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時代を見通す日本の基礎情報

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絶頂期AV女優1本1000万円…村西監督いま“爆欲”中国を骨抜き中! 

最近、世界で物議を醸しているニュースがあります。8月11日付米CNNテレビや米誌タイム(いずれも電子版)などが一斉に報じましたが、世界的な人権団体で知られるアムネスティ・インターナショナル(本部・ロンドン)が8月7日~11日までアイルランドのダブリンで開いた主要方針決定フォーラムで、性産業のうち、成人の性的労働や、売春といった成人同士の間での合意に基づく性の売買は犯罪扱いせずに合法化するとももに、そうした職業に従事する“セックス・ワーカー(性労働者)”の人権を守るべきだとの方針を打ち出したのです。

 アムネスティのサリル・シェティ事務局長は声明で「性労働者は世界で最も疎外されている集団の一つであり、常に差別や暴力、レイプ、人身売買、虐待、恐喝、嫌がらせ、恣意(しい)的な逮捕などの危険にさらされている」と指摘。性労働者の人権保護のための法整備を各国政府に訴えかけていく考えを示しました。

 こうしたアムネスティの動きに対し「売春を人権の範疇(はんちゅう)に含めて、認めることなど断じて許さん」との意見が噴出。元米大統領のジミー・カーター氏(90)が、この方針決定に反対するとの書簡をアムネスティの代表者宛に送ったほか、メリル・ストリープさん(66)やアン・ハサウェイさん(32)らハリウッド女優らも反対の声を上げています。

 このように、性産業のあり方が世界的に論議となる中、日本では、日本の性産業の代表であるAV(アダルトビデオ)業界を、ひとつの産業としてとらえ、日本経済新聞的視点で解説したユニークな1冊が話題を集めています。「AVビジネスの衝撃」(中村淳彦著、小学館新書、780円+税 http://www.shogakukan.co.jp/books/09825231 )です。

 タイトルだけで眉をひそめる方もおられるかとは思いますが、この本、エロ要素はゼロ。AV業界の歩みを自動車や鉄鋼、不動産、医薬品業界といった一般産業の内幕を論じるように、豊富なデータを盛り込みながら客観的に淡々と論じており、8月5日の発売から3日で1万部の大増刷が決まるなど、本屋さんで手にとる方が増えています。というわけで今週の本コラムは、この本についてご紹介いたします。

知名度も秘密も多い業界…「年商100億円。金が勝手に…」まさに『AVビジネスの衝撃』

 まずこの本ではAV業界の始まりから解説が始まるのですが、この業界、まだ誕生して34年なのだそうで、一説では4000億円~5000億円と試算される市場規模も実は、裏ビデオや海賊版市場を除いた市場規模は、せいぜい500億円程度で知名度のわりには小さな世界なのだそうです


そして、そんなAV業界は、ビデオデッキの一般家庭への普及が始まった1978(昭和53)年から3年後、81年に初の作品が発売され、スタートしたといいますが、当初は死ぬほど儲かる超有望産業だったというお話が第1章「儲かりまくった狂乱の日々」で紹介されています

 そんな当時の日々を、伝説的なAV監督、村西とおる氏(66)は、自身が88年に設立したAVメーカー「ダイヤモンド映像」が「最盛期は年商100億円。世の中の金が勝手にこっちに向かって走ってくるみたいな感じでございました」と振り返ります。

 本書によると、70年代にビニ本、裏本を制作販売する北大神田(ほくだいかんだ)書店グループを創業したものの、1983年に猥褻(わいせつ)図画販売目的所持容疑で全国指名手配、逮捕された村西監督は、執行猶予付きの有罪判決を受けて釈放後、アダルトビデオに進出したわけですが「違法な商売だったので売上を取り上げられて、無一文で出所してクリスタル映像の社長に拾われた」後、半年間の拘置を経て「これからは写真じゃなく、映像の時代が来るだろうってことでAV監督になったわけですよ」と本書で明かします。

 そして「私は前科者になっちゃったし、やる仕事はなにもなかったからもう挑戦するしかありません」と、この仕事に猪突猛進(ちょとつもうしん)するわけです。

 ちなみに監督がAV監督デビューしたのは84年ですが、本書によると、ビデオデッキの普及率はこの年、18・7%。これが5年後の89(平成元)年には63・7%に。さらに、一般社団法人日本映像ソフト協会のJVAレンタルシステム加盟店は1984年に514店だったものが激増し、1990年には1万3529店舗に。

 つまり、ビデオデッキの爆発的普及と、それを受けたレンタルビデオ店の急増を背景に、AV業界も爆発的な成長を遂げるのです。

 なので、当初はどちらもまだ普及率が低く、苦戦が続きますが、村西監督は「ナイスですね~!」を連発する特異なキャラと、86年10月、主演女優の黒木香さんが絶頂に達するとホラ貝を吹くというユニークな演出で話題となった「SMぽいの好き 黒木香」を爆発ヒットさせたのを機に、ビジネスを軌道に乗せ、88年9月に前述のダイヤモンド映像を設立。松坂季実子さんや桜木ルイさんら人気女優を次々輩出。

「撮影1本3000万円」儲かりすぎて「都民税を滞納1.6億円」…

問屋からのバックオーダーも1日20本程度で、当時、ビデオは1本9000円だったので売り上げは18万円。これが最大で1日1万本、売り上げにして9000万円(繰り返しですが、1日ですよ!!)と、狂ったような状況に。

 ダイヤモンド映像は年商100億円、市場占有率35%と急拡大。本書で村西監督は「女優に払うギャラは1本500万円とか600万円とかですね。1990年にデビューした卑弥呼(ひみこ)には最高額で1本1000万円というゴージャスすぎるギャラを払いました」「1本撮れば3000万円は平均して儲かりましたからね、あの頃は。自分の収入がどれくらいあったのかは詳しく覚えてないけど、後々1億6000万円の都民税を滞納したとして都税事務所から追いかけられましたから」と振り返ります。

データが示す、想像を絶する世界…最盛期に数百社、女優ギャラは今なんと

 もはや想像を絶する世界ですね。さらに時はバブル時代。ややこしい筋の出資者なども入り乱れ、あり得ない活況が続くのです。しかし、詳しくは本書を読んでいただければと思いますが、この絶頂期が続くのは、レンタルビデオ店が激増した80年代後半から90年代初頭までの数年間で、その後、直接ユーザーにAVを販売するセルAVが膨張するなどした1998~2002年あたりだというのです。

 そして今はどうか。最盛期である2000年前後、軽く数百社が存在していたAVメーカーは十数年間を費やして倒産、消滅、買収、グループ化などによる再編で3社に集約され、これら寡占化されたグループで市場の7~8割を占有している状況なのだそうです。

 一般的な女優のギャラも本書によれば、週に1度、月間4本の作品に出演したとして、全盛期の92年と今年を比べると、何と7割減の16万円也。無論、説明するまでもないですが、こんなことになったのは急速に進むデジタル化が最大の原因です。

本書で、ある関係者はこう嘆きます。「世の中のデジタル化。これに尽きる。音楽と全く一緒でVHSのときはコピーしたら画質も劣化するし、コピーだと自分の欲求が満たされなかった。でもデジタルになったことでコピーすればよくて、劣化もしないしね」「インターネットが普及してファイル共有サイトが全盛になっちゃった。もう、どうにもならない。無理。ひとたまりもない」

 そんなこんなで本書は、現在のAV産業について「一般的な若者たちには見向きもされず、一部のマニアと、AV全盛期から残る一部の中高年のための閉塞(へいそく)した産業になってしまった」と断言したうえで、関係者たちは将来も暗澹(あんたん)としていると口をそろえます。ちなみに前述の関係者もこう話します。

 「どう考えても、よくなりようがない。女の裸の価値が下がっているし、近い将来にDVD、ブルーレイっていう記録媒体もなくなるでしょ。ほとんどがストリーミング、ネットで見るようになる…今までDVDで4時間だとか8時間とかだったけど、これからは5分くらいのコンテンツになる…」

 なるほど。確かにおっしゃる通りかもしれません。しかし、本書の最も面白いところは、一見、このお先真っ暗な業界の今後に“実は、意外な活路があるんですよ”と説明する終盤なのです。

 ここで業界の革新者、村西監督はこう言い放ちます。「やはり、これからのAV業界は、中国を見据えたビジネスでしょう」「私は2002年あたりから、AV女優を連れて中国に頻繁に行っているんですね。最初の頃はイベントをやると、現地の公安警察150人ぐらい集まって大騒ぎになりました。逮捕されて連れていかれるんじゃないか、みたいな雰囲気…」

 監督は、中国でのイベントに関しては、しかるべき所から許可をもらい「ちゃんとした国際展示場の中でイベントをやっていた」にも関わらずこの騒ぎ。「尋常でない熱狂で警察沙汰になったってことなんです…3回目のイベントでは開催前に公安の偉い人が私のところに来て、“お前が責任者か?”と話しかけてくるわけです。“私です”と返答しました。すると彼は“3回目は何時からだ?”と聞いてくるわけですよ。なんのことはない、“俺に一番いい席を取れ”っていう話だった(笑)」

こうした中国での大フィーバーぶりについて本書は、中国ではわいせつ物の製作、販売、流布が禁止されるなど、わいせつな商品やサービスに関し、厳しい法律や条令があることに加え、中国人女性にはない日本人女性ならではの“おもてなしの心”が、中国の男子をメロメロにさせていると分析します。

 さらに関心したのが村西監督のこのくだりです。「私は北京で中国を代表する3大映画会社の一つの社長と会いました。いろいろ話をしたところ、“もうあんた、ハリウッドなんて目じゃないよ。もちろん日本もそうだけど、中国はもうスペクタクルCGでも世界1だ!”…」

 そう豪語するこの社長が村西監督にこう言うのです。「“俺たちは、ハリウッドは目じゃないけど、日本のAVだけは50年経ってもできないだろう”」

 さすが村西監督。目の付けどころが違うのでございます、と思わず監督口調になってしまいましたが、ここまで本コラムを読まれた方ならお分かりかと思います。本書が紹介するAV業界の苦悩は、コンテンツビジネスを手がけるメディア業界はもちろん、少子高齢化で国内市場がどんどん縮小し、海外、とりわけ中国やタイ、ベトナムなど、成長著しい東南アジアに活路を見いだそうとする日本の産業界のそれと全く同じなのです

そういった目で本書を読むと、日本の産業界が抱える苦悩や今後の展望がはっきり見えてくるのです。しかし将来“ハリウッドも勝てない”という日本のAVが世界を席けんし過ぎて、アムネスティあたりに目を付けられるのも困りものですけどね…。(岡田敏一)

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「撮影1本3000万円」儲かりすぎて「都民税を滞納1.6億円」…

問屋からのバックオーダーも1日20本程度で、当時、ビデオは1本9000円だったので売り上げは18万円。これが最大で1日1万本、売り上げにして9000万円(繰り返しですが、1日ですよ!!)と、狂ったような状況に。

 ダイヤモンド映像は年商100億円、市場占有率35%と急拡大。本書で村西監督は「女優に払うギャラは1本500万円とか600万円とかですね。1990年にデビューした卑弥呼(ひみこ)には最高額で1本1000万円というゴージャスすぎるギャラを払いました」「1本撮れば3000万円は平均して儲かりましたからね、あの頃は。自分の収入がどれくらいあったのかは詳しく覚えてないけど、後々1億6000万円の都民税を滞納したとして都税事務所から追いかけられましたから」と振り返ります。

データが示す、想像を絶する世界…最盛期に数百社、女優ギャラは今なんと

 もはや想像を絶する世界ですね。さらに時はバブル時代。ややこしい筋の出資者なども入り乱れ、あり得ない活況が続くのです。しかし、詳しくは本書を読んでいただければと思いますが、この絶頂期が続くのは、レンタルビデオ店が激増した80年代後半から90年代初頭までの数年間で、その後、直接ユーザーにAVを販売するセルAVが膨張するなどした1998~2002年あたりだというのです。

 そして今はどうか。最盛期である2000年前後、軽く数百社が存在していたAVメーカーは十数年間を費やして倒産、消滅、買収、グループ化などによる再編で3社に集約され、これら寡占化されたグループで市場の7~8割を占有している状況なのだそうです。

 一般的な女優のギャラも本書によれば、週に1度、月間4本の作品に出演したとして、全盛期の92年と今年を比べると、何と7割減の16万円也。無論、説明するまでもないですが、こんなことになったのは急速に進むデジタル化が最大の原因です。

本書で、ある関係者はこう嘆きます。「世の中のデジタル化。これに尽きる。音楽と全く一緒でVHSのときはコピーしたら画質も劣化するし、コピーだと自分の欲求が満たされなかった。でもデジタルになったことでコピーすればよくて、劣化もしないしね」「インターネットが普及してファイル共有サイトが全盛になっちゃった。もう、どうにもならない。無理。ひとたまりもない」

 そんなこんなで本書は、現在のAV産業について「一般的な若者たちには見向きもされず、一部のマニアと、AV全盛期から残る一部の中高年のための閉塞(へいそく)した産業になってしまった」と断言したうえで、関係者たちは将来も暗澹(あんたん)としていると口をそろえます。ちなみに前述の関係者もこう話します。

 「どう考えても、よくなりようがない。女の裸の価値が下がっているし、近い将来にDVD、ブルーレイっていう記録媒体もなくなるでしょ。ほとんどがストリーミング、ネットで見るようになる…今までDVDで4時間だとか8時間とかだったけど、これからは5分くらいのコンテンツになる…」

 なるほど。確かにおっしゃる通りかもしれません。しかし、本書の最も面白いところは、一見、このお先真っ暗な業界の今後に“実は、意外な活路があるんですよ”と説明する終盤なのです。

 ここで業界の革新者、村西監督はこう言い放ちます。「やはり、これからのAV業界は、中国を見据えたビジネスでしょう」「私は2002年あたりから、AV女優を連れて中国に頻繁に行っているんですね。最初の頃はイベントをやると、現地の公安警察150人ぐらい集まって大騒ぎになりました。逮捕されて連れていかれるんじゃないか、みたいな雰囲気…」

 監督は、中国でのイベントに関しては、しかるべき所から許可をもらい「ちゃんとした国際展示場の中でイベントをやっていた」にも関わらずこの騒ぎ。「尋常でない熱狂で警察沙汰になったってことなんです…3回目のイベントでは開催前に公安の偉い人が私のところに来て、“お前が責任者か?”と話しかけてくるわけです。“私です”と返答しました。すると彼は“3回目は何時からだ?”と聞いてくるわけですよ。なんのことはない、“俺に一番いい席を取れ”っていう話だった(笑)」

こうした中国での大フィーバーぶりについて本書は、中国ではわいせつ物の製作、販売、流布が禁止されるなど、わいせつな商品やサービスに関し、厳しい法律や条令があることに加え、中国人女性にはない日本人女性ならではの“おもてなしの心”が、中国の男子をメロメロにさせていると分析します。

 さらに関心したのが村西監督のこのくだりです。「私は北京で中国を代表する3大映画会社の一つの社長と会いました。いろいろ話をしたところ、“もうあんた、ハリウッドなんて目じゃないよ。もちろん日本もそうだけど、中国はもうスペクタクルCGでも世界1だ!”…」

 そう豪語するこの社長が村西監督にこう言うのです。「“俺たちは、ハリウッドは目じゃないけど、日本のAVだけは50年経ってもできないだろう”」

 さすが村西監督。目の付けどころが違うのでございます、と思わず監督口調になってしまいましたが、ここまで本コラムを読まれた方ならお分かりかと思います。本書が紹介するAV業界の苦悩は、コンテンツビジネスを手がけるメディア業界はもちろん、少子高齢化で国内市場がどんどん縮小し、海外、とりわけ中国やタイ、ベトナムなど、成長著しい東南アジアに活路を見いだそうとする日本の産業界のそれと全く同じなのです

そういった目で本書を読むと、日本の産業界が抱える苦悩や今後の展望がはっきり見えてくるのです。しかし将来“ハリウッドも勝てない”という日本のAVが世界を席けんし過ぎて、アムネスティあたりに目を付けられるのも困りものですけどね…。(岡田敏一)

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