向が87年以降に韓国社会が熱心に積み重ねてきた自由民主主義を侵している」として、民主主義の危機を指摘した。
韓国では8月末、文在寅政権や与党との決別を宣言した5人の知識人が出した対談集『一度も経験したことのない国』が4週連続でベストセラー1位となった。その中身は、文在寅政権とその支持グループがいかに腐敗しているかを告発したもので、陳重権氏も著者のひとりである。
同氏は『一度も経験したことのない国』の中で、文在寅政権と与党・共に民主党が尹錫悦総長を憎悪する理由について、次のように指摘している。
〈結局は(文在寅大統領も失政を繰り返すことで)賞味期限が切れました。だからそろそろ取り替える必要が出てきたのですが、それがチョ・グク前法相だったわけです。外見は良いじゃないですか。ファン客体には、誰もがなれるわけではありません。何が必要かと言えば「好感度(Likeability)」です。人々に好かれるような、魅力的なところがなければいけないんです。
日本では美男を「イケメン」と呼ぶんです。まさにチョ・グクが、そのイケメンなんです。そんなチョ・グクを完全に信頼していたのに、尹錫悦が吹き飛ばしてしまったんです。尹錫悦を自分たちで検事総長にしておきながら、検察に猛烈に反発する理由が何かと言えば、自分たちの想像界を破壊した奴だということです。チョ・グクが自分たちの理想的な自我なのに、彼を強制的に他者化してしまったわけです〉
ちなみに、陳重権氏が語る「586勢力」とは、現在50代で、1980年代に主として大学生として民主化運動に参加した、1960年代生まれの世代を指す。20年ほど前には「386世代」として脚光を浴びた。現政権の李仁栄(イ・イニョン)統一相やイム・ジョンソク前大統領秘書室長、そしてチョ・グク氏らが代表選手と言える。陳重権氏もこの世代に属する。
『一度も経験したことのない国』の中では、586世代の腐敗の構図も詳しく語られている。普段、日本メディアの報道では言及されることのない、韓国の暗部の深い部分だ。
(参考記事:「586世代の私益追及集団が再生産されている」韓国ベストセラーが告発)
今回の尹錫悦検事総長に対する攻撃は、表層的な権力闘争ではない。その本質を韓国国民が直視したとき、同国の政治にまたもや巨大な波乱が起きるかもしれない。
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