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「肛門の外に寄生虫が…」
2月26日に韓国の朝鮮日報(電子版)が『13歳少年から3.5メートルの寄生虫発見』というタイトルで配信したニュースが話題を集めている。
記事によると、《漢陽大学病院小児少年科のキム・ヨンス教授は25日、「肛門の外に寄生虫が出てきているような気がする」といって来院した少年から、広節裂頭条虫を除去した」と発表した》とした上で、《医療陣は、この少年が普段から刺し身を好んで食べていたため、寄生虫に感染したとの見方を示した》と説明している。
広節裂頭条虫は、サナダムシ(条虫)の一種。サケやマスなどの魚を介し、食べた人間の小腸に寄生するという。例えば、サケの切り身は日本人の食卓にもなじみ深いが、サケには寄生虫が多く潜んでいるため、冷凍処理で完全に死滅させてから調理して食べるのが一般的である
寄生虫に詳しい関西系私立大学の専門家は「サケは冷凍処理してから食べる-ということは海外でも知られている。韓国でも生で食べる魚はヒラメやクロダイなどで、(天然の)サケは食べなかったはず。しかし、最近の“生食”ブームなどで安易に食べてしまったのかも…」と推測する。
広節裂頭条虫、日本海裂頭条虫などサナダムシの症状は、他の寄生虫に比べると比較的軽微で、下痢や腹痛、無症状のことも少なくないという。前出の専門家は「人間の腸の長さや感染してからの時間で(サナダムシの)成虫の長さは異なる。ただ、3.5メートルは珍しくなく、8~10メートルのサナダムシも存在する」と話す。
とはいうものの、13歳の少年が「肛門の外に寄生虫が出てきている…」と病院にやってきたという朝鮮日報の記事は映画「エイリアン」も顔負けの衝撃度だ。
記事の中にも《キム教授は「寄生虫を除去する過程で切れたため、実際にはもっと長いと考えられる。韓国でこれほど長い寄生虫が子どもの体から発見された前例はない」と語った》と記述されており、韓国国民の中にも驚いた人は少なくないだろう。
脳に寄生虫でめまいと視力低下
一方、朝鮮日報の記事が配信される3日前の2月23日、中国の情報サイト「Record China」にも中国紙の貴陽晩報が報じたとして驚愕の寄生虫ニュースが掲載された。
記事では「ブタの生き血が大好物」と話している青年がめまいと視力低下に悩み、中国貴州省貴陽市の病院を訪れ、頭部をCT(コンピューター断層撮影装置)スキャンしたところ大脳に19匹の寄生虫が見つかったと紹介している。
同紙によると、《貴州省のある地方では、ブタの生き血を「甜湯血」と呼び、現地の人々はこれを好んで食すという。この青年も「ブタの生き血が好物だ」と話している》という。
寄生虫については《診断した外来担当の王医師は神経嚢虫症と診断した。神経嚢虫症は、有鉤条虫に寄生されたブタの肉や血を、完全に火を通さずに摂取することで、人に感染する》と説明。その上で、記事はこう続く。
《発見が遅れると脳組織や大脳中枢が侵され、頭痛や脱力、運動機能障害などの症状が出る。重症の場合はてんかんや失明を引き起こし、死に至る危険性もある》
生食ブームが引き起こす悲劇
韓国、中国の両件とも天然のサケを食べ、豚の血を飲むという「生食」が寄生虫発生の原因とみられ、別の専門家は「食品の安全衛生が向上している日本では考えられないケースだ」と話す。ただ、日本で寄生虫関連の食中毒件数が激減しているかというと、実はそうではない。
厚生労働省によると、食中毒の届け出総数(事件数)は平成24年が1105件で、そのうち寄生虫関連は107件。これに対し、25年(速報ベース)は931件のうち110件。直近の2年間だけを比較すると件数は横ばいだが、食中毒全体に占める比率は増加傾向にある。
昨年1月には食品衛生法を改正し、「クドア」「サルコシスティス」「アニサキス」および「その他の寄生虫」という寄生虫関連の項目を追加。これは食中毒の原因追及を整備するとともに、「アニサキスなどで食中毒になる人が増加していることに対応した」(関係者)とみられる。
表面化しない寄生虫の感染
大阪府東大阪市では、ホームページ(HP)に「寄生虫感染症にご注意!」という寄生虫に関する詳細な情報を発信。ここでは寄生虫の「特徴」「危惧(きぐ)される食品」「主な症状」が掲載されているほか、感染を予防する5つのポイントなどが紹介されている。
寄生虫による食中毒も軽微ならば、ただの下痢や腹痛と判断し、表面化しないケースも少なくない。市の担当者も「日本で寄生虫関連の食中毒は、厚労省の数字以上に多いはずだ」と強調する。
前出の関西の私立大学の専門家は「とくに海外では店の人が『美味しいよ』と薦めても、生食だけは絶対に避けたほうがよい」と警告する。