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同じ土俵で競争
「曲がりなりにも選考時期などで同じスタートラインに立てるから、他の学生と同じ土俵で戦える。それが一切無くなれば早い者勝ちになる」。食品業界を希望している日大経済学部2年の男子学生(19)は、就活ルールが廃止された場合の不安を隠さない。
別の大学2年の女子学生(19)は就活ルールの廃止に伴う活動期間の長期化を懸念。「学生生活に余裕がなくなり、勉強や課外活動などやりたいことが十分にできなくなるのではないか」と漏らした。
これから就活に臨む明治大政治経済学部3年の男子学生(20)は「就職活動が早まると、企業研究や自己分析などに十分な時間を割けず、入社してからギャップを感じるリスクが高くなるとも感じる」と不安を吐露。「就活を始める時期が早いか遅いかは個人の自由だと思うが、いずれにしても、やりたいことができるかなど、時間をかけて考えた上で就職活動に臨むことが必要だ」と話した。
就活早期化はプラス
一方、ルール廃止を歓迎する声も少なくない。都内の私大2年の女子学生(19)は「早めに動き出せるようになるのは別にかまわない。ルールを守ったために実質的に後れを取って不利になれば、それこそ不公平だ」とし、ルール違反が横行する現状では廃止しても問題ないとの見方を示した。
就活経験者からも肯定的にとらえる声が聞かれた。明治大法学部4年の男子学生(22)は「3月以前に会社説明会や面接が行われているルール違反の現状では、ルールが撤廃されるデメリットよりもメリットの方が大きいと思う」と指摘。その上で「早い段階で内定がもらえるのは安心できるし、1、2年生からインターンシップなどを通じて就職について考える経験は学生にとってプラスになる」と、ルール廃止によるメリットを強調した。
ただ、不安な点として内定時期が2年時などに早まった場合、企業から誓約書の署名を求められることを挙げ、「内定欲しさに署名をしてしまうと、やりたいことが変わっても署名に縛られ会社を変えることができない」と注意を求めた。
学生の負担軽減を
学生を教育する大学側は学業がおろそかになるとの懸念から、採用選考の早期化に慎重な立場だ。日本私立大学団体連合会は今年6月、33年春入社の学生について、現行と同じ6月解禁での採用選考とすることを求めた。
法政大キャリアセンターの内田貴之課長は就活ルールの今後について、どうなるか分からないとした上で「廃止されれば就活がより早まることが想像され、入学と同時に就職を意識しなければならなくなる懸念がある。決まればそれに従うしかないので、学生の不安や要望にきめ細かく対応できる準備をしていきたい」と話した。
文部科学省も経団連会長による就活ルール廃止発言に驚きを隠せない。同省幹部は「大学と企業の話し合いの中でスケジュールなどが決まり、選考開始時期も定着しつつあったのに…」と声を落とす。文科省を含む関係省庁は今後、大学や企業と協議し、学生の混乱を避ける方向で議論する予定だ。
曽和(そわ)利光・人材研究所社長は「採用活動の早い外資系やメガベンチャーを含めると就活が1年ぐらい続き、学業を阻害する要因の一つとなっていた。多少の混乱はあってもプラスの方が大きい。学生の負担を減らすためには、日程よりも応募書類を課す行為の見直し、インターネットを通じた説明会や面接の実施などの手法について議論すべきだ」と話している。
昭和28年に大学や産業界などの申し合わせによる「就職協定」として始まったとされる就活のルール化。選考解禁時期など日本的採用慣行の歴史は大きな転換期を迎えている。