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時代を見通す日本の基礎情報

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思想教育の総元締「中央党校」から反乱ののろし 中国

中国には「中央党校」という特別な学校がある。共産党中央委員会直属の教育機関で、党の高級幹部の養成を主な任務としている。かつて毛沢東もその校長を兼任したことがあり、中央党校は党の思想教育の総元締という位置づけである。

 だが最近、この中央党校から「思想」にかかわる重要問題に関し、党中央の方針に真っ正面から対抗するという前代未聞の動きが見られたのである。

 たとえば今月2日、民間企業運営の「共識網」というサイトが、中央党校の女性教師、蔡霞教授の講演録を掲載した。彼女は講演の中で「憲政こそは国家安定維持の大計」だと訴えて、持論の憲政擁護論を展開した。

 7月18日掲載の本欄が記しているように、中国では今、いわゆる「憲政論争」が巻き起こっている。民間知識人の多くが「憲法を基本とする政治」を求めているのに対して、「党の指導的立場が否定される」と危惧する党直属宣伝機関は批判のキャンペーンを始めた。共産党中央委員会機関紙の人民日報も8月5日から3日連続で「憲政批判」の論評を掲載し、キャンペーンの展開に力を入れている。

 だが、党中央直属の人民日報が「憲政批判」を展開している中で、同じ党中央直属の中央党校の教師が堂々とそれに対抗して憲政擁護論をぶち上げている。共産党のいわば「中枢神経」において、分裂が始まっているのだ。

同じ今月2日、中央党校機関紙の『学習時報』が衝撃的な内容をもつ論評を掲載した

 書いたのは中央党校の宋恵昌教授である。中国周王朝きっての暴君の●(=がんだれに萬)王が民衆の不満の声を力ずくで封じ込めた結果、自分自身が追放される憂き目にあったとの故事を引用しながら、「民衆の口をふさいではいけない」と説いた内容。昨今の中国の政治事情を知る者なら、この論評の意図するところが即時に理解できたはずだ。

 習近平国家主席率いる指導部は今、ネット世論を中心とする「民衆の声」を封じ込めようと躍起になっている。

 今月4日、国営新華社通信の李従軍社長が人民日報に寄稿して「旗幟(きし)鮮明に世論闘争を行う」と宣言し、軍機関誌の解放軍報も同じ日に「ネット世論闘争の主導権を握ろう」との論評を掲載した。党と軍を代弁する両紙が口をそろえて「闘争」という殺気のみなぎる言葉を使って、ネット世論への宣戦布告を行っているのだ。

 こうしてみると、上述の学習時報論評は明らかに、党指導部が展開する世論封じ込めに対する痛烈な批判であることがよく分かる。論評は、「いかなる時代においても、権力を手に入れれば民衆の口をふさげると思うのは大間違いだ。それが一時的に成功できたとしても、最終的には民衆によって権力の座から引き下ろされることとなる」と淡々と語っているが、誰の目から見てもそれは、最高権力者である習近平氏その人への大胆不敵な警告なのである。

 

当の習氏がこの論評に目を通せば、ショックの大きさで足元が揺れるような思いであろう。本来なら、自分の親衛隊であるはずの中央党校の教師に指をさされるような形で批判されるようでは、党の最高指導者のメンツと権威はなきも同然である

 そして、中央党校の2人の教師が同時に立ち上がって党指導部に反乱ののろしを上げたこの事態は、習近平指導部が党内の統制に失敗していることを示していると同時に、共産党が思想・イデオロギーの面においてすでに収拾のつかない混乱状態に陥っていることを如実に物語っている。

 習政権発足当時からささやかれてきた「習近平がラストエンペラーとなる」との予言はひょっとしたら、実現されるのかもしれない

中国の習近平国家主席。“お膝元”からの批判に頭が痛い?=今年7月、北京(AP)

中国の習近平国家主席。“お膝元”からの批判に頭が痛い?=今年7月、北京(AP)



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