ウガンダ・ビクトリア湖(CNN) アフリカ東部ウガンダとタンザニア、ケニアの3カ国にまたがるビクトリア湖は、淡水湖としては世界第2位、アフリカでは最大の面積(約7万平方キロ)を誇る巨大な湖だ。何百年もの間、貴重な水資源として湖岸に住む数百万人の生活を支えてきた。
ナイル川の源流でもあるビクトリア湖には、80以上の島が浮かび、住民は漁業や湖岸の事業で生計を営む。
だがこの湖は、世界有数の危険な湖でもある。地元当局によれば、ビクトリア湖では毎年、約5000人が命を落としている。原因としては変わりやすい天候や通信インフラの未発達などが挙げられる。
ウガンダの水難救助機関はこの数字を引き合いに、「1平方キロメートル当たりの死者数で換算すると、世界一危険な水面であることはほぼ間違いない」と指摘する。同機関はビクトリア湖の安全対策を強化する目的で2002年に設立され、啓発や安全対策訓練などの活動を行ってきた。
ビクトリア湖に浮かぶブガラ島の漁師、サム・カボンゲさんは言う。「水面からは、水の深さがどれくらいあるのか分からない。もし事故が起きれば、たとえ(泳ぐことが)できたとしても、岸辺から遠い距離にいるときもあるので危険だ」
ライフジャケットを買うゆとりのない漁師も多く、小型で老朽化した船は、突発的な強風にあおられた高波を受ければ簡単に転覆してしまう。「出航した時は穏やかだったのに、沖に出たとたんに天気が荒れる時がある。船は波の力に耐えられるほど強くないから、破損したり、転覆することもある」とカボンゲさん。
ウガンダの気象学者、ハリド・ムウェンベさんは、赤道直下にあるビクトリア湖は水温が高いために嵐が発生しやすいと語る。
「大量の雲が生じて、雷を伴う強い嵐といったビクトリア湖独特の天候を引き起こす」とムウェンベさんは言う。「危険な嵐になることもある」
ムウェンベさんらは携帯電話のメールを使った警報システムを試験運用中。漁業関係者に天気予報を配信して危険な状況から身を守ってもらうおうという狙いだ。
試験期間中の利用は無料で、天気予報に加え、危険が予想される悪天候についての警報、被害を防ぐための対策といった情報を携帯電話に送信する。漁師はこの情報を参考に、安全な航行の計画を立てられるとムウェンベさんは話す。
「これまでずっと、湖を航行する船の安全対策に役立つような良質な天気予報サービスは存在しなかった」「しかし湖での事故が毎日のように報告されていることから、湖を航行中の小型船舶に、どんな悪天候が予想されるかについて少なくとも何らかの見通しを示せるシステムを持つことが非常に重要だと考えた」(ムウェンベさん)
この情報は毎日携帯メールで配信。危険な嵐が発達中の場合は警報メールを臨時配信して事態を知らせ、「行動してください、警戒態勢を取ってください」と呼びかけるという
試験運用に参加しているカボンゲさんも、各地域に合わせた天気予報の配信は、地域社会の安全を守るために欠かせないサービスだと考えるようになった。「このシステムが始まってから、少なくとも死者数は減った。だからこのシステムは必要だ」と考え、対象地域の拡大も要望中だ。
「湖はあまりにも広い。もしこのシステムが湖全体をカバーできれば、仲間たちも活用できる」と話すカボンゲさん。新技術がビクトリア湖の漁師たちの命を守る助けになればと願っている。