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日本の技術と資金協力で建設されていたジャカルタ都市高速鉄道(MRT)が、3月26日に開業する運びとなった。急速な都市化と経済成長がもたらした交通渋滞は、市民生活に深刻な影響を与えており、公共交通網の整備が喫緊の課題だ。渋滞緩和の切り札に、行政も市民も大きな期待を寄せている。
◆通勤渋滞深刻 莫大な社会的損失
ジャカルタ周辺都市圏の人口は3000万人以上だが、公共交通機関の整備が遅れており常に渋滞が起きている。シンガポールのチャンネル・ニュース・アジア(CNA)によれば、自動車の数は毎年8.1%増えているのに、道路の建設はほとんど進んでいない。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)の取材に答えた郊外に住む女性は、多くの住人と同様に、朝の渋滞を避けるため毎朝5時に家を出る。仕事を終えて職場を出るのが午後5時を過ぎれば、家まで2、3時間かかることもしばしばで、ひどいときには帰宅が9時を過ぎることもあると話している。
ジャカルタ周辺都市圏では、交通渋滞による損失が年間6.5兆ルピア(約509億円)と推定されている。損失の多くは収入の半分近くを交通費に当てるとされる通勤者が被っている。都市アナリストのヤヤット・スピリアトナ氏によれば、ジャカルタ中心街の生活費の高さから、ミドルクラスや低所得世帯が郊外に追いやられ、長時間通勤を余儀なくされているという(CNA)。
実はMRTの建設計画は26年前からあったが、土地買収や建設費用の問題で、ずっと進んでいなかった。市が3兆ルピア(約235億円)の補助金を毎年投入しなければならなくなるという懸念も実現を阻んでいたという。これに対し、渋滞による年間6.5兆ルピアの損失に比べればなんでもないと考えたのが、当時ジャカルタ市長だったジョコ・ウィドド大統領で、2013年にその英断で建設がようやく実現した。
自然災害も想定 日本の技術が生きる
今回開業するのは、幹線道路沿いに作られた南北線のフェーズ1区間。ジャカルタ周辺都市圏南部のルバック・ブルスからダウンタウンのホテル・インドネシアまでの全長15.7キロを結ぶ路線だ。ルバック・ブルスからジャカルタのオフィス街までの通勤に現在90分かかるが、MRT利用で30分に短縮される。
営業時間は午前5時から午前0時まで。通常は10分間隔だが、ラッシュアワーは5分間隔で運行される。料金は距離によって変わるが、SCMPによれば、最初の10キロが8500ルピア(約66円)。始発駅から終点まで乗れば1万2800ルピア(約100円)。運営会社では、1日13万人の利用を見込んでいる。
フェーズ1の工費は16兆ルピア(約1300億円)で、国際協力機構(JICA)が円借款による資金協力を行った。車輌は日本車輌が製造しており、優先座席や車いす、ベビーカー用のスペースも確保されている。運行速度は地下部分で100キロ、高架部分では80キロとなる。ロイターによれば、ジャカルタMRTは、地震や洪水の被害を想定し、日本の基準を採用したそうだ。ジャカルタ都市高速鉄道公社のシルビア・ハリム氏によれば、トンネルや高架橋はマグニチュード8または同程度の災害に耐えることができる設計になっており、日本の技術が生かされている。
試乗も好評 市民の期待高まる