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「あれは宗教施設ですよ。毎日、信者さんらが施設のなかで忙しそうに働いてます」
この老人だけではなく、ほかの島民に話を聞いても、あまり多くを語ろうとしない。何かをおそれているのだろうか?
この島にその某宗教信者が移り住むようになったのは、50年以上前のこと。それ以来、次々とやってくる信者が島民を勧誘し入信させてきた。そのため、今では島民の多くがその宗教信者となり、それ以外の人々は数十人に満たない。さきほどの老人も信者ではないと言っていた。
そして、老人が「その宗教について知りたいのなら......」ということで、民宿を経営する男性を紹介してくれた。もともとは、島民だったが、T教の勧誘に嫌気がさし、現在は島の外に住まいを移しているという。
「近所の家はみんな引っ越しましたよ。みんな宗教の勧誘が嫌で島を出たんです。私は民宿があるんで、最後まで残ったんですが......。週末になると、勧誘が激しくなるんで、とうとう島を出ました」
男性の話によると、週末になるとこの島には数多くの信者がやってくるという。そして、数百人もの信者がお経を唱えながら不思議な式典をはじめるらしい。民宿の男性は、こう証言する。
「夜中まで式典をやるんです。お経を唱えたり、楽器を鳴らしたり。正直、不眠症になりますよ。それで式典が終わると、信者たちが島を練り歩くんです。ブツブツとお経を言いながら。しかも、入信していない家の前をわざわざ通るように歩くんですよね。それが、気味悪くて......」
週末のこの日。港には、巨大なフェリーと共に次々と信者がやってくる。そして、宗教の名前と書かれた観光バスに乗り込んで宗教施設へと向かっていく。その動員力といい、数百人を越える信者の数といい、島民たちが恐怖を覚えるのも無理はないだろう。
しかし、夜になっても民宿の男性が言うような式典は行われなかった。また、信者たちがお経を唱えながら練り歩くこともなかった。それについて、民宿の男性はこう教えてくれた。
「毎回そうなんですよ。一般の旅行者がくると、式典はやらないんですよ。まぁ、イメージが良くないからでしょうね。アナタが帰れば、また始まります」
この宗教名はあえて出さなかったが、名前を聞いたら誰でも知っているレベルで有名だ、とだけ言っておこう。
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