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時代を見通す日本の基礎情報

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トランプに負けた最大の理由敗軍の将ヒラリーが冷静に語る

ヒラリー・クリントンが2016年のアメリカ大統領選を振り返った回想録だ。ヒラリーは民主党の大統領候補として選挙戦をたたかい、共和党候補だったドナルド・トランプにまさかの敗北を喫した。実際、ヒラリー本人も選挙戦の最後の最後まで自分が勝つと信じていたという。


 敗軍の将が今さら何を書くのか。そう反発する人も多いだろう。しかし、本書は発売と同時に大きな話題となり、ニューヨーク・タイムズ紙の週間ベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)に10月1日付で初登場してトップの座を獲得した。その翌週もトップとなって売れ続け、9週連続でランクインした11月26日付ランキングでも12位だった

蒸し返された私用メール問題


『What Happened』(Hillary Rodham Clinton,Simon & Schuster)

 読む前から予想はしていたものの、驚くべき新事実が書かれているわけではない。のぞき見趣味的な好奇心を満足する本ではない。残念ながら、トランプ大統領に関する悪口もあまり出てこない。トランプ大統領に関する痛烈なコメントは次の例が目立つくらいだ。
Donald Trump spending about 20 percent of his new presidency at his own luxury golf clubs. I sometimes wonder: If you add together his time spent on golf, Twitter, and cable news, what’s left?
いたって真面目かつ冷静に、データを交えながら大統領選で負けた理由を分析している。意外に言い訳がましくなく説得ある語り口だ。トランプ大統領の暴走ぶりを日々みている今だからこそ、なるほどと思わされる。大統領選で負けた最大の理由はやはり、投票日が間近に迫るなかで、当時のコーミーFBI長官がヒラリーの電子メール問題を蒸し返したことだと、本書は強く主張する。
First, and most importantly, there was the unprecedented intervention by then FBI Director Jim Comey. His October 28 letter about the investigation into my emails led to a week of wall-to-wall negative coverage. A look at five of the nation’s top newspapers found that together they published 100 stories mentioning the email controversy in the days after Comey’s letter, nearly half of them on the front page. In six out of seven mornings from October 29 to November 4, it was the lead story in the nation’s news cycle. Trump understood that Comey’s apparent imprimatur gave his “Crooked Hillary” attacks new credibility, and Republicans dumped at least $17 million in Comey-related ads into the battleground states. It worked


「第一に、そして最も重要なのは、当時のFBI長官のジム・コーミーによる前代未聞の横槍が入った。わたしの電子メールが捜査対象になっているとの10月28日のコーミー長官の書簡のせいで、その後の1週間はわたしについてネガティブな報道ばかりとなった。アメリカの主要な新聞トップ5紙でみると、コーミー書簡が出た後の数日間に、メール問題について計100の記事が掲載され、そのうちほぼ半数は1面に出た。10月29日から11月4日の毎朝のニュースでは、7日間のうち6日は電子メールの件が全米トップニュースだった。コーミーによる歴然としたお墨付きを得て”いかさまヒラリー”という攻撃が一段と真実味を持つことをトランプは理解していたし、共和党は1700万ドルの資金をコーミーを絡めた広告に投じて激戦州で放映した。それがうまくいった」


 ヒラリーが国務長官時代に私用メールを使っていた問題だ。国家機密が漏れたのではないかなど大統領選の序盤で騒がれ、いったんFBIは問題なしとして16年夏に捜査を打ち切っていた。それを、投票日の11月8日が迫るなかで、わざわざコーミー長官は議会に対し新たな調査をしていると書簡を送り、メディアにもリークされた一件だ。その後、コーミー長官は11月6日に、新たな調査の結果でも問題なしと議会に伝えている。ヒラリーからすると、この選挙戦の最終盤で電子メール問題を蒸し返されたのは大打撃だった。FBI長官が選挙戦に影響を与えたと批判している。

主要メディアへの苦言も

 ヒラリーは本書の別の章では、歴代の国務長官や他の政府高官も私用メールをつかっていたとも弁明している。そもそも私用メールでは機密事項には触れていなかったと話す。自分の落ち度は認めながらも、自分だけが責められることに不満を隠さない。反対陣営が意図的にリークする情報を頼りに、誤った認識で報道を繰り返す主要メディアへの苦言も呈している。今にして思うと、ヒラリーに一理あると思わされた。大統領選を巡る主要メディアによる報道そのものに偏りがあると、次のようにクギをさしている。


 In 2008, the major networks’ nightly newscasts spent a total of 220 minutes on policy. In 2012, it was 114 minutes. In 2016, it was just 32 minutes. (That stat is from two weeks before the election, but it didn’t change much in the final stretch.) By contrast, 100 minutes were spent covering my emails. In other words, the political press was telling voters that my emails were three times more important than all the other issues combined.


 「2008年には、主なテレビネットワークの夜のニュース番組は計220分を政策に関する報道にあてた。2012年には114分だった。2016年にはわずか32分だった。(この数値は投票日の2週間前のものだが、最後までいっても大きくは変わらなかった)対照的に、100分がわたしのメールのことにあてられた。別の言い方をすれば、政治を報じるメディアは有権者に対し、わたしのメールは他の問題をすべて合わせたものより3倍も重要だと伝えたわけだ」


 右翼の大富豪が巨額の私財をつかって、ヒラリーを攻撃する情報を流して主要メディアも巻き込み世論操作している実態にも触れる。この点は、前回の本コラム「トランプの元側近・バノンの恐るべき正体」と同じ指摘だ。そこにさらに、ロシアがハッキングで得た情報をリークしたり、デマ情報を流したりした。有力新聞のジャーナリストたちでさえ、なにが真実かを検証する努力を怠り誤った報道をしたという。つまり、まじめな政策論議が大統領を選ぶ判断材料とならなかったというわけだ。

女性であるがゆえに……

 ヒラリーは自分が女性であるがゆえ嫌われているとも主張する。根本に女性蔑視という性差別が、政治の世界だけに限らずアメリカ社会にはあるとみる。友人でもあるフェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグの言葉を引用しながら、自分が嫌われる理由を説明する。これはヒラリーの本音だろう。


 She told me that if there was one thing she wanted everyone to know from her book Lean In: Women, Work, and the Will to Lead, it’s this: the data show that for men, likability and professional success are correlated. The more successful a man is, the more people like him. With women, it’s the exact opposite. The more professionally successful we are, the less people like us.


 「シェリル・サンドバーグは私に言ったことがある。彼女の著作『リーン・イン 女性、仕事、リーダーへの意欲』の中でひとつだけ、みんなに知ってもらいたいことがあるとしたらこれだと。データによれば、男性であれば、好感度と仕事での成功は比例する。男性は成功すればするほど、もっと人に好かれる。女性の場合、全く逆になる。女性は仕事で成功すればするほど、好きになってくれる人が減る」


 本書の別の個所では次のように心情を吐露する。


 Moreover, I have come to terms with the fact that a lot of people—millions and millions of people— decided they just didn’t like me. Imagine what that feels like. It hurts. And it’s a hard thing to accept. But there’s no getting around it.


 「さらに、多くの人、何百万人という人々が、とにかくわたしのことを嫌っているという現実を認めざるを得ない。どんな気持ちか想像してほしい。胸が痛む。受け入れるのが難しいことだ。しかし、避けては通れないことなのだ」


 女性差別だけではない。大統領選の投票所での出口調査のデータを分析し、トランプに投票した有権者たちが最も気にしていたのは、人種やテロリズムの問題であり、根本には人種差別の意識があるとヒラリーはみる。アメリカ国民にかつてはあった博愛や相互扶助の精神、寛容さや愛情といった大切な価値観がアメリカでは失われていると嘆く。トランプに投票した人たちにも対しても次のように手厳しい。


 And while I’m sure a lot of Trump supporters had fair and legitimate reasons for their choice, it is an uncomfortable and unavoidable fact that everyone who voted for Donald Trump—all 62,984,825 of them—made the decision to elect a man who bragged about sexual assault, attacked a federal judge for being Mexican and grieving Gold Star parents who were Muslim, and has a long and welldocumented history of racial discrimination in his businesses. That doesn’t mean every Trump voter approved of those things, but at a minimum they accepted or overlooked them.


 「多くのトランプ支持者たちはちゃんと筋の通った考えのもと投票したのだと思う一方で、62,984,825 人もの有権者がドナルド・トランプを選ぶ決断をしたというのは、不都合だが否定できない事実だ。セクハラを自慢し、メキシコ系だということを理由に連邦判事を批判したり、戦死した息子を悼む両親をイスラム系だという理由でないがしろにしたりする男を選んだわけだ。しかも、手掛けていた事業では長期にわたり人種差別をしていた記録が残っている男をだ。トランプに投票したすべての有権者がこうしたことを是認したわけではないだろうが、すくなくとも大目にみたわけだ」


 選挙で負けた直後は落ち込んだヒラリーも、すぐに気持ちを切り替え母校での講演などを気軽に引き受けるなど充実した生活を送る。本書の終わり近くには、次の世代への期待とともに、前向きなコメントが続く。ヒラリーは強がっているわけでもなく、あくまでも前向きな人なのだろう。最後に、そうしためげない気持ちを記した一節を引用して、本稿を終わりとしたい。


 There were plenty of people hoping that I, too, would just disappear. But here I am. As Bill likes to say, at this point in our lives, we have more yesterdays than tomorrows. There is no way I am going to waste the time I have. I know there is more good to do, more people to help, and a whole lot of unfinished business.



 「わたしのことも、とにかく消えてほしいと思っている人はたくさんいた。でも、わたしはここにいる。夫のビルが好んで言うように、この歳になると、これから迎える明日という日よりも、これまで積み上げてきた昨日という日の方が多い。残された時間を無駄に過ごすわけにはいかない。社会をよくするためにわたしがやるべきことはもっとあるし、もっと多くの人たちを助けなければならないし、やり残したことがたくさんあるのだから」

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