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軍総後勤部の谷俊山副部長の汚職がメディアで暴露され、人々の度肝を抜いた。彼は2006年に汚職で退職した(実際には逮捕:筆者)海軍の王守業副司令官と似ている。彼らは共に総後勤部傘下のインフラ建設住宅部の部長を歴任したのだ。「家を建てる」ことで高官まで上り詰めたのだから、どれだけの謝礼を受け取り、どれだけ送ったのか。「官職売買」は地方幹部だけでなく軍でもあったことを人々に知らしめたのだ。
私たちは谷俊山事件を厳格に扱うだけでなく、捜査結果を社会に広く知らしめることを求めたい。何が起きているかはっきりさせるよう軍内部の捜査と世論が連携できるようにすることだ。これにより世論の監督と圧力が形成される。軍の束縛を憂慮する必要はなく、それどころか軍建設強化に社会から推進力を与えるだろう。
民衆の支持を集め、自分たちの解放軍を熱愛する状況は谷俊山事件で変わることはない。人々にとって汚職が社会全体を腐食させ軍に汚染が及ぶのは意外ではない。人々は軍の汚職摘発の決心が地方政府よりもっと断固としており、この度の内部掃除で清潔になることを期待している。「8項規定」(倹約令とも称される:筆者)を実践する上で解放軍はその最前列を走る。「禁酒令」と「国産車」(外国高級車禁止:筆者)導入措置は、政府・党中央と歩調を合わせるものだ。
時代は変わり、谷俊山事件は公開と監督の重要性を証明した。かつて軍は秘密保全の必要もあり世論の範疇外にあった。しかし過度の秘密保全はもろ刃のやいばでもある。大衆が部隊や軍人の振舞を監督し、それを推進することは軍との距離を縮める機会にもなる。一定の開放も現代の国防には必要であり、平和な時期に国民に対して国防という分野も理解してもらい支持を得ることにつながるのだ。
谷俊山の汚職発覚は軍に大激震をもたらした。政権交代時に起きた薄煕来事件と期を同じくして発覚した軍高官の汚職であり、これまで摘発された軍高官の中で王守業と並んで最高位の幹部だ。真偽は不明だが、谷将軍は薄煕来の妻、谷開来の親戚という噂もある。
軍用地や宿舎、インフラを管理する部門の長を歴任した将軍が二人続けて摘発されたことは、土地取引が中国における汚職の根源にあり、特に軍事機密でもある軍用地は軍が持つ最大の権益であることを暴露した。記事でも紹介したように谷将軍が末端から出世する過程で土地取引の権利を一手に握ってそこから利益を得てそうした金銭を賄賂として贈り出世してきたのである。
谷俊山の将軍の汚職事件は香港では1年以上前から報道されており、中国国内でも知る人ぞ知る事件として薄煕来事件と並行して、谷のバックに控えるとされる徐才厚中央軍事委員会前副主席の去就も注目されてきた。
『財新』誌のネット版が1月14日に谷俊山事件を特集として記事5本と記者手記、編集者の編集手記も掲載して、掲載差し止めになっていた悔しい胸の内を吐露した。興味深いのは党規律監督官庁である中央規律委員会の全体会議が1月13日から15日まで開かれており、会議終了に合わせるかのようにこの記事が掲載された点だ。まして『財新』誌のやり手編集長の胡舒立女史は規律委員会トップの王岐山書記(指導部序列6位)に近い間柄とされる。そしてこの記事を追うように『環球時報』が社説で谷俊山事件に言及した。いつもは対日で煽るような記事ばかりを掲載する『環球時報』も捜査情報の開示を求め骨のあるところを見せたのである。
しかし、谷俊山事件が報道されたとはいえ、裁判にかけられたというような報道はなく、捜査も妨害にあっているという話もある。だから事件の公開にさえ2年もかかったのだ。そしてこの事件はまだ解決を見ていないし、うやむやになる可能性もある。だから『環球時報』は結果の公表を求めたのだ。
軍に激震をもたらした谷の汚職事件だが、この事件は単に汚職や腐敗の問題、そしてそれは習近平の軍における指揮命令、統制に影響するだけではない。「3中全会」でも提起されたように軍の機構改革は俎上に上っており、これには兵員削減、機構の整理整頓も含まれる。巨大な既得権益機構と化した軍をより機能的な近代的軍にするということは軍の根本的既得権益に対してもメスを入れることを意味する。
もともと生産経営と称してビジネスも行ってきた軍は1998年にビジネス禁止を打ち出し、表面上、ビジネスができないことになっていたはずだ。密輸などやりたい放題だった地方の軍にメスを入れる措置だったが、うまくいかなかったことを谷事件は暴露したのだ。勇ましい掛け声ばかりが聞こえてくるが、軍は汚職や機構改革という重大な挑戦に直面し、不安定になっている側面も理解しておく必要がある。
そして最後にもう一点。解放軍が汚職にまみれ、ナヨナヨした軍隊だと言われたからといってそうではないことを証明するために日本が持ち出され、「戦って勝てる」と示威的行動に出られたのではたまったものではない