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「中国では政府、軍、司法当局、医療機関、そしてブローカーが、組織ぐるみで富裕層や外国人相手の臓器売買ビジネスを行なってきた。不当に投獄された数万人の『法輪功』学習者(※注)も『ドナー』として利用されている。有力な証言によれば、心臓麻痺を誘発する薬物注射を打たれ、生きたまま肝臓や腎臓を摘出される者もいた」(キルガー氏)
中国政府はこの調査内容を全面否定すると同時に、国際社会の批判を封じるべく矢継ぎ早に対策を講じた。2006年には、商業目的の死体売買を禁じる「死体処理管理規定」を公布。2007年にはドナーの同意なき臓器摘出を禁じた「人体器官移植条例」を施行した。これにより、生体移植は原則として血縁者間に限られ、外国人への移植も事実上、禁止された。また昨年11月には「14年中の死刑囚ドナーの臓器移植停止」も表明している。
中国における臓器不足が深刻化すると闇市場が広がった。
「ここ数年はネットを利用した臓器売買が盛んで、生活困窮者が臓器を売る事例が増えている。主流は需要の多い腎臓の生体移植だ。医療機関と患者を仲介するブローカーが、臓器売却希望者をアジトに軟禁することもある」(北京在住ジャーナリスト)
ブローカーは、3万元(約52万円)程度で仕入れた腎臓を、その数倍から10倍の値段で売りさばく。中国での移植費用の相場は、角膜=300万円、腎臓=650万円、肝臓・肺・心臓=1300万~1500万円といわれている。ブローカーは患者とドナー間の「親族証明」や戸籍などの公的書類を巧みに偽造し、連携する医療機関で手術を行なうため摘発は困難だ。
2012年5月、浙江省杭州市で売腎を希望する20代の男性30人が警察に保護された。彼らはマンションの1室で集団生活を送り、適合患者が現われるのを待っていた。動機は借金の返済などさまざまだが、「家族に少しでも良い暮らしをしてもらうため」という農村出身の若者もいた。腎臓の対価は3万5000元(約60万円)だった。わずかな金欲しさに臓器を売る若者は後を絶たず、「iPad2」購入のため腎臓を売った17歳の少年は、2万元(約35万円)と引き換えに重い腎不全を患った。
※注:法輪功は「宗教ではない」との立場からメンバーを「学習者」と呼んでいる。