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韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が苦悩している。中国が9月に北京で開催する「抗日戦争勝利70周年記念行事」への出席を招請されているが、出欠の決断を先延ばしにしているのだ。背景には、日韓、米韓関係への影響に加え、国家の正統性に関する悩みも指摘される。中国は50カ国余りの首脳らに出席を呼び掛けているが、何と大半の国が態度を保留しているという。欠席が相次げば、習近平国家主席のプライドを傷付けることになりそうだ。
「(今年は)抗日戦争勝利から70年だ」「人々が歴史に学び、未来への鏡とする大事なときだ」
習主席は3月末、海南省で開かれた「ボアオ・アジアフォーラム」年次総会での基調演説で、日本をこう牽制した。
中国は9月3日、政府主催で記念大会と軍事パレードを行う。東シナ海で海洋プラットホームを増設させ、南シナ海の岩礁を埋め立てて軍事基地化するなど、軍事拡張路線に国際社会の批判が集まるなか、自国は「戦勝国」として振る舞う一方、日本の戦争責任を強調することで目先をそらす狙いもありそうだ。
王毅外相は「あらゆる関係国の指導者を招待する」としており、外交筋によると、日本や韓国、北朝鮮、欧米諸国に加え、侵略や植民地支配を受けた経験を持つ東南アジア各国の指導者らを招待しているという。中央アジアや中南米の各国にも参加を求めている。
ロシアのプーチン大統領など、数カ国の首脳が出席に前向きな返事をしているが、実は、ほとんどの国が態度を明らかにしていないという。
正式招待を受けた東南アジアの外交筋は「安倍晋三首相が戦後70年談話を発表した後に、日中関係がどうなるかを見極めてから出席するかどうかを決める」と語った。
安倍首相としては、「軍事パレードや式典に出席することには否定的」(官邸筋)といい、9月初旬の中国訪問と、習氏との首脳会談の実現に向けた調整を本格化させているようだ。
事前調整のためか、国家安全保障会議(NSC)の谷内正太郎国家安全保障局長は17日、北京で中国の李克強首相と会談し、両国関係を発展させるために首脳レベルの対話が重要との認識で一致した。
こうしたなか、対応が悩ましいのが、韓国の朴氏だ。
韓国・中央日報(日本語版)は6月24日、中国専門記者の「朴大統領、中国の招請にどう答えるのか」というコラムで、慎重論として、(1)日本を過度に刺激する(2)中国の軍事力誇示に付き合う格好になる(3)明確に中国側に立つことになる-と列挙した。
オバマ米政権が、中国が東、南シナ海で軍事的覇権を強めていることに警戒を強め、対決も辞さない構えに変わりつつあることも影響しているとみられる。
一方、肯定論としては、(1)韓国も抗日戦争に動いた歴史がある(2)北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が出席する可能性があり、南北関係改善の突破口になるかもしれない-と指摘した。
その後も朴氏が決断しないためか朝鮮日報は今月14日、「中国の『戦勝記念日外交』と韓・中・日関係」という記事で、一連の記念行事が「北東アジア外交の分水嶺(ぶんすいれい)になる可能性が高い」とし、朴氏が出席すべきだと促す記事を掲載した。
中国は目玉の軍事パレードに、韓国軍と朝鮮人民解放軍を同時招請している。これが、朴氏の悩みを深めている可能性もある。
アジア情勢に詳しい元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「かなり悩ましいはずだ。米国の要請もあり、朴氏は6月の日韓国交正常化50年の記念行事に出席し、関係改善に舵を切った。出席すれば日本や米国を刺激しかねない。加えて、北朝鮮の金第1書記も出席するようなら、南北の争いが勃発しかねない」といい、続けた。
「韓国は、1940年に中国・重慶で創立された光復軍が抗日戦争を戦ったと主張しているが、北朝鮮はこれを認めていない。北朝鮮は、金日成(キム・イルソン)主席が率いた朝鮮人民革命軍が抗日戦争を戦ったとしている。朴氏と金氏が『抗日戦争勝利70周年』の記念行事やパレードに出席した場合、『どちらの軍が抗日戦争を戦い、朝鮮半島の国家としての正統性を持つのか』という問題が浮上する。これは単純な問題ではない」
ロシアが今年5月、対独戦勝70周年記念式典をモスクワで開いたとき、朴氏はウクライナ危機で欠席した欧米諸国にならって出席を見送った。
韓国経済が苦境にある現在、日米両国の動向を見据えながら、貿易総額1位である中国の要請を、朴氏はどう判断するのか?
中国のニュースサイト「中華網」は21日、「中国に武器を注文して購入したとたんに、裏切った5つの国家」と題する文章を掲載した。(イメージ写真提供:123RF)(サーチナ)