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時代を見通す日本の基礎情報

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「極秘核実験」探知した日本の地震計

イスラエルが極秘で行った核実験を日本の地震計が検知したことがある。

 イスラエルが核兵器を持っているのは公然の秘密になっている。だがイスラエルは決して認めていないし、同国の後ろ盾になっている米国も認めていない。

 ところで核兵器は作っていく段階で、臨界の確認や性能維持のために核実験を行うことが不可欠のものだ。このため広島や長崎に米国が落とした原爆は、その前に米国ニューメキシコ州の砂漠で核実験を行っていた。中国も中国奥地の新疆ウイグル自治区・ロプノルで核実験を行った。

 もっと狭い国の英国はオーストラリアで、またフランスも本国ではなく当時仏領だったアルジェリアの砂漠や南太平洋の仏領ポリネシアで核実験を行った。

 イスラエルは英国よりさらに狭く、国内で核実験をすることは不可能だ。このため南アフリカ(南ア)と共同で、南アと南極の間にある海中で1979年に極秘の核実験をやったのでは、という疑惑が伝えられていた。

 この近くには南ア領のプリンス・エドワード諸島がある。南アから1800キロ南で、南極とのほぼ中間点だ。定住者はいない。この辺りの海は「ほえる南緯50度」といわれる南極海が荒れる名所で、航行する船はほとんどいない。

 ところが、実験地点の南極側にある日本の昭和基地の地震計は、極秘の核実験を記録していたのだ。実はこのことが発表されたのは今年になってからである。

 ここには日本国内にもある高感度の地震計が59年に設置され、それまでも世界各地の地震を記録していた
この地震計が79年9月22日に3回の海中核爆発を記録した。南アの現地時間で午後5時少し前から同5時15分にかけてだった。爆発の規模はマグニチュード(M)3・7から3・1の地震相当、TNT火薬では約3000トン相当のものだった。

 昭和基地から現場までの距離は約2000キロ。このくらいの大きさの地震だったら、十分に記録できる距離である。たとえば米国ネバダ州で80年7月や翌年6月に行われた核実験も、81年9月と12月に旧ソ連南部のカザフスタンで行われた核実験も同じ地震計が記録していた。

 地震計には普通の地震とは違う核実験特有の波形が記録された。記録の特徴から、地下核実験か、大気中の核実験か、それとも海中核実験だったのかもわかる。ネバダとカザフスタンは地下核実験だった。79年の爆発は異様に長い振動が継続したので、明らかに海中爆発の特徴を示していた。

 地震計にとって2000キロは遠くはない。昭和基地からネバダまで1万6000キロ以上、カザフスタンまでは1万4000キロ近くもある。世界中、どこで隠れて核実験をやっても、地震計にだけは検知できるのである

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