これが先進技術実証機「心神」の実物大模型
宮崎駿監督の最後の長編アニメ映画「風立ちぬ」、そして百田尚樹原作の「永遠の0(ゼロ)」の興行ヒットで、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)への人々の関心や哀愁の念が高まっている。そんな中で、日本人の心をさらに引きつけそうな呼び名を持つ「平成のゼロ戦」が今年中に登場する。
将来の国産ステルス戦闘機の試作機となっている「先進技術実証機」(通称・心神=しんしん)が、年内に初飛行するのだ。小野寺五典防衛相が4月10日の参議院外交防衛委員会で、心神の今年中の初飛行を改めて明言した。
防衛省技術研究本部(技本)の関係者は「もともとゴールデンウィーク明けの5月にも心神をマスコミ陣にロールアウト(お披露目)する予定だったが、数カ月遅れている。初飛行は今年ぎりぎりになるかもしれない」と述べた。
ゼロの遺伝子を持つ「心神」
試作機とはいえ、事実上の「日の丸ステルス機」の第1号となるのが、心神である。技本は、1995年度から「実証エンジンの研究」を開始。2000年度からは機体のステルス性能試験やエンジン部分の推力偏向装置の開発を目的とする「高運動飛行制御システムの研究」も併せて実施した。そして、2009年度からは8カ年計画で「先進技術実証機」の予算項目の下、心神の機体製造や飛行試験など試作費用だけで392億円の予算を確保していた。
心神は現在、主契約企業の三菱重工業が、ゼロ戦を生んだ同社の名古屋航空宇宙システム製作所(旧・名古屋航空機製作所)の小牧南工場で、初飛行前の最後の大仕上げ作業が施されている。つまり、心神はゼロ戦と同様、名航で誕生するわけであり、その意味で「ゼロの遺伝子」を受け継いでいるといえる。今年後半の初飛行での成果を踏まえ、2016年度までに開発を終える予定だ。
そもそも「心神」という名称の由来は何なのかが気になるだろう。もともとは、技本の中の人間が愛称として使うようになって、それが定着したのだという。
近代日本画壇の巨匠である横山大観が、富士山を日本の「心神」と呼んでおり、富士山の絵を、多く描いたことで知られる。たとえば、1954(昭和29)年5月6日付の朝日新聞の記事の中で、横山は次のように富士山について述べている。「古い本に富士を『心神』とよんでいる。心神とは魂のことだが、私の富士観といったものも、つまりはこの言葉に言いつくされている。・・・(エベレスト)は世界最高の山だけに、さすがに壮大で立派だった。・・・素晴らしい壮大な山だとは思ったが、富士を仰ぐ時のような、なんというか清々とした感情はわかなかった。富士は、そういう意味でも、たしかに日本の魂だと、その時も思ったことだ」。
つまり、心神という名称には、「日本の魂」という思いが込められているようだ。
富士山を背景に描かれた「心神」
心神の特徴は、優れたステルス性と機動性にある。敵レーダーに探知されずに敵を捕捉できる高いステルス性能、先進アビオニクス(航空機搭載の電子機器)、耐熱材料など、日本企業の技術を活用した高運動性を武器とする。
エンジンは双発。IHIが主契約企業となってアフターバーナーを備えたツイン・ターボファン方式のジェットエンジンXF5-1を開発した。最大出力は各約5トンで、2つ合わせて10トン級。各エンジンの出力方向を機動的に偏向するためのエンジン推力偏向パドルをエンジンの後方に3枚ずつ取り付け、エンジンの推力を直接偏向できるようにした。
この推力偏向パドルと、エンジンと飛行双方の制御を統合化したIFPC (合飛行推進力制御)技術によって、「従来の空力舵面では不可能な高迎角での運動性を実現した」と技本は説明する。つまり、この高度な制御技術を使えば、これまでだったら迎角が50度を超えて失速しそうな飛行場面でも、機体制御が可能となり、空中戦での戦闘能力が高まるとみている。
このほか、主翼と尾翼は富士重工業、川崎重工業が操縦席を製造している。機体の約3割に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われ、軽量化されている。
心神は全長14.2メートル、全幅9.1メートル、全高4.5メートルの単座式だ。「世界最強のステルス機」とされる米国のF22やF2よりは小さく、T4中等練習機よりは大きい。最大速度は明らかになっていない。
心神は、F2戦闘機の
後継機となる将来の「第6世代戦闘機」であるF3の生産に向けたプロトタイプ(研究試作機)である。つまり、防衛省は、心神を「第5世代戦闘機」と呼ばれる現在のステルス機の上を行く、「第6世代戦闘機」のカウンターステルス機の礎にすることを目指している。
航空自衛隊(空自)は昨年3月末現在で、ベトナム戦争で名を馳せた第3世代のF4を62機、主力戦闘機である第4世代のF15を201機、そして、米ゼネラル・ダイナミクス(後にロッキード・マーチンが軍用機部門を買収)のF16Cをベースに日米で共同開発された第4世代のF2を92機それぞれ有している。
このうち、老朽化して退役が迫ったF4の後継機として、2011年12月、民主党時代の野田佳彦政権の下、日本政府は米国主導で国際共同開発中のF35を次期主力戦闘機(FX)として選定した。
部隊配備は2030年代前半か
F2の後継機となるF3だが、開発の開始時期から考えて部隊配備は2030年代前半になってから、とみられている。このため、2030年代後半から退役が始まるF2の後継機となることが可能だ。しかし、2020年代後半から減勢が始まるF15の後継機となるのは時間的に厳しそうだ。技本の幹部は、「F3はF15の後継機としては間に合わない。F35がF15 の後継機となる」と打ち明ける。
ただ、こうなると、現在はF4、F15、F2の三機種体制が、将来はF35とF3の二機種体制になりかねない。設計ミスが見つかったり、原因不明の墜落事故を起こしたりして、両機に同時に「飛行停止措置」がかかった場合、運用可能な戦闘機がなくなってしまう。実際、2007年には一時的とはいえ、F15とF2が同時に飛行停止となり、老朽化したF4のみが日本の空を守る事態に陥ったこともある
防衛省は、心神の開発を通じて得た次世代戦闘機に必要な技術やノウハウを生かし、今後数十年間でi3(情報化、知能化、瞬間撃破力)とカウンターステルス能力を備えた第6世代戦闘機を製造する計画だ。中国やロシア相手で戦闘機の数的な劣勢に立たされる中、日本企業が世界に誇る素材技術、パワー半導体デバイス技術、優れた耐熱材技術を活かすことを目指す。開発費用について、防衛省は「開発段階では、機体規模にも依存するが、5000億~8000億円規模の経費が必要」と見積もっている。
ステルス戦闘機をめぐっては、中国が2011年にJ20(殲20)の初飛行を実施。ロシアも2010年からT50のテスト飛行を繰り返している。両国とも数年以内に配備すると見込まれている。ただ、技術の進歩は速く、将来的には次世代型のステルス戦闘機の主流が有人機ではなく、無人機になる可能性もある。既に、無人ステルス戦闘攻撃機として、米国のX-47B、フランスのニューロン、英国のタラニス、そして、中国の利剣がそれぞれ初飛行やテストフライトを終えている。これら次世代の無人攻撃機は将来、対地攻撃だけでなく、空対空の戦闘を可能にする十分な戦闘能力を持つかもしれない。
小野寺防衛相は4月10日の参議院外交防衛委員会で、F2の後継機となる将来戦闘機を国産、あるいは国際共同開発のどちらかにするか、2018年度までに最終判断すると述べた。しかし、国産計画には米国からの反対にあう可能性がある。事実、1980年代のFSX(次期支援戦闘機)開発をめぐる日米交渉でも、日本は米国からエンジンを輸入せざるを得ない弱い足元を見透かされて、F2の日米共同開発に追い込まれた。
FSX紛争に限らず、ステルス技術といった軍事技術ナショナリズムをめぐっては、同盟国とはいえども、米国は日本に対してシビアな態度をとってきた。軍事技術は秘匿性が高いので、当然と言えば当然だ。米政府と米議会は結局、日本を含めたF22の外国への売却を禁止し、同機を次期主力戦闘機の有力候補としてアテにしていた空自は大いに翻弄された。
心神のステルス性能についても、当初、日本は国内に試験施設がないため、米国に施設利用を依頼。ところが、米国はこの依頼を拒否。結局、フランスが2005年9月、自国の国防省装備局の電波試験施設の利用を快諾した。米国は後のF22の対日禁輸同様、その時も日本のステルス技術向上を嫌がった、とみられている。
国産化を恐れる米国の介入を懸念
昨年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画(2014~18年度)では、将来の戦闘機について「国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るため、実証研究を含む戦略的な検討を推進し、必要な措置を講ずる」と記されている。
F2後継機の国際共同開発の可能性について、10日の参議院外交委員会では、航空自衛官出身の自民党の宇都隆史参議院議員が小野寺大臣に迫った。宇都議員は、日本独自の技術力で戦闘機を開発する方が国内産業界にとっても日本の防衛政策にとっても重要で、原則、国産を目指すべきだと小野寺大臣に質した。
これに対し、小野寺大臣は「将来戦闘機についてはわが国独自の戦闘機開発技術が重要であること。当該技術が民間の他の分野に応用できるという波及効果を有していること」を認めたもの、将来の戦闘機の具体的な要求性能や日本の技術到達レベル、コスト面での合理性などを総合的に考慮して国産か国際開発かを決めていく考えを示した。
防衛省では、F3を国産にし、ライフサイクルコストなど4兆円規模の新規需要が発生した場合、約24万人の雇用創出効果があると試算している。また、心神自体も、95%が国内で製造され、約1000の部品メーカーや製造業者に新たな仕事をもたらしたと説明している。
米国による政治的な圧力や日本の財政赤字の増大がともに懸念されるなか、政治家や産業界、米国を巻き込んだ国産・自主開発派と国際共同開発派の攻防が待ち受けていることは間違いない。心神の初飛行によってその攻防の幕が切って落とされることになるだろう。
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宮崎駿監督の最後の長編アニメ映画「風立ちぬ」、そして百田尚樹原作の「永遠の0(ゼロ)」の興行ヒットで、ゼロ戦(零式艦上戦闘機)への人々の関心や哀愁の念が高まっている。そんな中で、日本人の心をさらに引きつけそうな呼び名を持つ「平成のゼロ戦」が今年中に登場する。
将来の国産ステルス戦闘機の試作機となっている「先進技術実証機」(通称・心神=しんしん)が、年内に初飛行するのだ。小野寺五典防衛相が4月10日の参議院外交防衛委員会で、心神の今年中の初飛行を改めて明言した。
防衛省技術研究本部(技本)の関係者は「もともとゴールデンウィーク明けの5月にも心神をマスコミ陣にロールアウト(お披露目)する予定だったが、数カ月遅れている。初飛行は今年ぎりぎりになるかもしれない」と述べた。
ゼロの遺伝子を持つ「心神」
試作機とはいえ、事実上の「日の丸ステルス機」の第1号となるのが、心神である。技本は、1995年度から「実証エンジンの研究」を開始。2000年度からは機体のステルス性能試験やエンジン部分の推力偏向装置の開発を目的とする「高運動飛行制御システムの研究」も併せて実施した。そして、2009年度からは8カ年計画で「先進技術実証機」の予算項目の下、心神の機体製造や飛行試験など試作費用だけで392億円の予算を確保していた。
心神は現在、主契約企業の三菱重工業が、ゼロ戦を生んだ同社の名古屋航空宇宙システム製作所(旧・名古屋航空機製作所)の小牧南工場で、初飛行前の最後の大仕上げ作業が施されている。つまり、心神はゼロ戦と同様、名航で誕生するわけであり、その意味で「ゼロの遺伝子」を受け継いでいるといえる。今年後半の初飛行での成果を踏まえ、2016年度までに開発を終える予定だ。
そもそも「心神」という名称の由来は何なのかが気になるだろう。もともとは、技本の中の人間が愛称として使うようになって、それが定着したのだという。
近代日本画壇の巨匠である横山大観が、富士山を日本の「心神」と呼んでおり、富士山の絵を、多く描いたことで知られる。たとえば、1954(昭和29)年5月6日付の朝日新聞の記事の中で、横山は次のように富士山について述べている。「古い本に富士を『心神』とよんでいる。心神とは魂のことだが、私の富士観といったものも、つまりはこの言葉に言いつくされている。・・・(エベレスト)は世界最高の山だけに、さすがに壮大で立派だった。・・・素晴らしい壮大な山だとは思ったが、富士を仰ぐ時のような、なんというか清々とした感情はわかなかった。富士は、そういう意味でも、たしかに日本の魂だと、その時も思ったことだ」。
つまり、心神という名称には、「日本の魂」という思いが込められているようだ。
富士山を背景に描かれた「心神」
心神の特徴は、優れたステルス性と機動性にある。敵レーダーに探知されずに敵を捕捉できる高いステルス性能、先進アビオニクス(航空機搭載の電子機器)、耐熱材料など、日本企業の技術を活用した高運動性を武器とする。
エンジンは双発。IHIが主契約企業となってアフターバーナーを備えたツイン・ターボファン方式のジェットエンジンXF5-1を開発した。最大出力は各約5トンで、2つ合わせて10トン級。各エンジンの出力方向を機動的に偏向するためのエンジン推力偏向パドルをエンジンの後方に3枚ずつ取り付け、エンジンの推力を直接偏向できるようにした。
この推力偏向パドルと、エンジンと飛行双方の制御を統合化したIFPC (合飛行推進力制御)技術によって、「従来の空力舵面では不可能な高迎角での運動性を実現した」と技本は説明する。つまり、この高度な制御技術を使えば、これまでだったら迎角が50度を超えて失速しそうな飛行場面でも、機体制御が可能となり、空中戦での戦闘能力が高まるとみている。
このほか、主翼と尾翼は富士重工業、川崎重工業が操縦席を製造している。機体の約3割に炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が使われ、軽量化されている。
心神は全長14.2メートル、全幅9.1メートル、全高4.5メートルの単座式だ。「世界最強のステルス機」とされる米国のF22やF2よりは小さく、T4中等練習機よりは大きい。最大速度は明らかになっていない。
心神は、F2戦闘機の
後継機となる将来の「第6世代戦闘機」であるF3の生産に向けたプロトタイプ(研究試作機)である。つまり、防衛省は、心神を「第5世代戦闘機」と呼ばれる現在のステルス機の上を行く、「第6世代戦闘機」のカウンターステルス機の礎にすることを目指している。
航空自衛隊(空自)は昨年3月末現在で、ベトナム戦争で名を馳せた第3世代のF4を62機、主力戦闘機である第4世代のF15を201機、そして、米ゼネラル・ダイナミクス(後にロッキード・マーチンが軍用機部門を買収)のF16Cをベースに日米で共同開発された第4世代のF2を92機それぞれ有している。
このうち、老朽化して退役が迫ったF4の後継機として、2011年12月、民主党時代の野田佳彦政権の下、日本政府は米国主導で国際共同開発中のF35を次期主力戦闘機(FX)として選定した。
部隊配備は2030年代前半か
F2の後継機となるF3だが、開発の開始時期から考えて部隊配備は2030年代前半になってから、とみられている。このため、2030年代後半から退役が始まるF2の後継機となることが可能だ。しかし、2020年代後半から減勢が始まるF15の後継機となるのは時間的に厳しそうだ。技本の幹部は、「F3はF15の後継機としては間に合わない。F35がF15 の後継機となる」と打ち明ける。
ただ、こうなると、現在はF4、F15、F2の三機種体制が、将来はF35とF3の二機種体制になりかねない。設計ミスが見つかったり、原因不明の墜落事故を起こしたりして、両機に同時に「飛行停止措置」がかかった場合、運用可能な戦闘機がなくなってしまう。実際、2007年には一時的とはいえ、F15とF2が同時に飛行停止となり、老朽化したF4のみが日本の空を守る事態に陥ったこともある
防衛省は、心神の開発を通じて得た次世代戦闘機に必要な技術やノウハウを生かし、今後数十年間でi3(情報化、知能化、瞬間撃破力)とカウンターステルス能力を備えた第6世代戦闘機を製造する計画だ。中国やロシア相手で戦闘機の数的な劣勢に立たされる中、日本企業が世界に誇る素材技術、パワー半導体デバイス技術、優れた耐熱材技術を活かすことを目指す。開発費用について、防衛省は「開発段階では、機体規模にも依存するが、5000億~8000億円規模の経費が必要」と見積もっている。
ステルス戦闘機をめぐっては、中国が2011年にJ20(殲20)の初飛行を実施。ロシアも2010年からT50のテスト飛行を繰り返している。両国とも数年以内に配備すると見込まれている。ただ、技術の進歩は速く、将来的には次世代型のステルス戦闘機の主流が有人機ではなく、無人機になる可能性もある。既に、無人ステルス戦闘攻撃機として、米国のX-47B、フランスのニューロン、英国のタラニス、そして、中国の利剣がそれぞれ初飛行やテストフライトを終えている。これら次世代の無人攻撃機は将来、対地攻撃だけでなく、空対空の戦闘を可能にする十分な戦闘能力を持つかもしれない。
小野寺防衛相は4月10日の参議院外交防衛委員会で、F2の後継機となる将来戦闘機を国産、あるいは国際共同開発のどちらかにするか、2018年度までに最終判断すると述べた。しかし、国産計画には米国からの反対にあう可能性がある。事実、1980年代のFSX(次期支援戦闘機)開発をめぐる日米交渉でも、日本は米国からエンジンを輸入せざるを得ない弱い足元を見透かされて、F2の日米共同開発に追い込まれた。
FSX紛争に限らず、ステルス技術といった軍事技術ナショナリズムをめぐっては、同盟国とはいえども、米国は日本に対してシビアな態度をとってきた。軍事技術は秘匿性が高いので、当然と言えば当然だ。米政府と米議会は結局、日本を含めたF22の外国への売却を禁止し、同機を次期主力戦闘機の有力候補としてアテにしていた空自は大いに翻弄された。
心神のステルス性能についても、当初、日本は国内に試験施設がないため、米国に施設利用を依頼。ところが、米国はこの依頼を拒否。結局、フランスが2005年9月、自国の国防省装備局の電波試験施設の利用を快諾した。米国は後のF22の対日禁輸同様、その時も日本のステルス技術向上を嫌がった、とみられている。
国産化を恐れる米国の介入を懸念
昨年12月に閣議決定された中期防衛力整備計画(2014~18年度)では、将来の戦闘機について「国際共同開発の可能性も含め、戦闘機(F2)の退役時期までに開発を選択肢として考慮できるよう、国内において戦闘機関連技術の蓄積・高度化を図るため、実証研究を含む戦略的な検討を推進し、必要な措置を講ずる」と記されている。
F2後継機の国際共同開発の可能性について、10日の参議院外交委員会では、航空自衛官出身の自民党の宇都隆史参議院議員が小野寺大臣に迫った。宇都議員は、日本独自の技術力で戦闘機を開発する方が国内産業界にとっても日本の防衛政策にとっても重要で、原則、国産を目指すべきだと小野寺大臣に質した。
これに対し、小野寺大臣は「将来戦闘機についてはわが国独自の戦闘機開発技術が重要であること。当該技術が民間の他の分野に応用できるという波及効果を有していること」を認めたもの、将来の戦闘機の具体的な要求性能や日本の技術到達レベル、コスト面での合理性などを総合的に考慮して国産か国際開発かを決めていく考えを示した。
防衛省では、F3を国産にし、ライフサイクルコストなど4兆円規模の新規需要が発生した場合、約24万人の雇用創出効果があると試算している。また、心神自体も、95%が国内で製造され、約1000の部品メーカーや製造業者に新たな仕事をもたらしたと説明している。
米国による政治的な圧力や日本の財政赤字の増大がともに懸念されるなか、政治家や産業界、米国を巻き込んだ国産・自主開発派と国際共同開発派の攻防が待ち受けていることは間違いない。心神の初飛行によってその攻防の幕が切って落とされることになるだろう。
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