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バイデン米新大統領は、上院議員時代からの腹心や副大統領時代に重用した人物らを政権中枢に据えた。トランプ前政権で閣僚らの更迭や辞任が相次いだのを念頭に、経験と安定感を重視した形だ。互いをよく知る「お友達政権」(米メディア)ゆえに活発な議論が生まれにくかったり、過去の経験則に縛られたりして、中国の急速な台頭などで大きく変化する世界情勢に柔軟に対応できないのではないかとの懸念もある。
バイデン氏が、自身のブレーンとなる大統領首席補佐官にロン・クレイン氏(59)を選んだことが、人事の傾向を物語る。
クレイン氏は、バイデン氏が上院司法委員会に属していた1980年代からの側近。バイデン氏が挑んだ過去の大統領選でもアドバイザーを務め、オバマ前政権では副大統領首席補佐官としてバイデン氏を支えた。同氏はクレイン氏を「私にとって計り知れない価値がある」と絶賛。互いを知り尽くした仲だ。
バイデン氏が特に期待しているとみられるのが、新型コロナウイルス禍への対応と、経済回復に向けた手腕だ。クレイン氏は2008年のリーマン・ショック後の経済政策の取りまとめに大きな役割を果たしたとされるほか、14年にはエボラ出血熱の感染防止対策を取り仕切った経験がある。
外交・安全保障分野でも、気心の知れた人物らが要職を占める。
国務長官に指名されたアントニー・ブリンケン氏(58)は00年代、上院外交委員長だったバイデン氏を補佐。オバマ政権1期目で、バイデン氏の副大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めた。同政権2期目でその後任となったジェイク・サリバン氏(44)は、新政権の大統領補佐官(同)に任じられた。
米公共ラジオ(NPR)は、ブリンケン氏らの起用は「他国との強固な関係を好む伝統的な外交政策への回帰」だと評論。首脳同士のディール(取引)などを好んだトランプ政権に多かれ少なかれ振り回された国際社会には、一定の安心感を与えそうだ。
一方でこれらの人々は、バイデン氏に引き立てられてきた「子飼い」といえる。米紙ニューヨーク・タイムズは、バイデン氏に異論をぶつけにくくなるリスクもある、と指摘する。
女性や黒人、アジア系などのマイノリティー(少数派)を多く起用し、多様性を打ち出したのも新政権の特徴だ。黒人で初めて国防長官に指名されたロイド・オースティン元中央軍司令官(67)は、イラク派遣部隊を率いた際に部下だったバイデン氏の長男ボー氏(15年に死去)と親交が深かったといい、ここにもバイデン政権の“身内意識”の強さが表れているとみる向きもある。(大内清