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韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が8月22日、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を決定したことは、米国を激怒させた。米国は対中国戦略上、GSOMIAを不可欠な軍事情報上のネットワークとしてカウントしている。米国は中国と新冷戦を戦っており、最前線基地は韓国と日本と考えている。
しかも、韓国は事前通告なしに決定した。
マイク・ポンペオ国務長官は同日、韓国のGSOMIA破棄決定に「懸念と失望」を表明した。ランドール・シュライバー国防次官補も「再考を望む」「今回のGSOMIA破棄決定は、米国の安全保障の利益にも悪影響を及ぼす」と繰り返し、文政権に伝えた。
だが、韓国外務省の趙世暎(チョ・セヨン)第1次官は同月28日、ハリー・ハリス駐韓米国大使を同省に呼び付けて、「米国の失望表明は、両国関係強化に役立たない」と高圧的に叱り付けた。
これは極めて異例だ。粘り強く説得をする米国にタンカを切ったのである。米国を裏切った韓国。その結果、文政権は窮地に立たされている。
今後、米国がとる対応は2つ。「文政権の崩壊」か、「在韓米軍の撤退」である。
前者はすでに、文氏が9日に任命したチョ・グク法相と、尹錫悦(ユン・ソクヨル)検事総長率いる検察との全面対立となって現れている。文、チョ両氏は「検察つぶし」を狙い、自らの延命を図る。尹氏は、チョ氏の不正疑惑を暴き、文氏の息の根をとめようとしている。
在韓米軍の撤退は、文氏の望むところだろう。日本の朝鮮半島統治からの解放記念日「光復節」(8月15日)の式典で、文氏は「2045年には南北統一を目指す」と宣言し、在韓米軍撤退を促した。米軍が韓国にいる限り、南北統一は成りたたない。文氏は、日本をたたく(=GSOMIA破棄決定)ことで、統一を果たそうとしたのだ。
しかし、米国は文氏に「三くだり半」を突き付けた。
在韓米軍の撤退は、米国が韓国を北朝鮮と同じ「脅威」と認識し、韓国も米軍の抑止(攻撃)対象となる。北朝鮮主導の朝鮮半島統一が画策されれば、米国は躊躇(ちゅうちょ)なく北朝鮮を先制攻撃することになる。
1990年代の第1次北朝鮮核危機当時、クリントン政権は北朝鮮への先制攻撃を、韓国の人命被害を憂慮してあきらめた。だが、韓国が同盟国でなくなれば、考慮に入れる必要はなくなる。
米国は現在、地球規模の米軍再編(GPR)に着手しており、在韓米軍はすでにないとも言われる。その場合、日本の防衛ラインは長崎県・対馬まで下がる。朝鮮半島有事の軍事作戦計画(OPLAN)も全面修正となる。今後、日本と韓国の偶発的衝突が起きないともかぎらない。
これらを見据えて、安倍晋三首相は「河野太郎防衛相、茂木敏充外相」という布陣を敷いたのか。