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時代を見通す日本の基礎情報

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対中包囲網”への参加で菅首相に問われる「憲法是正」の覚悟

中国共産党政権による軍事的覇権拡大を、自由主義国家である日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国が、インド太平洋地域で包囲する構図は整った。次は、米国や英国などの西側情報機関による「対中包囲網」への参加をめぐり、日本は重大局面を迎えている。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、菅義偉政権は「民主主義の最大の敵」である中国への対決姿勢を鮮明にしたうえで、憲法改正などの取り組みを進める覚悟が問われていると指摘する。政財官界に広がる「親中派」の跋扈(ばっこ)を阻止できるのか。

 米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの5カ国の情報機関による多国間協定「ファイブ・アイズ」については、安倍晋三前首相時代、トニー・ブレア元英首相から「6番目の参加国」として日本はラブコールを受けていた。

 菅内閣が発足した9月16日、ボリス・ジョンソン首相は、日本がファイブ・アイズに参加する可能性について語り、そうなれば歓迎すると述べた。

 2021年の発効を目指した日英FTA(自由貿易協定)締結でも大筋合意しており、1902年の「日英同盟」以来の蜜月関係といえるかもしれないが、浮かれている場合ではない。

 ジョンソン首相の「お誘い」は、日本に「覚悟を決めてくれ」というメッセージでもあるのだ。

ファイブ・アイズは5カ国によるUKUSA(ユークーサ)協定に基づく機密情報共有の枠組み」であるから、6番目の参加国になるためには、「国内において情報機密を守る体制」の構築が必要不可欠だ。「スパイ天国」といわれる状況を打破するためのスパイ防止法の制定と、米CIA(中央情報局)や、英MI6(秘密情報部)のような本格的国際諜報機関の設立は急務である。

 ファイブ・アイズは当然ながら、軍事行動を前提とした秘密の共有だ。したがって、「憲法第9条があるから」という逃げ口上は認められない。裏を返せば「ファイブ・アイズに招待するけれど、もちろんその前に、憲法第9条は『是正』してくれるよね」というのが、ジョンソン首相から菅政権に対する厳しいメッセージなのだ。

 ファイブ・アイズは米国中心の枠組みだから、英国が米国の意向を無視して日本を誘うことなど考えられない。

 目下、「民主主義最大の敵」である共産主義中国との戦いに集中している米国にとっても、日本はアジアの安全保障における最重要同盟国である。逆に言えば、日本しか頼れない。GSOMIA(軍事情報包括保護協定)を政治的駆け引きの道具にする韓国など、まったく信頼していない。

 マーク・エスパー米国防長官は、同盟国に国内総生産(GDP)比2%の防衛費を要求しているが、これは日本とドイツを意識した発言である。

ドナルド・トランプ米大統領は、ドイツのアンゲラ・メルケル政権が防衛費を増額しない限り、ドイツに駐留する米軍の規模を2万5000人に縮小する計画だと表明している。つまり、GDP比2%まで防衛費を増強しない限り、「反民主主義との戦い」においてドイツはファイブ・アイズの仲間ではないということだ

 日本の防衛費も現在はGDP比0・93%(=NATO基準では最大1・3%とされる)であり、事態は切迫している

 第二次世界大戦前、米国、英国、中国、オランダによる対日経済封鎖は「ABCD包囲網」と呼ばれたが、現在、ファイブ・アイズ加盟国がもくろんでいるのは対中「ABCJ包囲網」だ。

 A(米国)B(英国)C(米英を除くファイブ・アイズ参加国の代表としてのカナダ)、そして、J(日本)が中国を包囲する狙い

 もちろん、日本が「ABCJ」の一翼を担うためには「憲法是正」が必要だ。菅首相が、安倍政権の官房長官として辣腕(らつわん)を振るってきた実績を考えれば、上手に対処するかもしれない。

 何より、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により「国民の命を守る」ことが強く意識されている。医療関係者だけでなく、消防士も警察官も自衛官も、自らの身を危険にさらしながら国民の命を守っているのだ。

 就任早々、韓国と中国に毅然(きぜん)とした態度を見せた菅首相ならば「憲法是正」をやり抜くのではないだろうか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 

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