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購入から5年以内の新しい車の盗難が増加傾向にある。防犯のための電子キーの信号をコンピューターで解除するなど、最新装置を突破して盗む手口は年々、巧妙化。自宅の車庫の車も安心はできない。家庭でできる防衛策は、タイヤガードの利用など、“ローテク”な防犯器具との組み合わせが効果的だという。(牛田久美)
解体し部品に→海外へ
警察庁など4省庁19団体で作る「自動車盗難等の防止に関する官民合同プロジェクトチーム」は、盗難防止の日(10月7日)にちなんで、「本気で守ろう! 大事な愛車」と記したチラシを全国で配った。
盗まれた車は海外に運ばれることが多い。ただ、税関と警察庁が盗難車の輸出を差し止める仕組みを整えると、窃盗団は国内の解体施設で部品にばらして運ぶなど、イタチごっこが続いているのが実情だ。
民間側の事務局、日本損害保険協会の実態調査では、初年度登録から5年以内の車の盗難は、電子式施錠装置「イモビライザー」などが普及していったん減ったが、平成25年の24%を底に再び上昇。最新の28年は56%で半数を超えた。
窃盗団、3分かかると焦る
盗まれる車種は一般車から高級車まで幅広い。乗用車だけでなく重機も狙われやすい。
約17年間にわたって車両盗難の動向を見てきた損保協の鈴木毅常務理事(62)は、最新の電子機器に加えて、「原点に戻って、タイヤやハンドルを固定する防犯器具を活用しよう」と呼びかける。
タイヤガードやハンドルロックなどは“ローテク”だが「盗みにくいと威圧感を与える。窃盗団は3分以上手間取ると焦り出すともいわれ、あきらめさせるのに効果的」という。
防犯器具販売業「錠商」(千葉市稲毛区)のタイヤガードは、タイヤが動かないように固定する。上下2つの装置でタイヤを囲むように覆い、中心のホイールのナットを隠すのでタイヤを外すこともできない。
開発した同社代表、清水治三郎さん(68)の本業は、金庫の鍵紛失などに対応して現場へ駆けつける、合法の“金庫破り”。依頼主は一般企業のほかに官公庁、米軍、研究機関などさまざまだ。
窃盗犯がこじ開けようとしてあきらめた、壊れた金庫を開く依頼も多い。「どんな心理や手口で犯行に及ぶのか警察官といっしょに見てきた。自動車盗は被害額が大きく、裏をかいて防ぎたい」と3年半をかけて開発した。
タイヤガードは16年の販売開始以来、2千台超を出荷している。清水さんは「丸いタイヤを固定するのは難しかったが、窃盗団は外せず、運転者は装着しやすい防犯具になった。簡単に盗めないと思わせる視覚効果も大きい」と自信を見せる。
ハンドルロックも、ハンドル全体を覆うタイプが注目されている。米国製「ラップ」の輸入販売会社「LOUPLE」代表、大沢光明さん(32)は「ハンドル中央のパッド部分も隠すので、ハンドルごと盗まれたり、エアバッグの盗難も防ぐ」と説明する。
警察庁の統計によると、28年の自動車盗難は全国で1万1655件。そのうち、ドアを施錠したのに盗まれたケースは7割(8530件)を占めた。施錠だけでは、窃盗団の犯行を抑止できない。
鈴木さんは「盗難の手口は日々進化している。イモビライザー装着車を選び、防犯器具も取り付けるなど、複合的に盗難対策をしよう」と話している