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日本の安全保障にとって「離島防衛」は支柱の1つだ。沖縄県は本島などを除き、尖閣諸島を含む離島(面積0・01平方キロ以上)が148ある。そのうち、法律に基づく振興対象の「指定離島」は、石垣島や宮古島など54に上る。こうした離島の保全を確保するうえで懸念されるのが、翁長雄志知事の露骨な「反米軍基地・親中姿勢」だ。
「クレイジー」「制御不能」。同県渡名喜村で米軍ヘリコプターが緊急着陸した後の24日、翁長氏は米軍への非難を強めた。対照的に、これまで軍事的挑発を繰り返す中国への「沈黙」が際立つ。
石垣島を拠点とする日刊紙「八重山日報」編集長の仲新城誠(なかしんじょう・まこと)氏は「秋の知事選を意識した言動だ。地元メディアの称賛を期待し、米軍には強気に出るが、中国の脅威には『知らん顔』。脅威を認めれば、米軍の存在を容認せざるを得なくなるためだろう」と批判する。
現実は冷厳だ。日本が「日中関係改善」ムードに幻惑されるなか、中国は沖縄への領土的野心を決して放棄しない。海軍の潜水艦が宮古島と尖閣諸島の接続水域を潜航したり、空軍機が宮古海峡の突破訓練を繰り返したりして「既成事実」の積み上げを進めている。
日本沖縄政策研究フォーラム理事長の仲村覚氏は、中国が沖縄を「海の万里の長城」と呼んでいるとして、警告する。
「中国にとって、沖縄は、米軍の東シナ海進入を阻む『防波堤』だ。沖縄の基地問題は、県民の負担軽減が目的になってはならず、中国が尖閣諸島や沖縄本島を支配するための『米軍追い出し工作』であることを忘れてはならない」
離島防衛では、武装集団の不法上陸など、治安維持のための警察権では不十分な一方で、有事ではない「グレーゾーン事態」が想定される。政府は、日米同盟の抑止力を前提に「専守防衛」を堅持するが、どのような対応が必要か。
自民党の石破茂元防衛相は「自衛権を行使できる『急迫不正の武力攻撃』に至らない方法で、外国勢力が日本の領域を侵害した場合、今の態勢では十分に対応できない恐れがある」と述べ、法整理の必要性と「日本版海兵隊」の強化を提言した。
「海兵隊の任務である邦人保護と領土防衛は、国家主権の根幹だ。それを米国に委ねていいのか。島嶼(とうしょ)防衛・奪還にあたる陸上自衛隊西部方面普通科連隊(長崎県佐世保市)は海空自衛隊と連携し、さらに能力を充実させるべきだ」
政府は国家安全保障戦略で、沖縄について《国家安全保障上極めて重要な位置》にあると記すのみだ。前出の仲村氏は、踏み込んだ戦略の策定を要請する。
「日本は、沖縄を『東アジアの平和を維持するための拠点』と明確に位置づけ、『専守防衛』を見直すべきだ。外国に狙われやすい無人島を増やさないため、離島生活の不利益を解消する経済戦略も必要になる。揺るがぬ戦略があってこそ、米中に振り回されない自立した国家となれる」
まさに「待ったなし」だ。 =おわり
■清宮真一(きよみや・しんいち) 1979年、さいたま市(旧浦和市)生まれ。2002年、産経新聞社に入社。大阪本社社会部で、当時の橋下徹大阪市長率いる日本維新の会を、東京本社政治部で自民、公明両党や官邸、外務省などを担当した。17年10月から夕刊フジ報道部記者。