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時代を見通す日本の基礎情報

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上海で遺失物拾ってくれた台湾人に、日本人が2年越しの「お礼」

鍛邦雄(かじ・くにお)さんの顔は晴れ晴れとしていた。2年前の恩義に対して、再び感謝の気持ちを伝えることができたからだ。相手は台湾人男性の闕福栄さん。2年前に上海市内のホテルのレストランに置き忘れたかばんを見つけてくれた。おかげで大量の現金や重要書類がそのまま戻って来た。鍛さんはそれ以来、まだきちんとお礼ができていないと気に病んでいた。このたび台湾に足を運び、改めて闕さんに会って感謝の気持ちを伝えることができた。台湾メディアの聨合報が伝え、大陸メディアの中国新聞社なども報じた。

  闕さんは台湾北西部の新竹の住人。ブライダル関係の仕事をしている。2011年3月には見本市の仕事などで上海市に滞在していた。ホテルのレストランで朝食を取っていると、近くの席にかばんがひとつ、置いたままになっているのに気づいた。

  ビジネスマンが持つタイプのかばんだ。中を見ると、大量の人民元紙幣、米ドル、それに契約書などが入っていた。これをなくしたら、持ち主はとても困ると、すぐに分かった。そこで闕さんは10分あまり、落とし主が現れるのを待っていた。

  困ったことに、闕さんもすぐに見本市の会場に行かねばならなかった。呼んでいたタクシーも来てしまった。そこで闕さんは、かばんをビニール袋に入れて封印した。その上で、ホテルのフロントスタッフに落し物として届けた。抜き取られることを恐れ、「中味は私も確認しています」と告げ、連絡用に自分の電話番号も渡しておいた。

  さらに10分ほどして、闕さんの携帯電話が鳴った。かばんが持ち主のもとに戻ったと分かった。闕さんはほっとした。闕さんによると、「実は私も海外で、書類や携帯電話をなくしたことがあるんですよ」という。戻って来たためしがなかった。それだけに、持ち主の気持ちはよく分かるという。とくにあれこれ考えたわけではない。「自分の物ではないのだから、自分の物にしてはいけない」。それだけだった。

  次の日、闕さんのもとに落とし主の鍛さんがやってきた。丁寧に礼を言い、「厚い謝礼」を渡そうとした。闕さんは柔らかな物腰で、しかしきっぱりと断った。「当然のこと。何も、たいしたことをしたわけじゃない」との考えだった。

  鍛さんは、どうにも気が晴れなかった。「やるべきことを、やっていない」と思えてしかたなく、それからの2年間の間、夜も眠れないことが、しばしばあったという。そこで、「これはどうしても、台湾に行って闕さんに改めてお礼をせねばならない」と決意した。

  電子メールを受け取った闕さんは驚いた。お礼のためにわざわざ台湾まで来たいという。嬉しい連絡だった。そこで、再会の場所と日時を約束した。

  台湾に到着した鍛さんは、そのまま闕さんの住む新竹に向った。鍛さんは通訳を連れていたが、闕さんに自分の気持ちを伝えるのに、言葉の壁は問題にならなかった。ぎこちない中国語で「シエシエ、ニイ(ありがとう)」とだけ言い、固く握手した。笑顔だけで、すべてが通じた。2人はきつく抱き合った。

  鍛さんは闕さんへの贈り物として、心を込めて選んだ茶道具を用意していた。こんどは、気持ちよく受け取ってもらえた。闕さんはホストとして、鍛さんら一行を街の名所の城隍廟に案内した。名物料理を味わってもらい、ショッピングモールで楽しんでもらった。

  鍛さんは「拾ったお金を、いい加減にしないのは『義』です。台湾の人は、ほんとうにすばらしい」と述べ、闕さんに「ぜひ、日本に来ていただきたい。今度は私がご案内します」と申し出た。

  鍛さんと闕さんの年齢は詳しく紹介されていないが、鍛さんは70歳近い男性という。写真をみるかぎり闕さんは30代か40代ぐらいと、比較的若い。日本人と台湾人の間に、出身地も世代も超えた信頼と友情の絆が、また深まった

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