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そして、外交にとって最も警戒すべきこととして、各国で「内政の不安定」の連鎖が、これに輪をかけて複雑化させているのだ。
政権不安定は外交における最大の変数だ。
考えてみれば、世界を驚愕(きょうがく)させたトランプ大統領の誕生から、中間選挙を控えたこの時期に、同盟国であろうがなかろうがかまわず制裁をちらつかせて利益を勝ち取ろうとしているのも、内政と切り離して語ることはできない。
現状、トランプ砲の最大のターゲットは中国である。この連載でも詳しく触れてきた。
だが、日本のメディアを通じてみる世界において米中経済戦争は新旧2つのパワーの激突としか映らないのだが、世界に目を転じれば、それは比較的大きな対立でしかない。
例えば、アメリカの発動する(もしくは準備している)制裁の対象も大きく分ければ対メキシコ・カナダ、対ロシア、対イラン、対トルコ、対インド、そして直近のターゲットである日本というように、多種多様の対立であふれている。
アメリカが制裁する理由も、貿易不均衡から安全保障までと幅広く、当然のことながら目的も同じではない。
さらに細かい話をすればトランプ大統領が政権浮揚策として仕掛ける制裁や交渉もあれば、一方で担当の省庁が主導する制裁もある。
対中国でみれば、経済戦争を仕掛けるアメリカにとって大きな追い風となっているZTE(中興通訊)への制裁は、そもそも商務省主導であり、そのルーツはオバマ政権時にさかのぼる。
アメリカの対中交渉窓口も代わった。
中国は現在、この問題の解決に、自らの持てる外交力の多くを傾けている。
さて、こんな状況下で中国は9月に2つの大きな外交日程をこなしてきた。
一つは中国・アフリカ協力フォーラムであり、もう一つがウラジオストクで開催された東方経済フォーラムへの習近平国家主席の出席である。
いずれも日本のメディアで紹介される際、「アメリカとの経済戦争を戦う中国がアメリカを牽制(けんせい)するため」という説明がつけられたのだが、私はこれに強い違和感を覚えるのだ。
そもそもアフリカやロシアとの距離が対米外交の何を解決してくれるというのだろうか。
ロシアとの関係を強化してアメリカが牽制されるのだろうか。
中学生の友達ごっこのレベルならまだしも、そんな単純なゲームがあろうはずがない。それなのに、まるで数学の公式のように中ロが接近すると、「アメリカを牽制」との解説になる。
だが、現実にはロシアと接近するよりもアメリカで大声を上げている政治家を懐柔する方がはるかに早道であることを中国は知っている。
問題は、それが容易ではなくなっているアメリカの内政の変化なのだ