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慰安婦問題などで反日政策を続ける韓国。元外務省主任分析官の佐藤優氏は「韓国(の国力)は弱い。その韓国が強い中国とつながるようなシナリオは極力避けるべきだ」と話し、中韓関係の分断を提言する。そこで、「特使外交」による局面打開が必要だという。「安倍晋三首相が朴槿恵大統領に特使を送り、『何をやってほしいのですか』と尋ねる。それを丸のみしても関係悪化を止め、中国との間に楔(くさび)を打ち込める」
佐藤氏は「これこそが帝国主義時代の外交だった」という。「首脳が外交に乗り出す前に水面下で特使による秘密外交を行う。官僚組織が硬直化して通常の外交ルートで突破口が開けないからだ」
佐藤氏によると、より「深刻」なのは、戦時中の韓国人徴用に対し、韓国で日本企業に賠償支払いを命ずる判決が地裁や高裁で相次いでいる徴用工問題だという。「賠償命令が最高裁判決で確定すると、韓国は国家方針の外交課題として日本に押し付けてくる。その場合、軟着陸させなければならなくなる」
本来、昭和40年の日韓請求権協定で解決済みの問題だが、佐藤氏は「人道的に民間の義援金として支払う」ことを提案する。「政府は器だけを作り、お金は民間企業が入れ、そこの基金から出せばいい。それを国際社会に訴える。韓国側が拒否しても、少なくとも日本政府が誠心誠意対応した形は残る」
西岡力東京基督教大学教授は違う立場だ。「日本側が金を出すことがあれば、今後も際限なく理不尽な要求が続く危険がある。毅然(きぜん)たる対応を取ることが日韓関係を好転させる」
そのうえで西岡氏はこう強調する。「この問題は日韓請求権協定で『完全かつ最終的に解決』している。日本はこれに基づき無償3億ドル有償2億ドルの経済協力を実施した。当時の外貨準備高が日本は18億ドル、韓国は1億3千万ドル。韓国政府発行の白書によると、同資金の韓国経済成長への寄与度は19%にのぼる。6年前、当時の盧武鉉政権が徴用工への補償は日本に求められないと結論づけている」
安倍政権発足以来、4回の首脳会談を行い、急速に進む日露関係。佐藤氏は、北方領土問題の解決などに行き着くには、両国とも外務省に問題を抱えていると指摘する。「両首脳の個人的信頼関係は十分できつつあるが、問題は、そのレベルに両国外務省が追いついていけていないことだ。ロシア外務省はサボタージュし、日本外務省は、そのサボタージュを阻止する力がない」
両国ともに平和条約を締結する政治意思が固まれば、その先は技術論になる。「外務省ルートで進められないなら、首相の個人代表を特使に任命すべきだ。例えば、国家安全保障局の初代局長になる谷内(やち)正太郎内閣官房参与。森喜朗元首相もいい」と提案する。
適任者はロシア側にもいるという。「石油会社ロスネフチのイーゴリ・セチン社長などプーチン大統領の窓口になる人物を設定して特使間の外交、秘密交渉で、相当部分を詰める。通常ルートとは違う潜在力を使わなくては動かない」
佐藤氏は、これまで日露接近の度に反対してきた米国が今回は静観するとみている。シリア問題でロシアと妥協した米国は世界の警察官から「戦線縮小」しつつある。
「背景に対中牽制(けんせい)もある。米国はいろいろな問題に首を突っ込まなくなっている。日露関係は米国にとって死活的利益に関係する話ではない」
北方領土問題解決について、佐藤氏は「来年1年間が勝負」だという。「プーチン大統領の訪日までにどこまで動かせるかが鍵。ある程度のことが動いていないと大統領は来ない。今度は成果を出さなければいけない」
最終的に平和条約を結ぶとしたらどうなるのか。今年7月、東郷和彦元外務省欧州局長とロシアのアレクサンドル・パノフ元駐日大使が論文を発表し、歯舞、色丹2島返還と国後、択捉2島で共同経済活動を行う提案を行った。佐藤氏は「交渉のたたき台になる」と評価する。
「現実的に考えると、この案に落ち着くのではないか。2島返還。残り2島を特別の法的地位を与え両国で共同開発。それ以外ではロシア側の折り合いがつかない。日本側の世論は政権の指導力にかかってくる」
佐藤氏はロシアとの関係改善の重要性を強調する。「対中牽制、エネルギー戦略上、必要だ。このことを国民にきちんと説明していくことは必要だろう」
一方、中西寛京都大学教授は楽観論を戒める。「日露関係が進むことは対中牽制になり、対米でもプラスになり好ましいが、現状で高い期待を持つのは行き過ぎではないか。4島一括はもちろん、日本が多少譲歩してもプーチン大統領が乗って来る可能性は低い。現在の安全保障強化から徐々に協力関係のレベルを上げていくのがよいのでは」と語った。
さらに中西氏は、「日本には、広報やパブリックディプロマシー(外交の広報戦略)に戦略性が不足している」と分析し、外交全般における発信力の強化を提起。「日本の主張が東アジアの平和と安定にどう結びつくかを、第三者に響くような形で訴えなければいけない」と主張する。
新帝国時代を乗り切るには、従来の手法や発想を捨てるのが第一歩となりそうだ