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香港の大規模デモが収まらない。香港政府のトップ、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は4日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の正式撤回を表明したが、あまりにも遅すぎる対応に、民主派団体は五大要求を掲げて「闘争を続ける」と表明している。
五大要求とは、
「改正案撤回」に加えて、
「普通選挙実施」
「逮捕されたデモ参加者の釈放」
「警察の『暴力』に関する独立調査委員会の設置」
「デモを『暴動』とした定義の撤回」だ。
習近平国家主席率いる中国にとって最悪の結果は、香港でのデモ隊制圧が、世界から人権侵害と批判されるチベットやウイグルでの「弾圧」のようになることだ。「第2の天安門事件」が現実となれば、香港だけでなく、台湾でも、独立への機運が高まるだろう。
香港警察の武力制圧は、まさに「中国の焦り」そのものといえる。
かつて「雨傘運動」をリードした学生団体の元幹部、周庭(アグネス・チョウ)氏が先日、
《この3ヶ月間、8人が自殺》
《3人が警察の暴力によって失明》
《2人がナイフを持つ親北京派に攻撃され、重傷》
《1000人以上逮捕》
とツイッターに記していたが、とても看過できない。
ロイター通信は、林鄭氏が8月下旬に財界人の非公開会合で「辞任」を示唆した音声を報じた。林鄭氏の辞任では譲歩にはならない。もはや、すべてでなくとも五大要求を認めるしか、中国に選択肢は残されていない
ただ、共産独裁国家が民主化を認めるとは思えない。南シナ海を「自国の海」だと強弁して軍事基地化し続けるような国が何を言っても、信じる者は誰もいない。
数万人の香港市民が8日、米議会に対し、香港の自治を守る「香港人権・民主主義法案」の早期可決を求めて、米総領事館付近をデモ行進したという。中国に厳しく対峙(たいじ)してきたドナルド・トランプ政権にも期待しているのだろう。
トランプ大統領は現時点でトーンを抑えているが、米国のテレビ局は連日、香港のニュースを大きく報じている。「第2の天安門事件」を許してはならないという危機感があるのは当然だ。
本来、中国ほどの独裁国家なら、香港の混乱を収束させることは難しくない。ただ、米国との貿易戦争に加えて、世界から武力弾圧には厳しい目が向けられている。習氏は国内では「強い指導力」をアピールしなければならず、追い込まれている状態といえる。
米国だけでなく、日本も民主主義国家として、ぜひ明確な姿勢を示してほしい。「万が一、第2の天安門事件が起きれば、(来春とされる)習氏の国賓招待は難しい」ぐらいのメッセージを送ってはどうか。習氏が“裸の王様”になる日は、もう目の前だろう。