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大阪や京都だけでなく、和歌山に市電が走っていたとは、特別展で初めて知った。明治42年に開業し、庶民の足として親しまれたが昭和46年、車社会の到来とともに廃線となった。
会場には当時の切符や車両の設計図、市内を走る市電の写真などが並んでいた。「懐かしいなあ。このころは高校生だったのに」「電車の横に写っている酒屋さんはもうなくなってしまったな」。
訪れた人たちは口々に語っていた。展示のガラスケースには、額(ひたい)をつけた跡があちこちに。少しでも近づいて見たかったのだろう。
会期中、市民から市電の切符や時刻表などゆかりの品々が寄贈された。「博物館で大切に保管してください」とのメッセージが添えられていた。市内をゴトゴト走る市電に、多くの人たちが自らの人生を重ね合わせているようだった。本紙和歌山版では、そんな人々の思いも記事で紹介した。
会場ではお年寄りの女性が、警備の男性に、「本当にいいものを見せてもらいました」とおじぎをしていた。何とも温かい光景だった。