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「歴史と向き合わない国に未来はない」──。朴槿恵・韓国大統領が慰安婦問題を巡る日本批判で繰り返し使ってきたフレーズだが、本当に歴史と向き合っていないのが誰か、明らかになりつつある。
6月末に韓国人女性122人が、1953年の朝鮮戦争休戦後に在韓米軍基地周辺の「基地村」と呼ばれる地域でアメリカ軍兵士を相手に売春を強いられたとして、韓国政府を相手に国家賠償訴訟を起こした。
この「米軍慰安婦」については、韓国政府が売春公認地域を指定して性病検査をし、感染者を強制的に収容する管理所まで設けたというのだから、れっきとした国家管理売春だ。外交評論家・加瀬英明氏が語る。
「日韓国交樹立の前年である1964年にソウルに行った時には、新聞に米軍基地周辺での慰安婦募集の広告が堂々と出ていました。本人たちの意に沿わないかたちで米軍慰安婦にさせられた女性が数多くいるとされます」
もちろん、旧日本軍の行ないが元慰安婦たちの「証言」だけで断罪されるべきではないのと同様に、今回訴えを起こした米軍慰安婦の主張がどこまで正しいかは史料をもとに精査されるべきだが、この訴訟は放っておくと支持率が急降下中の朴大統領をさらに悩ませることになる。
「訴訟を支援するグループ内には、韓国政府が訴訟にまともに向き合わない場合、アメリカ政府を相手に補償を求めようとする動きがあります。米韓政府間での責任の押し付け合いに発展しかねない」(在韓国ジャーナリスト・藤原修平氏)
オバマ米大統領は4月に訪韓した際、朴大統領の日本批判に調子を合わせて慰安婦問題について「甚だしい人権侵害」と非難してみせたが、自国が同じことをしていたとなれば赤っ恥だ。
「そもそも米軍慰安婦制度が生まれた背景には、朝鮮戦争期間中の米軍兵士による性犯罪の急増があり、そうした犯罪から韓国女性を守るために、基地村が整備された」(加瀬氏)ということだから、アメリカ政府に責任が及ぶのは自業自得である(ちなみに敗戦直後の日本でもアメリカをはじめとする連合国軍は慰安所の開設を要求した)。
日本は日韓請求権協定で戦時賠償の責任を果たしているが、米韓は自分たちが運営に携わった「慰安婦」について完全に頬被りしたまま現在に至った。日本叩きでタッグを組んできた朴氏とオバマ氏がこれからどのように責任を取るのか、あるいは仲間割れを始めるのか、見物である。
【日本の安保政策転換、韓国にとって必要な理由】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、日本の安全保障政策の転換がなぜ韓国にとって必要か、と題し、下記のような内容のコラムを配信している。
日本は、韓国と北東アジア地域防衛の要となる。韓国国内の航空基地や港湾は限られており、特に有事の際は北朝鮮からの攻撃を受けることも考慮される。
北朝鮮の韓国への侵攻を防ぐため、日本の航空基地や港湾を利用することで、大規模な軍隊や装備を早急に配備することが可能となる。日本の防衛が直接の目的ではないので、今までの憲法解釈では認可されない内容であったが、今回の集団的自衛権容認によって、アメリカが韓国防衛の拠点として日本の航空基地を利用できることになる。
歴史に配慮して、日本の自衛隊が韓国に配備されることはないだろう。ただし海上自衛隊が、大量破壊兵器や密輸武器を運ぶ北朝鮮の船舶を停止し、武器の破壊など、米軍を助ける行動をとる可能性は出てくる。北朝鮮船舶に対する韓国とアメリカの船舶での監視は充分ではなく、日本の海上自衛隊は多くの船舶を所有していること、また北朝鮮近くに配備していることから、有事の際にはすぐに行動を起こすことができる。
同紙は、集団自衛権容認によって、日本は韓国及びその他周辺地域の防衛責任を負い、周辺諸国の経済、独立に対し然るべき行動をとることとなる、と論じている。
【対日批判を軸に強まる中韓関係】
一方、韓国は、戦後日本の平和主義からの転換となる集団的自衛権行使、海外派兵容認の決定について反発を強めている。中国の習近平国家主席と朴槿恵(パク・クネ)大統領は会談後、「高強度の警告メッセージ」(中央日報)を送った。
習主席は韓国との歴史的関係を強調し、安保、経済、教育、文化交流などの面において協力し合うことで同意した、と韓国日報は報じている。中国は、日中戦争終結70周年にあたる来年に、追悼式典を共同で開催することを提案した。これについて朴大統領は返答を避けたという。
【「永遠の友も敵もなく、利益だけが永遠」】
各メディアとも、集団自衛権行使容認によって日米同盟は強化されると予測する。対して中国は対日路線で韓国を影響下に置き、日米韓同盟に揺さぶりをかける狙いだ、とブルームバーグは見ている。
各国が自国の利益のために奔走する中で、韓国は明確な方向性を欠いている、と韓国日報は指摘する。対北朝鮮の状況がある限り、米韓関係には影響ないという一方で、中国の対日姿勢はすでに日米韓の対中国同盟に影響を与え始めているという見解を示した。
中央日報は社説で、日米対中国の対立軸が明確になる中、中韓関係と日朝関係改善の動きが同時に進み、各国とも自国の利益のために行動する、「永遠の友も敵もなく、利益だけが永遠」という状況を迎えている、と論じた。