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だが、採択したコミュニケは結局「改革」という言葉の空疎な連呼に終始する以外に、具体案や日程表を何一つ打ち出すことなく、改革断行の気概をまったく感じさせなかった。「改革」は単なる見せかけのパフォーマンスに終わったのである。
これではまるで改革の“やるやる詐欺”であろう。会議閉幕翌日、上海と香港の株式市場で失望売りが広がり、株価が下落したことは市場の正直な反応ではないか。
なぜ改革ができないのだろうか。今の体制下で作り上げてきた利権構造が改革によって失われることを恐れる党内勢力の抵抗が大きかったことは事実だ。
9日の全体会議(全会)開幕から数日間、中国の官製メディアが会議進行状況を一切報じなかったことから、会議中に激しい対立と論争が起きたことが分かる。おそらく、既存の利権構造に深く関わっている江沢民派の幹部たちが改革に猛反発したのではないか。
それ以外に、改革を骨抜きにしたもうひとつの大きな要因はやはり、共産党総書記(国家主席)習近平氏その人の態度であると思う。
13日、中央テレビ局のニュースサイトは、習氏が全会で決定した改革方針をめぐり「改革は一度に成し遂げることはできない」と述べていたと伝えた。全会閉幕の翌日に、最高指導者の発言としてそれが報じられたことの意味は実に大きい。
「上に政策あれば下に対策あり」の中国では、たとえ最高指導部が「改革を急げ」と大号令をかけたとしても、やる気のない官僚たちがその通りに動くことはまずない。なのに、最高指導者の習氏自身が改革に関して「一度に達成できない」という消極的な発言をすれば、全国の幹部たちは当然、「改革は別に急がなくても良い」と受け止めるに違いない。
つまり、「改革」を連呼したコミュニケを横目にして、習氏が間をおかず改革の推進に事実上のブレーキをかけた。改革なんかやりたくもないというのは彼の本心ではないか。
なぜなら、習氏の政治的支持基盤のひとつは改革反対の江沢民派と既存利益保持者の太子党の面々である。それに加えて、国有大企業の独占構造や土地に対する国家の支配は習氏が死守しようとする独裁体制の経済的基盤そのものであるから、それらにメスを入れるような改革を進める気は当然ない。
改革をやらない代わりに、習氏が大急ぎでやろうとしているのは、独裁体制強化のための国家安全委員会の創設だ。それが出来上がれば、習氏自身は絶大な権力を手に入れるだけでなく、国内のあらゆる不満と反発を簡単に抑圧できる。
つまり、習氏は改革の推進によって社会的矛盾を解消する道を自ら断ってから、力の論理で民衆の反抗を抑え付け、政権の安泰を図る道を選んだのである。
だが、改革の放棄は結局大きな失望とよりいっそうの反発を招き、力任せの抑圧は反抗運動のさらなる激化を呼ぶに違いない。
習近平政権は、国内問題を平和的に解決する最後のチャンスを逸した。後に残されるのは、改革を志す党内勢力による政変の断行か、もしくは民衆による革命的反乱の暴発だろう。
いずれにしても、習政権下の中国が今後、激動の「乱世」に突入していくのは間違いないようだ。