【不思議な韓国ツアー】（上）

　「韓国でロングステイ」－。意外な組み合わせだと思った。国内外の長期滞在型余暇の普及を図る一般財団法人「ロングステイ財団」（東京都港区）の呼び掛けで、韓国釜山広域市などの招待を受け、９月２８日から１０月２日、釜山を訪れるツアーに参加した。ツアー中に体験した不思議な出来事とは－。（村島有紀）

■病院が通信社？

　「何、これ！」。帰国から２週間ほどたった頃、韓国のインターネットニュースを読んで、のけぞった。

　「Ｓａｎｋｅｉ新聞の村島有紀記者は『病室も設備も日本に劣らない。高神大病院を訪れても安心だと日本に伝えたい』とした」

　１０月１日、複数の韓国のネットニュース（ｈｔｔｐ：／／ｗｗｗ．ｕｒｉｎｅｗｓ．ｃｏ．ｋｒ／ｓｕｂ＿ｒｅａｄ．ｈｔｍｌ？ｕｉｄ＝１９３７３など）に、発言した覚えのないコメントが掲載されていた。

　９月３０日に釜山市にある高神大学福音病院を見学した際、テレビ局のカメラが回っていたが取材は受けていない。「一体、どうしてこんな記事が出るのか」と、公社やロングステイ財団に問い合わせるが分からない。

　仕方なく韓国人の知人に同席してもらいながら、拙い韓国語で釜山市役所と同病院に電話をすると、病院の広報担当者が独自に記事を作成し、ネットニュース会社に提供したという。

　「削除してほしい」と伝えると、「通訳に問題があった。同意を得ずにネット言論に露出させ、申し訳なかった」と、翻訳サイトで自動翻訳したとみられる日本語のメールが返ってきた。

　しかし、ネットの記事には執筆したとみられる記者の署名もあり、どう見ても病院ではなく、第三者が取材した記事に見える。なぜ同じ記事が異なるメディアに、異なる記者名で掲載されるのだろうか？　

　再度、病院に電話すると、広報担当者は「記事は１０カ所ぐらいのニュースサイトに送った。内容を確認する社もあるし、そのまま載せる社もある。病院には記事を送る権限はあるが、掲載するのも削除するのも報道機関の権限。訂正要請はしたが直らない場合、これ以上、どうしようもない」と返答された。悪気をみじんも感じさせない、実にあっけらかんとした対応だ。

■韓国に財団支部？

　同じ記事には、招待旅行の主要メンバーであるロングステイ財団について間違いだらけの記述もある。

　「ロングステイ財団は１９９０年代に、日本の政府と大企業の共同出資による日本国民保護の非営利団体機関。長期滞在および他国の自国民保護のため、設立された。以後、日本の大企業の支援および提携関係を通じてロングステイ財団は、日本の非営利団体として自国内での認知度はもちろん、有料会員が約２万人余りに達するほどに成長した。ロングステイ韓国支部は昨年の２０１２年、海雲台センタムホテルに設立され、『コビズ』が業務代行を執り行っている」

しかし、ロングステイ財団への取材によると、正しくはこうだ。

　「ロングステイ財団は１９９２年、旅行会社や航空会社などが出資して設立。長期滞在型余暇の需要喚起と、平和で有意義な滞在スタイルを研究、啓発している。通産省認可の公益法人としてスタートしたが、法改正により今年度からは一般財団法人となり、国からの管理監督対象から外れ、営利事業も可能。有料会員（年会費４０００円）は公称５０００人だが、昨年度の会費収入は９９０万円で実数は２３００人程度とみられる。昨年から、釜山市の医療観光会社『コビズ』が、同市で長期滞在したい日本人の相談窓口となる『海外公認サロン』になった。コビズは財団の賛助企業（年会費２４万円）で、財団から業務委託などはしていない」

■不動産投資が目的？

　なぜ、このようなことになるのだろうか？

　病院の広報担当者は、ロングステイ財団に問い合わせることなく、韓国のネット上で情報を探し、自分で同財団の記述を考えたという。

　不可解な気持ちのまま、韓国のネットを調べてみると、「日　ロングステイ財団韓国支部　ロングステイ韓国投資説明会」（昨年１０月）▽「ロングステイ財団韓国支部コビズ『ロングステイテル　ヘウンデ』着工…本格工事開始」（２月）など、ロングステイ財団支部の名称を用いた不動産開発や投資を呼び掛ける情報が次々とヒットした。

　あるページでは、ロングステイ財団設立時の基金計３億円を寄付した２０企業の名前がずらりと並び、１室５７００万ウォンでレジデンス型ホテルの販売がＰＲされている。

　「ロングステイ財団の名前は韓国での不動産開発に利用されたのでは？」。疑念がむくむくとわき上がった