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時代を見通す日本の基礎情報

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北京の締めつけの中、自由度守っていた香港メディア

今回は早朝の香港で原稿を書いている。1泊2日の強行軍だが、羽田から4時間半のフライトはあまり苦にならない。ホテルの窓から久しぶりに見る九龍側には数え切れないほどの超高層ビルがそびえ立つ。狭い敷地に巨大建築物が林立しながら、なぜか中国本土のようなケバケバしさはない。ここは英国式都市計画と中国式混沌(こんとん)・躍動が見事に調和した町のようだ。

 出張の目的は鳳凰(ほうおう)衛視が制作する日中関係特別番組に出演することだった。日本では鳳凰衛視よりも、香港フェニックステレビとして知られている。本拠地は香港だが本土を含む世界の中国人社会を対象とした中国語版CNNを目指しているらしい。鳳凰衛視の看板の一つが「時事弁論会」と呼ばれる討論番組だ。以前も日中関係について特別番組が作られたが、今回のような正味94分の生放送番組は6年ぶりだという。

 空港到着後、中心からやや離れた鳳凰衛視本部ビルに直行した。ニュース番組専用のスタジオ群は巨大かつ最新情報機器に満ちあふれていた。

 日本でも同種の報道番組に呼ばれる機会が増えたが、放送施設は日本のどの局よりも充実していた。香港はテレビ局でも英国式整然と中国式混沌が調和している。だが、鳳凰衛視のスタジオは整然ながら、どこか人工的できれい過ぎる。これに比べれば、日本のテレビ局にはもっとダイナミックで混沌とした人間味と生活感があると思った。
実際の番組進行も日本とはちょっと違う。香港の他のテレビ局を見たわけではないが、鳳凰衛視ではスタジオ内にカメラマン以外のスタッフがほとんどいない。生放送だから分・秒単位で動いているはずなのに、スタジオ内には「あと1分」「あと15秒」のような手書き指示を出す頼りになる現場監督がいないのだ。全ては別室の管制センターが仕切っているらしい。キャスターの物理的、精神的負担は日本以上だと感じた。

 討論の内容もプロフェッショナルだった。キャスターを含め中国側参加者はいずれも日本や国際問題の専門家ばかり。日本側も筆者以外の参加者が直前変更とはなったが、中国と外交安全保障の専門家がそろい、日中のバランスは取れていた。日本語版は今もネット上で視聴可能らしい。

 筆者の関心は討論の内容よりも、今回見聞きした香港メディア報道の「自由度」だ。英国から返還され、中華人民共和国の特別行政区となってはや16年、香港の民主化の行方は将来の中国本土の民主化を占う上で重要と考えるからだ。筆者が見聞きしたことをそのままご紹介しよう
まずは検閲の有無から。事前打ち合わせで、これを言え、これは言うなといった指示はもちろん、その種の示唆、暗示はなかった。だが、以前は中国共産党統治そのものに対する批判が放送され、中国本土で番組放送が一時的に切られ、伝えたいメッセージが伝わらなかったこともあるそうだ。試しに筆者は本番中北京を代弁する発言を繰り返す中国側参加者のひとりに「独立した知識人なのだから中国政府が言うことを繰り返すのはやめよう」と発言してみたが、放送は続いた。この程度なら問題ないらしい。香港では7月に親中派の行政長官の辞職などを求めたデモも起きた(共同)

香港では7月に親中派の行政長官の辞職などを求めたデモも起きた

 筆者の経験は限られたものだが、少なくとも先週末の特別番組には言論の自由が感じられた。日本側参加者に十分発言機会を与えるだけでなく、一部の中国側参加者は中国政府と異なる見解を堂々と発言していた。

 事後検閲はどうか。番組終了後、北京の当局からいろいろなコメントは届くそうだが、記者たちはあまり気にしないという。彼らには中国本土の御用記者とは一味違う職業意識が感じられ、ちょっとうれしくなった。もちろん北京の締め付けがないはずはない。その圧力の中でこうした番組を作成する鳳凰衛視にはやはり敬意を表すべきだと考える

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