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「道路脇で寝る」「3万5千人が公園で寝る」
京郷新聞(電子版)によると、韓国東部の江原道江陵(カンヌン)市では、標高約800メートルにあり、市街より気温が低い「大関嶺」周辺の道路端のアスファルトの上に寝具を広げて眠るという人が続出しているという。
「涼」は求められるかもしれないが、近くを乗用車が走る中で寝るのは、実にスリリングだ。ひやっと涼しくはなるだろうが、むしろ怖さで眠れないのではないのかと心配したくなる。いずれにしろ、京郷新聞も「珍しい風景」と報じるほどだ。
一方、南部の大邱(テグ)の豆類公園には夕方から夜明けまでの間、約3万5千人が居座り続けているという。人気歌手のコンサートが開催されたり、壮観な花火大会があるわけではない。ブルーシートを敷いたり、テントを張ったりと思い思いのスタイルで、夕涼みならぬ「夜涼み」にふけるのだ
こうした公園の夜涼みは全国各地でみられるとされ、道路脇に寝る人たちも含め、韓国ではこの夏、珍現象が各地で起きている。
暑くても、涼めない若者たち
日本の内閣府のデータによると、2015年の一般世帯のエアコン普及率は91%。一方の韓国は2013年で78%にとどまる。
クーラーがない人に加え、あっても電気代を払えない人たちが少なくなく、このため「猛暑避難所」という施設が、ソウルだけでも3千カ所も設けられている。ただし、避難所の運営は日中だけ。熱帯夜となっても利用ができない。
しかもソウルや大邱などの都市部では、狭いワンルームのアパートに住むサラリーマンや学生らが多い。こういった若者らはクーラーを持てないか、電気代が払えないため夜に“行き場”がなくなり、韓国の夜に珍風景を生み出しているのだ。
予告なしに送電を止める国
もっとも、電力供給は不足しているのかと思いきや、そうではないという。中央日報(電子版)などは、8月5日の韓国内の電力供給予備率が36%に達したと報じた。つまり電気は余りまくっている
韓国では、長年にわたり電力不足が懸案だった。11年9月15日には午後3時から約5時間、全国で地域ごとに突然送電を止める「循環停電」が予告なしに行われ、約200万世帯が停電。銀行などが大混乱に陥った。12年7月には予備率が6%にまで低下し、工場の操業を政府が停止させたこともある。
度重なる停電危機を解決しようと、政府主導で液化天然ガス(LNG)の火力発電所を次々建設した。つまり、供給量は増やしたのだが、肝心の韓国経済が失速。国民の経済格差は広がる一方で、とくに貧困にあえぐ人が増えた。これが電気が余っているのに、熱帯夜をしのぐため屋外へ向かうという珍現象の背景にあるとみられる。
電力をめぐる事情には、韓国社会の抱える問題が透けてみえる。