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事故直後に韓国マスコミがやり玉にあげたのは、海軍の最新鋭の救助艦「統営(トンヨン)艦」(3500トン)。故障や座礁した艦艇を救助したり、沈没した艦艇を探索したり、引き揚げたりするため約1600億ウォン(約160億円)をかけて作った最新艦艇だ。
もともとは2010年3月の韓国海軍哨戒艦「天安」の爆沈事故で、旧式の海難救助船があまり役に立たなかったことなどを踏まえ、同年10月に建造を開始。12年9月に進水した。
進水当初、韓国では「無人水中探索機(ROV)や海底の物体を探知できるサイドスキャンソナーを装備」「艦首と艦尾に自動船位保持装置があり、その場で360度の旋回が可能」「韓国国内技術で生産」(中央日報など)と自画自賛。特にダイバーが水深90メートルで救助任務にあたる支援体制と最大8人が入れる減圧装備は、軍の主張通り機能すれば、今回のセウォル号救助の切り札になれる存在だった。
ところが、実際は救助どころか事故海域に姿さえ現さず、東亜日報など現地マスコミが「(進水後)19カ月間、無用の長物」などと強烈に批判する事態に。東亜日報(電子版)によると、同救助艦は音波探知機の故障や無人水中ロボットの性能不備などで軍への配備が3度も延期され、結局、今回の事故にも投入できなかったというのだ。
統営艦の海軍への引き渡しと配備の予定は昨年10月。セウォル号事故の背後には「いい加減で急かす文化」があったと指摘する現地マスコミは多いが、「統営艦」の場合は急ぐどころか、さっぱり間に合わなかった。
一方、韓国のネットサイトでは「まだ完成していないとしても、とにかく現場へ(統営艦を)出して、救助活動をやってみなけりゃわからないだろう」などといった「とにかく出せ」との批判も多数あった。失敗するとは限らないから、とりあえずやってみよう-というわけだが、そうやって積荷を増やし続けた結果起きたのが今回の沈没事故だったはずだが、微塵も反省はないようだ。
米軍、そして自国の軍まで「蚊帳の外」セクショナリズム
事故では韓国側が日本の救助協力を断ったことが伝えられたが、他にも人命をおろそかにするかのような“セクショナリズム”の実態が次第に明らかになっている。
事故当時、現場から約190キロの海域には米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」に参加していた米軍の強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」が航行中で、ヘリコプター2機が現場に急行した。しかし、韓国側はこの米側の救助活動も断ったという。
また韓国KBSテレビによると、韓国海軍の海難救助隊(SSU)や同海軍特殊部隊(UDT)のダイバーが現場に到着した際、韓国海洋警察がこれら海軍部隊を締めだし、先に民間業者のダイバーを潜らせていた。しかもこの民間業者はセウォル号の運営会社、清海鎮(チョンヘジン)海運と契約を結んでいたという“いわく付き”の業者。ともあれ軍と警察の縦割り行政の結果、現場での救助活動の統制ができていなかったことが判明した。
高速艇運転手が「非番」
この韓国海洋警察とは、日本での海上保安庁にあたる組織。つまり軍より早く救難活動にあたって当然なのだが、セウォル号事故時には肝心要の部隊の現場到着が大幅に遅れていたことが大問題となっている。
現地マスコミが報じたところによると、非常待機潜水要員(122救助隊)は全羅南道木浦に基地があり、30ノットで走る高速艇11隻を持っていた。この高速艇で事故海域まで1時間20分で到着できたはずだった。
ところが事故当日は「高速艇を運転できる乗務員が非番だった」(中央日報電子版)。緊急事態に備えた交代要員もおらず、さらに潜水要員でも運転できる小型高速ボートは搭載燃料が少ないため、現場へたどりつけない可能性があったという。
緊急時なのだから、灯油を運ぶようなポリタンクでも積んでいけばいいと思うが、結局、潜水要員8人が選んだ選択肢は「車に乗って1時間以上かかる別の港まで行き、運転手のいる別の船に乗り換える」(同)ことだった。
確かにダイバーが長時間潜るには減圧設備などが必要だが、連絡体制が整っていれば別の港から大型船を出して現場で合流すれば済む。
結局、現場に到着したのは一報から2時間32分後。セウォル号は船体がほぼ沈み、船首だけが水面に出ている状態で、「潜水要員は1人も助けることができなかった」(中央日報電子版)。ちなみに運転手がちゃんといた高速艇は4隻あったが、この4隻は遠海で違法操業している中国漁船の取り締まりにあたっていたという。
事故で韓国、そして日本まで批判する中国の無節操
韓国現地マスコミによると、その中国は、セウォル号の事故対応に韓国海洋警察が手いっぱいなのをいいことに、延坪島(ヨンピョンド)の沖合を占領しているという。聯合ニュースは「北方境界線(NLL)以北に居座り、霧の多い日や夜間は境界線を南へ超えて来てわが方の魚資源を独占している」と報じた。
一方、中国マスコミは、他国から批判的な自国の行動は相変わらず棚にあげて韓国批判を展開。中国の新京報は4月28日付で「韓国の専門家から『セウォル号の悲劇は(中略)“いい加減な文化”を暴き出した』との指摘が出ている」とし、「船長などの数人の責任者だけを罰するだけでなく、すべての人が“いい加減な文化”を深く反省すべきだ」とのコメントを報じた。
また人民網日本語版は「韓国の沈没した旅客船は日本製 メーカーは事故調査に参加せず」などと的外れな日本批判を展開。
セウォル号の沈没事故は確かに多くの信じられないミスが重なった。が、事故でめちゃめちゃに壊れた新幹線を遺体ごと高架下に埋めて証拠隠滅しようとした国が批判できることなど、あるのだろうか。